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インターネットが死ぬときの断末魔/Greathumour - Choose the Obsolete [Tirbe Tapes]

Artist: Greathumour
Title: Choose the Obsolete
Label: Tribe Tapes
Genre: Noise, Sound Effect, Collage
Format: Cassette
Release: 2020.10.18

アメリカ合衆国の南東部に位置するノースカロライナ州に拠点を置く、ノイズ・実験レーベルTribe Tapesより、レーベルオーナーであるMax Eastmanの名義Greathumourのアルバム。

本作のテーマは、2020年12月にサポートが終了した「Flash Player」に対する追悼アルバムである。

プログラムやシステムの断末魔のような音量過剰で潰れてできたノイズ、どこか懐かしくもありポップスのようにも感じられる遊び心に、砂嵐のような雑音で脳内洗浄でもされそうな、コンピューターミュージックである本作。

インターネットにも「死」という概念や現象はあるのだろうか、という問いについては「在る」であろう。システムやサービスの終了といった形での利用ができなくなることがその一つの答えになるのであろう。生物と無生物の違いは何かと論じたとき、その一つの焦点になるのが「細胞の自己増殖」をするかしないかにある。インターネットは無生物であるが、インターネット上の情報は絶えず更新され続け、細胞の自己増殖の在り方と似ている。即ち、インターネットの「死」の一つの形としては、システムやサービスの終了がこれに該当するのであろう。

死の間際には走馬灯を見ることがあるというのは、臨死体験した人による証言であったり、映画や小説の創作物の中でも見られる現象である。そういった概念を体現するが如く、破損した音声ファイルやビットクラッシュ、エラー音やバグで浸食されたようなノイズの嵐、走馬灯のようにポップスのようなメロディーが時折浮かんでは消えていく。出来の悪い悪夢なのか、シュールな茶番劇なのか、それともヴェイパーウェイブの変異種なのか、プログラムのコードのようなタイトルの楽曲が僅か339秒(全7曲)で、聞くもの全てを置き去りにして過ぎ去ってしまう。まるで自身ではコントロールできない、瞬間的とも直感的とも言える泡沫の回想のように。

人間とは価値観の異なる概念であるインターネットという生物の死に思いを馳せた作品。何のためにこのような音楽が存在するのかという哲学に耽りたい人向けの音楽。


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