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壮大な宇宙の叙事詩的アンビエント絵巻の4ページ目/Pete Namlook & Klaus Schulze Feat. Bill Laswell - The Dark Side Of The Moog IV [Fax +49-69/450464]

Artist: Pete Namlook & Klaus Schulze Feat. Bill Laswell
Title: The Dark Side Of The Moog IV
Label: Fax +49-69/450464
Genre: Techno, Ambient
Format: LP, CD
Release: 1996.02.12


アンビエントの先駆者の一人であるPete Namlook(1960 - 2012)主催のレーベルFax +49-69/450464より、元Tangerine Dream/Ash Ra Tempelのシンセサイザー奏者として活躍した巨匠Klaus Schulze(1947 - 2022)とジャンルレスに様々なアーティストとコラボレーションをすることで有名なベーシストBill Laswellとレーベル主催者であるPete Namlookの三者によるシンセサイザー「Moog」を主役としたアルバム。本作は「The Dark Side Of The Moog」シリーズの4作目(全11作)にして、最もダンサンブルな作品。

トラックタイトルは「Three Pipers At The Gates Of Dawn」であり、全9パート。アルバム名およびトラックタイトルは、Pink Floydのアルバム「The Dark Side Of The Moon」と「The Piper At The Gates Of Dawn」をモジったものだと思われる。

壮大なSF/宇宙映画を彷彿とさせるアンビエント/テクノの叙事詩的な絵巻1時間の大作。

古典的なProgressive Rockの構成さながら物語性や緩急に富み、アンビエントに浸っていたら突如として荒々しくビートが刻まれ、再びアンビエントに移行して静寂に包まれたりと、「静」と「動」の切り替わりの落差が激しい。アンビエントと言えば、Brian Eno的な解釈であるErik Satieが提唱した「家具の音楽」=耳を傾けるためではなく、家具のように存在している音楽という静としてのイメージが強いが、Pete Namlook的なアンビエントは対照的に心理状況の変化を重視したような展開のある動としてのイメージが強く、本作も例に漏れない。シンフォニックに展開し、サイケデリックな電子音響が絡みつきながら、徐々に音数が増え、聞いている内に大きな渦の中に意識を持っていかれる。そう思っていたら束の間、何もないような静寂な無重力空間に放逐され、やがて再び何かの重力のようなものに捕捉される。

また本作は、Pete Namlookにしては(恐らく)珍しく三人編成である。三者三様、それぞれの個性が遺憾なく発揮され、どのパートを担当したかが分かりやすい。

Pete Namlook関連の音源は膨大な量のカタログとして存在しており、全作品を把握するのは困難極まりない。筆者が聞いた中ではお気に入りの一枚。


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