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【Interview】タナベ氏と匠氏 金のタイガーで継続投資に火をつけていけるか

 2023年12月3日、VRSNS「VRChat」にて、投資型対談企画「金のタイガー」が開催・配信された。 
今回は金のタイガーを企画されたVR蕎麦屋元タナベ氏と匠氏に話を伺った。


余ったお金のエンターテイメント性溢れる使い途

 まずこの企画がどういった経緯でスタートしたのかという事について説明を行う。
VRChatにてUGC(ユーザージェネレイトコンテンツ)募集型展示企画である「ぽかぽかファンタズム」という企画が開催の見込みとなり、必要とされる経費をクラウドファンディングという形で予算を募った。
当初5万円を予定金額としていたものが130.6万円にまで膨れ上がってしまい、何とかイベントの為に諸々使い切ろうとしたものの10万円ほどが余ってしまったという。
これをただ撒き散らすのも、一度で使い切るのもどちらもエンターテイメント性が薄いと判断した両名は、「集まったお金はクリエーターに還元!」という当初のビジョン通りにクリエイターへ還元する企画を実施することを決定。
それにより今回プレゼンテーションを行い、採用者に指定の金額を渡すという方式のエンターテイメントコンテンツが生まれたとの事だ。


 応募者は当初10名ほど来れば良いという事で知り合いに声を掛けて回った両名。
蓋を開けてみれば、その応募総数は25組と当初の2.5倍の枠にまで膨れ上がった。
そこから書類審査を経て10組前後まで絞り、その後最終的に4組をファイナリストとして選定。
イベント当日、その中から二組が栄誉を勝ち取ったのである。

 審査の際の基準として重視したのは企画の面白さ、配信として出した場合のインパクトである。
こういった資金提供型の企画ともなると、真面目な企画をプレゼンして真面目に納得させるというのは通常の企画としては通用する可能性は高い。
しかしこれはあくまでぽかぽかファンタズム発の外伝企画という位置づけである。
そのため「面白さ」という指標は最も重視される物となった。
実際にプレゼンを行う際に、真面目な企画でもツッコミどころのあるプレゼンを展開したり、もしくは企画そのものにツッコミどころがあり面白いものを優先対象として評価したとの事である。

クリエイターのあと一歩を後押しする機会の創出

 このイベントで見えてきた、クリエイターに横たわるある種の「通奏低音」の様な状況が見えてきたと両氏は語る。
 現在クリエイターという肩書きで活動している人々の中には、イベントを積極的に主催するイベンターも含まれている。
直接的なクリエイト以上に盛り上がる場を用意する彼らにとって必要なのが、企画を盛り上げる為の資金である。
もちろんそれは資金的に切羽詰まった状況であるという訳ではなく、ある程度企画は既に実行可能な状態である状況だ。
そこにさらなる面白さの後押しとしてコンテンツを実装する為の資金が不足しており、その一歩を踏み出すことが出来ずイベントの充足度を上げられないというクリエイターが多いと実感しているとの事だ。


 これはVRChatでも多く見られるが、対価を貰わず無償でイベントをやり続けた場合に必ずどこかで破綻が起きるという。
イベントをやったからには相応の対価が必要であるし、その対価に相当する物で最も効力があるのはあらゆる用途で利用可能な「現金というツール」である。
今後多くのクリエイター間でぐるぐると血流のように資金を回し、潤し潤される仕組みは必要だとタナベ氏は力説する。

スポンサーの有無と面白さの天秤

 今後どういった形でこの企画を行っていきたいかというビジョンについても語って頂いた。
現在こういった企画を積極的に行うスポンサーを探している状況である。
ただしスポンサーが付くと、結果的に出資者の意向に沿うような選定基準や内容となる可能性もあるという。
仮に出資者を得た場合、出資者を満足させる真面目な物を真面目に評価するという内容に終始してしまう事になれば当初からのコンセプトである面白さが消えてしまう状況になる。

 また企画を行う上で「現金」という要素はやはり必要であるという。
得るために妥協をしてはならないものであるからこそ、面白い企画を持ち寄って欲しいし勝つからには「圧倒的に面白いもの」が勝ち残って後腐れなく提案を実現できる爽やかさも大事であるとの事であった。

 今回最終的にどういった企画が選ばれたのかという点も掻い摘んで説明する。
1つ目はVRSNSであるResoniteで開発中のUniPocketというインベントリ機能をアピールするために開催されるUniFestaというイベントがある。
そのUniPocketにおけるマスコットの「ゆにちゃん」を使ったTシャツを作りたいという企画だ。
その名も「ゆにティ」というVRChatユーザーには非常に馴染みが深そうな名前であるが、そのアクセントが違う為別物であるとの事であった。
2つ目は複数の企画を持ち込んで提案を行ったユーザーの物であり、その一つがアバターの顔がプリントされたオリジナルこけしを作りたいというものであった。
具体的にサイズの指定まで懇切丁寧に行っていたという本気度が評価された物と見て良いだろう。
こういう「一見すると正気を疑われそうな話を大真面目にプレゼンする挑戦者」が配信というエンターテイメントの方向性と相性が良いものだとは匠氏の言である。


 最後に今後参加するユーザーに対して一言、両名から頂いた。
タナベ氏は「ひるむな、そのまま突き抜けろ。」と語る。
今抱いている物をそのままさらけ出すのが最も伝わりやすく、そこに何かしらの枷を設けてしまっては企画自体の突き抜けた面白さが損なわれてしまうからと語る。
匠氏は「企画を日和る事無くありのままを出して欲しい。」と述べた。
実際に要求水準として設定された金額や企画に対し、今回はこれだけで良いという妥協が見られるとそれは途端に面白さを喪失してしまう。
企画を出すのならば全力で出してもらいたいとの事であった。

 今後もおそらく開かれるかもしれない投資型対談企画、金のタイガー。
資金があれば続行したいし、スポンサーによっては元の名前をほとんど無くす形でも良いと語る彼らの次の企画に、大きな注目が集まっている。


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