オランダ王国のDJによる日本民謡のDJ Mix/Numpty - Min'yō b/w All Okinawa [Edições CN]
Artist: Numpty
Title: Min'yō b/w All Okinawa
Label: Edições CN
Genre: 民謡
Format: Cassette
Release: 2022.07.04
ベルギー王国の湾港都市アントワープに拠点を置く、Dolphin Into The FutureことLieven Martens主催の実験音楽/アンビエントレーベルEdições CNより、オランダ王国のDJであるNumptyの日本民謡のレコードによるDJ Mix。
日本にも親交があり沖縄民謡好きなLieven MartensのレーベルであるEdições CNの設立10周年記念の本作にして、A面は日本の民謡中心にテーマに謡曲や座敷歌なども含めたセレクト、B面は沖縄民謡一本のDJ Mixである。
日本の古典的な民謡、特に正調とされる楽曲を中心に、両面合わせて約1時間の旅を楽しめる。
本作が最も興味深いのは、海外のDJが日本の民謡に着目し、DJ Mixを制作している点である。日本人からすれば日本の民謡を手に入れるには中古レコード屋に行けば容易に手に入れることができるが、これが海外に住んでいる、更に言えば、日本にルーツを持たない外国人となると、日本の民謡を手に入れるとなると一気にハードルがある。確かにインターネットが発展している現在であれば、依然と比較して手に入れることのハードルは下がったとは言えるものの逆を考えれば分かりやすいだろう。
A面はDJらしく分かりやすい展開のあるMixになっており、緩急のあるダンサンブル(?)でグルーヴ感(?)のある構成となっている。無理やり別の表現をするならば、ダンスミュージックとアンビエント混じりのDJ Mixである。
B面は沖縄民謡一本鎗で、正調とされるオーソドックスなものからアメリカ合衆国から返還後の70年代特有の(正調寄りの)新しい沖縄民謡などで構成されている。1972年に返還された後の沖縄民謡は、様々なジャンルとクロスオーバーしている楽曲が多く、歌詞一つとってもポップスに寄せたような面白さがあり、日本人なら誰しも持っている認識とはまた別の奥深さがそこにある。
歌詞がある。そう言った楽曲には、アーティストの伝えたい想いが言葉として文字という言語として表現されているのは疑いようもないだろう。当然のことながら、グローバルスタンダードの共通語は英語である。海外の人たちとメッセージをやり取りすることは時々あるが、やはり英語でのやり取りが主となっている。その中で日本語は、平仮名、カタカナ、漢字の構成であり、文字情報としては言語的にも難関であり、他国の言語は何を言っているのかも分からないというのは言うまでもないだろう。
海外の人たちにとって、日本語というのは文字・発音共に、ある意味では言語盲であると推察されるが、おおよそ音の情報だけで他国の伝統的な音楽をDJ Mixとして構成しているのは、非常に面白い試みであり、海外の人の感覚による選曲は非常に興味深いものがある。海外から日本はどう見られているのかというのは、インバウンド需要の観点から興味深い内容であるが、音楽というフィルターを通してのコミュニケーションにより、どのような想いを馳せているのかと想像を膨らませるのは、自身のルーツを別の角度から観察するようで興味は尽きない。発音による言葉も音として捉えると、非常に音楽的であるのだと思う。
レコードの入手難易度が高いという意味合いでも、日本に対して何かしらの興味や愛着を抱いてくれているということがよく分かる。ベルギー王国という遠い異国の地から届いた手紙のようなDJ Mix。