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最後の一音/Morusque - the end of music [wabi-sabi tapes]

Artist: Morusque
Title: the end of music
Label: wabi-sabi tapes
Genre: Experimental, Collage
Format: Cass


フランス・リヨンの実験レーベルwabi-sabi tapesより、フランスの電子音楽作家Yann van der CruyssenによるMorusque名義での実験音楽。

本作は、アルバムのタイトルの通りに、既存の音楽の最後の一音のみをオーディオ素材として使用して制作されており、実験的でありコンセプチュアルな楽曲群である。使用されたオーディオ素材は、ハードディスクの中からランダムに選ばれているとのこと。またフェードアウトで終わる場合は、可聴音に分離できるまでゲインを増幅させたり、サンプリングされた音には基本的なエフェクトなどを使用しているとのこと。この手法のため、使用できる音素材が限られたものであり、恐らくは意図しない楽曲が出来上がったものと思われる。

過去に類似する例を挙げるとカナダの電子音楽作家AkufenのMy Wayを挙げることができるだろうし、00年代の四つ打ちシーンで顕著であったクリックテクノに近いだろうし、果ては間の置き方という意味ではJazzに通じるものがあるだろうし、ランダムに選ばれた楽曲の最後の一音はどことなく漂う哀愁感はクラシック音楽の荘厳さにも似たようなものを感じる。

コラージュを微分したようなという表現は奇妙かもしれないが、コラージュ作品よろしく次はどうなるのだろうかなどの予測が全くつかない。ダンスミュージックであったりポップであったりと、非常に多彩な顔を覗かせ
、奇妙な世界に迷い込んだかのような不思議な音の世界が広がっている。

最後の一音という性質上、音の一音一音に余韻や残響感を感じさせるため、音の揺らぎや奥深さといった視覚的な意味合いでの空間が本作の美点であると思う。

感情や理想といった時や状況に応じて変化する主観的な判断ではなく、科学的なアプローチと実験的なコンセプトを出発点としているため、作家のやりたいことが何なのか非常に明確で分かりやすく、聞き手を楽しませようとする工夫も見て取れる。


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