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ダンスフロアに適性があるのかないのかよく分からない音楽の可能性/Puto Tito - Carregando A Vida Atrás Das Costas [Príncipe]

Artist: Puto Tito
Title: Carregando A Vida Atrás Das Costas
Label: Príncipe
Genre: Grime, Leftfield
Format: 2×LP
Release: 2019.05.03

ポルトガル共和国の首都リスボンに拠点を置く、変則的なダンスミュージックをリリースしているPríncipeより、Puto Titoのデビュー作。

本作はPuto Titoが2014~2015年の間に14歳の頃に作曲した楽曲集。

市民権を得ている一般的なダンスミュージックには洗練された様式美が存在している。テクノ、ヒップホップ、ロック、ドラムンベース、ハウス、R&B、ジャズ、ドラムンベース、IDMなど、ジャンルを挙げればキリがないが、どのジャンルにも聞けば判別できるように、リズム、メロディー、楽曲の構成・展開、BPMなど、どれも特定の様式美がある。

本作が非常に興味深いのは、形容しがたい独特なリズム帯であり、一般的なダンスミュージックとはその形態は大きくかけ離れていることである。踊れるかと言われると、あまりの奇抜さに首をかしげる人も多いだろう。しかし、こういった曲が面白いのは、馴染みのあるリズム帯とは違い、良さが分かる、別の言い方をすれば「頭の中で何故か歪な歯車がカチッとハマる瞬間がある」ことを体験するまで時間がかかる(?)が、はまってしまえば虜になってしまうところである。

また音の使い方もMIDIのベタ打ちとも言えるインターネット黎明期のBGMのようなチープさが際立っているが、それに反して独特なリズムの構築は卓越しており、この二つの組み合わせとギャップが絶妙なバランス感覚の上に成り立っているのである。

これはいったい何なのか?辺境音楽の新たなる可能性なのか、それともハウスとゴム(Gqom)とレフトフィールドの三叉路の交点なのか、それが何なのかは謎である。論理的に理解するのではなく、かと言って感情的に捉えるのではなく、これこそ感覚的に楽しむ音楽なのだろうと思う。

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