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テクノDJの様式美/Jeff Mills - Mix-Up Vol. 2 Featuring Jeff Mills - LiveMix At Liquid Room, Tokyo [S3]

Artist: Jeff Mills
Title: Mix-Up Vol. 2 Featuring Jeff Mills - LiveMix At Liquid Room, Tokyo
Label: S3
Genre: Techno, Minimal
Format: CD (Mixed)
Release: 1996
Series: Mix-Up

ライブミックスをコンセプトとしたMix-Up World Famous DJ Series(全5番)の2番目、現在も現役で活動しているテクノのレジェンドJeff Millsの、1995年の二度目の来日時に新宿リキッドルームで録音されたDJ Mix。テクノのDJ Mixで説明不要の金字塔。

自身の楽曲を中心にゴリゴリのミニマルテクノ、ハードテクノ、デトロイトテクノ、シカゴハウスなどをレコードで矢継ぎ早かつシームレスに展開している。

主流となっているメインジャンルのDJ Mixには様式美が存在している。様式美もいくつかのパターンが存在するが、中でも曲をつなぐ際に継ぎ目が分からずいつの間にか次の曲に切り替わっていたという、シームレスにつなぐ技術と選曲センスというのは、いつの時代も憧憬の的であり、永遠の命題である。

音楽の媒体としてデジタル配信が主流になり、依然と比較してDJ機材の選択肢が増えたことや機能性が向上したこともあり、かつてはレコードでプレイしたものがCDを経て今ではUSBなどでデータを用いてDJができるようになった。またDJコントローラーの出現により、より低コストに機材を取りそろえることができ、BeatSync機能によりボタン一つで楽曲のBPMの自動調節と同期をしてくれるようになり、楽曲さえ持っていれば誰でも気軽にDJをプレイすることができるようになった。

最も古いCDJは1994年に登場しているが、1995年は当然ながらレコードのターンテーブルが主流である。本作が金字塔とされるのは、Jeff Millsが矢継ぎ早かつシームレスなプレイでグルーヴを操ってフロアを魅了しているという、人間離れした神業でプレイしているところにある。

本作はSegment1~3に分かれており、Segment1では35分17秒で22曲、Segment2では23分55秒で13曲、Segment3では7分52秒で3曲という、驚異の速さで次から次へとレコードを駆使してDJしている、それも現場の即興で違和感なくやってのけているという意味不明な状況となっている。使用している楽曲はテクノであるが、ジャズのようなライブ感、別の言い方をすればジャズの楽器がターンテーブルに置き換わったのではと思える。

レコードでプレイするということは、暗い(もしくは限られた照明の中で)DJブースの中でレコードを選び出し、取り出して、ターンテーブルにセットして、針を落として、曲をモニタリングして、BPMを調整して、とすることが多くある。一方、デジタルでのプレイの場合は、そういった手間はなく、ノブを回して選曲をしてCueで頭出しができるなど、レコードでプレイする場合と比較して曲をモニタリングするまでの工程が大幅に削減されている。当然、レコードでのプレイで次の曲へつなぐためには、BeatSync機能などないため、BPMを手動で調整しなければならない。そのため、先ほどのSegmentで触れている通り、1曲あたりの時間を考えると、驚異的なスピードと判断力でプレイしていることが分かる。

自身の楽曲が約半数を占めるものの、Jeff Mills節ここに在りと言わんばかりの圧倒的な世界観がある。Jeff Millsの神業の元、扇動されるオーディエンスの歓声が時折混ざるなど、非常に臨場感あふれる内容となっている。また、絶妙なタイミングでChanges Of LifeやStrings Of Lifeなどをプレイしてくれるあたり、ファンサービスが旺盛である。久々に手に取って昔を懐かしんで聞いていたが、約30年前のものとは全く思えず、今聞いてもやはり当時聞いていた時の感動が蘇る。完成された様式美というものは時代が変われど、魅了する何かがあるのだなと改めて感じさせられた。

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