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誰も知らない東京音頭/V.A. - KING OF ONDO ~東京音頭でお国巡り~
Artist: V.A.
Title: KING OF ONDO ~東京音頭でお国巡り~
Label: Victor Entertainment
Genre: 民謡
Format: CD
Release: 2016.07.20
日本の夏祭りの音頭の定番曲である東京音頭の歴史を知る上で貴重な資料である音源集。
日本の夏の風物詩と言えば、花火、昆虫採集、夜市、お化け屋敷、海水浴など、定番のイベントを挙げると枚挙に暇がないが、やはりお祭りを外すことはできないだろう。日本人にはド定番と言える東京音頭は曲名は知らずとも必ずどこかで耳にしたことがあるだろう。
◎東京音頭=作詞:西条八十 作曲:中山晋平
中山晋平が「鹿児島小原節」に着想し、「丸の内音頭」として替え歌を作成。
さらにその替え歌である「東京音頭」が、昭和8年(1933年)に爆発的なヒットを記録した。
その動きが全国にも派生し、「東京音頭」のメロディーに、西条八十自らが歌詞を替え歌をつくり、全国各地をテーマにした『東京音頭替え歌』がビクターより何枚も発売されることとなった。
東京音頭の歴史を辿ると、上記の引用にあるように「鹿児島小原節」の着想から「丸の内音頭」という曲が出来上がり、1932年(昭和7年)に日比谷公園での盆踊り大会で披露されたことが元である。その後、リリース元であるビクターエンタテインメントが全国的に流行させるために「東京音頭」と改題し、企業戦略により、歌謡曲、ブギウギ、ご当地替え歌、英語バージョンなど、様々なアレンジを施された形でリリースされた。
本作は、元となった「鹿児島小原節」を始め、その後の形態である「丸の内音頭」、基本形である「東京音頭」、昭和の香りが漂う様々なアレンジの「東京音頭」、ご当地替え歌として流布された「東京音頭」といった風に体系的にコンパイルされた、「東京音頭」づくしのコンピレーションである。まさに誰もそんなことを知らない、隠された東京音頭の奥深い歴史を知る上で非常に貴重な資料としても楽しめる。まさかご当地替え歌として、ここまでの数が存在していたとは。民謡は伝承として、親から子へ、さらに孫へと語り継がれる性質と、それを継承するという明確な意思の下でしか継続できないため、いつかその歴史が途絶える可能性があるが、音を記録に残す技術の発展のおかげでこうして過去を振り返ることができる。
1932年に始まり2024年現在まで、今もなお変わらぬ姿で多くの日本人に親しみのある音楽として、夏の記憶の一部として色濃く残る「東京音頭」はまさにジャパニーズ・クラシックと言える楽曲の一つであるように思う。
新しいものに目を向けることも大切ではあるが、継承されてきたモノの意義と価値を再考察することで新しい発見があるに違いない。土着的で他の国のどこにもない、日本独自の世界が民謡という世界には広がっている。かつては存在したが、今は失われて久しいナニカを発見できたときのような喜びを見出せる一枚。
余談ではあるが、筆者が広島県福山市の鞆の浦に訪れた際に秋祭りが催されており、神輿が闊歩しているときに東京音頭の鞆の浦バージョンが歌われていたことに驚いた。このときに初めて、実際に東京音頭は各地のお祭りの音頭の一部として根付いていることを実感した。