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ブートレッグ盤の世界~全く違和感のないマッシュアップ/V.A. - Stardust EP [Not On Label]

Artist: Various Artists
Title: Stardust EP
Label: Not On Label
Genre: House
Format: EP
Release: 1998

https://www.discogs.com/ja/release/60792-Various-Stardust-EP

Daft Punkの片割れであるThomas Bangalter率いるコラボレーションプロジェクトであるStardust。ボーカルにはエレクトロクラッシュ~インディーポップ界隈で活動していたBenjamin Diamondを起用し、Thomas Bangalterとも親交が深いAlan Braxeとの3人組のユニット。リリースされたのは"Music Sounds Better With You"という1曲のみであるが、世界的にヒットしたことでも有名な楽曲。またChaka Kahnの"Fate"をサンプリングしていることでも知られている。Daft Punkの得意とするフレンチハウス(フィルターハウス)の良さが引き出され、グルーヴィーなノリの良さが心地よい作品。Daft Punkの1stアルバムから知った人たちはこういう楽曲がもっとリリースされていたならばと思ったはず。

本作は、Stardustの名曲"Music Sounds Better With You"のブートレッグ盤。

アンダーグランドな音楽の世界のフィジカルリリースに特徴的な文化として、ブートレッグ(Bootleg)と呼ばれるものがある。Bootlegとは海賊盤のことで、正規品ではない。通称ブート、ブートレなどと呼ばれる盤には、下記のように5つの盤に分類される。

1.プロモ/ホワイト盤
新曲を売り出すためのプロモーションのためにつくられた盤。ホワイト盤とも呼ばれる。プロトタイプの楽曲の反応を探るという意味合いでの市場調査の役割を果たす盤、もしくはラジオなどで流してもらうために業界関係者に配布される盤である。正規品ではないという意味合いでプロモ盤はブートレッグに属するが、白に近いグレーというところ。前者は正規リリースとなったときと比較して、アレンジやテンポが変わっていることもしばしばある。このプロモ盤は関係者のみへの配布という性質上、発行部数が少数であるため、マニア・コレクター界隈には根強い人気があり、中古市場では高騰していることが多い。

2.フェイク/コピー盤
フェイク盤は著名なアーティスト名を偽ってリリースされた盤。コピー盤は既にリリースされている盤の廉価コピーである。どちらも版元からの許可は得ていない。フェイク盤の代表的な例は、Michael Jacksonの"7even"というアルバムだろう。

3.ライブ
アーティストのツアー音源の実況録音盤。メディア媒体としてはCD-Rが多く、ジャケットは家庭用プリンターで印刷したような粗悪な出来のものが多い。アーティストはツアー時のライブ音源を記録として残しているため、内部リークによるものと思われる。世界ツアーをしているような大御所のバンドではよく見られる。盤によっては機材トラブルの様子もそのまま録音されていたりと、実況録音なので生々しい現場の様子を音として体験できる。

4.アウトテイク
主にバンドなどの生演奏のやり直しや古いアレンジなどの没になった音源の盤である。アウトテイクのブートレッグが最も出回っているのはThe Beatlesだと思われる。特徴としては、各楽曲にtake 1, take2, take
….とタイトルされているように、取り直しの何回目かが分かるようになっている。また途中でアレンジャーが加わって、演奏が変わっていることもある。正規品としてアウトテイクを含む盤が販売されることがあるが、どうしてもブートレッグの方が先に出回ってしまう。

5.リミックス/マッシュアップ
本家アーティストの楽曲を様々なアーティストがリミックスしたり、マッシュアップしたりしている盤。無許可での制作かプロモーションとしての制作かの判別は難しい。Michael JacksonやBjorkなどはよく見かけ、世界的にヒットした楽曲をジャンル違いのアーティストがリミックスするというのもよく見かけた。

ブートレッグ盤は外見としての特徴も分かりやすいものが多い。
レコードの場合は、ジャケット無しのホワイトペーパーのインナースリーブのみで、ラベル部はスタンプを押されていたりと情報に乏しいものが多い。
CDの場合は、メディアがCD-Rのものが多く、ジャケットのデザインは雑で家庭用プリンターで印刷されていると思われるクオリティー、ライブブートは裏側にシリアルナンバーのようなものが記載できる欄があったりもするが、記載されていないこともしばしば、といった具合。

本作は、上記の1のホワイト盤とされているが上記の5に該当するブートレッグと思われる。

A1 - Stardust vs. Madonna - Holiday Sounds Better With You

RemixerはStuntmasterz。タイトルの付け方にもあるように、MadonnaのSynth-Popの名曲"Holiday"(1983年作)とのマッシュアップ。Stardustの楽曲にMadonnaのボーカルが乗っている構成。元々こういう曲だったのでは?と思えるくらいに、違和感なく原曲とボーカルがマッチしている名マッシュアップ。ボーカル元の"Holiday"はMadonnaが可愛らしく歌い上げるSynth-Popであるが、ボーカルのテンポなどが変わることで見事にスタイリッシュにフロア映えする楽曲へと昇華されている点は脱帽。StardustのボーカルとMadonnaのボーカルの掛け合いのようなパートもバッチリはまっている。

A2 - Stardust - Music Sounds Better With You (Bob Sinclar Remix)

Deep House界隈では"Love Generation"でのヒットでお馴染みのBob Sinclarによるリミックス。気怠さを感じるオシャレなDeep House Remixとして生まれ変わったバージョン。

B1 - Spacedust - Music Feels Good Better With You

イギリスのHouse作家デュオSpacedustによるRemixと思われる。
原曲をより攻撃的にアッパーにアレンジされた、ピークタイム向きな楽曲。
インナースリーブに貼られているステッカーの曲順が誤記載されており、B2にあたる。

B2 - Stardust - Medley (Groovy 69)

イタリア共和国のEuro House作家Groovy 69によるRemixと思われる。
原曲としてキックが重たくなり、原曲のボーカルパートは消え失せた代わりにジムナスティックなボーカルが入るため、踊るというよりもノリノリで器械体操やラジオ体操でもできそうな楽曲。
この楽曲は後年、様々なレーベルから"Stardust Medley With Dust"としてリリースされている。
インナースリーブに貼られているステッカーの曲順が誤記載されており、B1にあたる。

個人的な感想であるが、ブートレッグ盤は、原曲を凌ぐでは?と思えるようなリミックスが多いように思う。また正規品ではないものの、それ故にできる、あの楽曲がこう変貌したら?というIfの世界が広がっている。2024年の現在、ブートレッグ盤を見る機会は減った代わりにインターネットの世界にはこういった内容の楽曲が広く見受けられるように思う。

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