星は夜空の穴だとして、そこから何を聞くのだろうか?/Ulises Conti - Los Griegos Creían Que Las Estrellas Eran Pequeños Agujeros Por Donde Los Dioses Escuchaban A Los Hombres [flau]
Artist: Ulices Conti
Title: Los Griegos Creían Que Las Estrellas Eran Pequeños Agujeros Por Donde Los Dioses Escuchaban A Los Hombres
Label: flau
Genre: Modern Classical
Format: CD
Release: 2014.06.22
日本の東京に拠点を置く、アンビエント・エレクトロニカ・ポストクラシカルを中心にリリースするレーベルflauより、アルゼンチン・ポスト音響派のUlices Contiのアルバムにして小作品集。
アルバムはスペイン語で「ギリシャ人は、星は小さな穴であり、そこを通して神々が人間の声を聞くと信じていた。」というロマンティックなタイトルである。曲のタイトルはアルファベットのAからZまでの全27曲であり、1曲あたり約3~4分程度、短いもので1分未満の長さである。
南米と聞くと、一般的にはラテン系の陽気なイメージを思い浮かべやすいが、ホルヘ・ルイス・ボルヘスやフリオ・コルタサルのような現実と空想の境目が曖昧なラテンアメリカ文学、すなわち南米幻想文学の血筋を音楽に取り込んだような風合いのように感じる。
ピアノの一音一音の響きが美しく、芯がありつつも輪郭はやや淡くぼやけて徐々に消え、息を飲むような静寂さと幾ばくかのメランコリックな表情を覗かせる。ピアノを主体としながらも、電子音響やフィールドレコーディングなどのレイヤーが幻想的に色付けされている。27曲に及ぶ小作品集であるが、全体的にダイナミックでストーリー的な流れがあるというよりも、日々書き溜めた日記のように、非常に内省的で静謐という言葉がよく似合い、日々の小さな発見や情緒の変化を簡潔に残しているのだろうか、1枚、また1枚、1曲、また1曲と、ページを捲っていくといつの間にか時間を忘れて聞き入ってしまう、そんな気持ちを落ち着かせる一種の鎮静剤や神経調律のような効能を持っている。日々の喧騒に飲まれて進むペースの早い秒針の動きを元に戻してくれることだろう。
音楽を聴いたところで現実や自分を取り巻く環境には何の変化も影響もないかもしれない。しかし、どこかが違う、それが何かが分からない、けれど、やはりどこかが違う気がする。日常と幻想の境界線を曖昧にして、少しだけ今日の自分を許せる時間を作ることができるだろう。寝る前の睡眠導入剤としても。