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愛される音楽とは?の答えの一つ/V.A. - 明治チェルシーの唄 [株式会社テイチクエンタテインメント]
Artist: Various Artists
Title: 明治チェルシーの唄
Label: 株式会社テイチクエンタテインメント
Genre: Pops
Format: CD
Release: 2005
2024年3月に生産終了した、1971年に株式会社明治製菓が販売した国民的なキャンディーである「チェルシー」のCMソング集。作曲は小林亜星。
イギリス北部のスコットランドのスカッチキャンディーを参考に開発されたチェルシー。本作は商品イメージを出発点としてスコットランドやアイルランドの民謡のようなイメージを元にフォークソングのアコースティック感を加えてデザインされている。
愛される音楽とは何か?という問いについては、星の数ほど在り、どれも正解だと思う。その問いに対する端的な答えの一つとして、普遍性・継承という言葉が挙げられるだろう。本作はそういった答えを体現する内容である。販売開始時の1971年のシモンズから、ガロ(1972年)、ペドロ&カプリシャス(1975年)、南沙織(1976年)、サーカス(1979年)、八神純子(1981年)、あみん(1982年)、大貫妙子(1984年)、アグネス・チャン(1985年)、蒲原史子(1988年)、有澤圭子(1991年)、シーナ (シーナ&ロケッツ)(1994年)、PUFFY(1997年)、小野貴子・宮内美枝(1999年)、上原多香子(2000年)、CHEMISTRY(2003年)と、16ものアーティストが関わっている。そもそもこれは企業戦略であると言われるのは当然ではあるが、一つの商品が世に出るには多くの人が関わっており、そのエネルギーの総量は計り知れないだろう。ヒット商品を作り出す、多くのお客様に愛される、即ち認知されるための手段は無数にある。例えばそれがCMであったり、イベントであったり、メディア媒体での告知であったり、ポップアップストアの出店であったりと。本作は過去30年分のCMソングが収録されており、年代順に聞くと、その時代を生きていればその時々の社会情勢であったり国産ポップスの流行であったりと、年代を感じさせるものがある。1971年の初代オリジナルから時代の変遷とともに歌手やアレンジが変わり、原曲の雰囲気を継承しつつ、長年の間、お茶の間へと届けられ続けた。最も評価すべき点は、オリジナルを元にアレンジが加えられている点であり、全く別の歌詞や曲に変更しなかったという点である。イメージの定着ということも挙げられるが、やはり愛着を持って元の楽曲に手を加えてリバイバルしている点は愛されている楽曲に必要不可欠な要素の一つであると思う。
どの年代のCMが好きかはさておき、各年代を比較して聴き比べすると、普段何気なく聞き流していた音楽への面白さというものに気が付くであろう。