鉛筆の黒 / 色鉛筆の黒
はじめまして!
はじめまして。
noteを始めてみました、いるやと申します。
Twitterを主な活動場所として、水彩で絵を描いています。
「言葉にできない想いを絵に。」を根底のテーマとして作品づくりをしています。
Twitterで語るには長々しくて、しゃらくさい、そんなことをnoteでお話しできたらと思います。
さて今回は「言葉によって細分化され、解像度が上がる世界」についてです。
初回の記事になりますから、何を書こうかとても迷いました。
その上、先ほど「言葉にできない」ことを描きたいといいながら早速矛盾するようなことを題材としてしまい申し訳ありません。
ですが、お付き合いいただければ幸いです。
● 鉛筆の黒 / 色鉛筆の黒
私は、幼稚園の頃、友人と喧嘩した記憶があります。
とても些細なことで、お絵かきの時間のことでした。
それぞれのテーブルに一つずつある共有の箱の中に鉛筆や色鉛筆が雑多に入れられていました。
たまたまその箱が私の近くにあり、友達から「黒をとって」と頼まれました。
しかし箱の中に色鉛筆の黒はなかったため、そう伝えるとその友達は自ら箱の中を覗き込んで
「あるのにどうしてとってくれないの」
と怒りながら鉛筆を一本取り上げました。
私はびっくりしました。
友達が取り上げたのはただの鉛筆だったからです。
「それは黒じゃないでしょ?」
私は驚きつつもそんなようなことを尋ねましたが「黒だよ!」とさらに怒らせてしまいました。
筆圧を高くして、強く塗れば黒というほど黒々とせず、少しメタルに鈍く光る。
私にはそんな鉛筆の色が黒色だとはまったく思えなかったのです。
● 何色だろう?
では黒色でないなら?
当時、私にとっての色の世界は色鉛筆や折り紙につけられたおよそ10色程度の名前に分類されていました。
例えば、レモン色も山吹色も「黄色」だし、マゼンタも桜色も「ピンク色」でした。
せいぜいレモン色なら「明るい黄色」でマゼンタは「濃いピンク色」。
たった10色程度の色の名前で、すべての色が説明されると信じて疑っていなかったのです。
そして、その少ない色の中で、私が鉛筆の色にあてた色は「銀色」でした。
銀色にしては随分輝きが足りないと思ってはいましたが。
しかし鉛筆の色を銀色だと思い込んでした私にとって、それが黒だと言われたのはとても驚きました。
おそらく友達にとっても鉛筆を黒ではないといって渡さない私のことは意味が分からなかったと思います笑。
ともかく幼稚園児ながら、同じ色を見ても、まったく違う色を感じ取っていたのはとても衝撃でした。
物事と、それから感じ取ることは必ずしも一対一ではなく、感じ取ることは人によって異なると気づいたのもこの時であったと思います。
私は物事をできるだけ多くの角度から観測しようと努めていますが、根っこにはこの体験があったからかもしれません。
月並みな喩えですが、円柱は下から見れば円、真横から見れば長方形なのです。
鉛筆の色は使用用途や一般性から見れば黒色でしょうし、画材として絶対的に色を判断するなら黒ではないでしょう。
● 初めて聞く色の名前
結局ケンカになり、先生に仲裁をしてもらったように思いますが(先生、こんなことで喧嘩をしてすみませんでした)、まったく納得できず、幼稚園の帰り道、母に鉛筆の色は何色か尋ねました。
「なまり色かな?」
鉛なんて言葉、その時はじめて聞きました。
鉛とは何か尋ねると、それは鉛筆の材料であると説明されました。
即ち「なまり色」とは、原材料そのままの名前だったのです。
(※現在、鉛筆の芯に鉛は使用されていないそうです)
これについても私は衝撃を受けました。
自分が今知っていることにすべてを当て嵌めて理解しなくてもよい、なんなら自分で新たに概念や分類を作り出してもよいのだと。
固定観念を自ら作り上げ、それに囚われる必要などないのだと。
色鉛筆につけられた名前に分類されただけだった色の世界に「なまり色」が加わり、まだ名前も知らない色が多くあることを知り、そして、既知の分類に当て嵌めることができない色はそのまま受け入れてもよいのだと気づきました。
私の世界はこの一連の出来事によって無数に色づき、広がり、深まったのです。
これは色の世界だけについてのみならず、ほかのさまざまなことについても同様に、言葉によって世界を細分化し、認識する足がかりとなりました。
おそらくこれが言葉によって世界の解像度があがるという私の原体験であったと思います。
● あなたにとって鉛筆は何色ですか?
もちろん、この体験をここまで言語化して自分の中に落とし込めたのは最近のことです。
しかし、言葉にできずもやもやとしながらも、このときの衝撃はずっと私の中に響いていました。
言葉によって細分化され、解像度があがり、世界が広がり、深まる。
私にとってこの営みはとてもおもしろいものです。
だから知ることは楽しい。
いろんなことを知りたい。
絵を描くこともこの営みの中の一つなのかもしれません。
対象をよく観察することで見えてくるもの。
描きたいものを調べることで増える知識。
これらが楽しくて楽しくてたまらないのです。
あなたにとって、鉛筆は何色ですか?
おまけ:タイトル使用イラスト
水彩・金墨
紙:Sea Paper
※SeaPaperについてはこちらをどうぞ↓
人の手が持つ力を思い知る、タイの紙作り体験
ご一読ありがとうございました。 もし、サポートいただけるようでしたら、それは今後の創作活動に役立てたいと思います。