アナログイラストの編集におすすめ! フリーソフトの紹介
こんにちは。
先日の更新からしばらく時間がたってしまいました。
気ままな更新ですが、お付き合いいただければ幸いです。
さて、今回からは毛色を変えて、私が普段絵を描いていることについてを主としてお話したいと思います。
ときどき前回までのような考え事をお話するかもしれませんが、頻度は低くなると思います。
今回は私が普段アナログ(主に水彩)で描いた作品をSNSに公開するまでにしている作業で使用できるフリーソフトを紹介したいと思います。
さいきんアナログの絵を描くようになったけど、綺麗に公開するにはどうしたらいいの?そのためのソフトは何を使ったらいいの???という方向けに書いた記事です。ほかにもよい方法をご存じの方は、ぜひ下のコメント欄にて「このソフトもいいぜ!」「こんなこともいいんだぜ!」と教えていただければ嬉しいです。
この工程には大きく下記3つがあります。
1 ごみとり(スキャンした際に入ってしまう埃などを取り除く作業)
2 色調補正(スキャンして変化してしまった色味を原画に近づける作業)
3 文字入れ(アップロードする際にクレジットなどを入れる作業)
これらの工程を、現在私はGimp(フリーソフト)と8月に購入したClipStudioを使用しています。
PhotoShopひとつあればすべての工程を行うことができますが、いかんせん、高級品(´;ω;`)ウッ…!
月に何枚も描き上げられるわけでもなく、なんなら一枚も完成しない月もある、そんな私にはPhotoShopは正直なところ、お財布が耐えられません!!
それよりはいい紙を使ってお絵かきQOLをあげたいというのが本音なところです。
そんなわけで、今回はフリーソフト(無料で使えるソフト)であるGimpとKritaを用いてもなんとかなるよ!というお話です。
私はすべてマウスとキーボードで作業しているので、ペンタブなどお絵かき用の機器がなくても問題ありません。
またこれに関連しまして、スキャンについては、はなさきたるさんのこちらの記事が詳しいので、ご参照ください。
今回はWindows環境でGimp及びKritaでできることをお話しています。Macの方はごめんなさい、キーの説明などが異なると思います。そのため、それぞれのソフトの詳しい使用方法は解説をしてくださっているサイトやYoutube等でご確認くださいませ。書籍も刊行されています。
● 0. Gimp・Kritaの紹介
どちらのソフトも一長一短で、どちらかしか使用できない機能もあります。
そのため、一方ではなく双方を使う形で落ち着きました。
それぞれのソフトについて、説明を窓の杜さまより引用いたしました。
▼ Krita
公式サイト:https://krita.org/jp/
使用方法(有志サイト):https://esinote.com/guide/knowledge/krita
ペンタブレットの筆圧検知にも対応する総合的なペイントソフト。グループ、ペイント、ベクター、フィルターなど、機能に応じた多くのレイヤーが用意されているほか、文字入力することも可能などペイントソフトがもつ機能は一通り搭載している。
最大の特徴は多彩なブラシ。エアブラシやサインペンといったよくあるものから、筆や鉛筆、カリグラフィブラシ、ハッチブラシ、散布ブラシ、ドライブラシ、スクリーントーンなど、初期状態で100種類以上が選択できる。また、ツールバーから[Edit brush settings]ボタンを選べば、ブラシを自作することも可能。
立体図形を描く時に便利なパース機能もあり、ガイドを利用して絵を描くことができる。また、“シンメトリーモード”を利用することで、左右対称な絵や上下対称、点対称の絵を手軽に描くことも可能。
ファイルは独自形式で保存できるほか、BMP/JPEG/PNG/TIFF/GIF/PSDなど40種類ほどの形式で読み書きが行える。PSDのようにレイヤー構造をもつファイルで保存する際、フィルターレイヤーなど特殊なレイヤーがある場合は1枚の画像に統合される。単純なレイヤー構造の場合は、レイヤーが保持された状態で出力可能。
なお、本ソフトのソースコードは作者サイトからダウンロードできる。
窓の杜 Krita ソフト詳細ページより引用(https://forest.watch.impress.co.jp/library/software/krita/) 2020/10/10 15時閲覧
▼ Gimp
公式サイト:https://www.gimp.org/
使用方法(有志サイト):https://createkidslab.com/2018/12/12/gimp-howto-summary/
オープンソースで開発されている画像処理ソフト。高価な有償グラフィックソフトにも引けをとらない多機能性が魅力となっている。レイヤー機能はもちろんのこと、エフェクトやブラシなども豊富に揃える上、“Script-Fu”と呼ばれるスクリプト言語を実装しており、バッチ処理で画像を加工することも可能。また、あちこちに散らばったダイアログをひとつのウィンドウにまとめて利用できる“シングルウィンドウモード”や、レイヤーのグループ化などの機能も備える。
なお、本ソフトのソースコードは作者サイトからダウンロードできる。
窓の杜 Gimpソフト詳細ページより引用(https://forest.watch.impress.co.jp/library/software/gimp/) 2020/10/10 15時閲覧
▼ それぞれの使用方法
私はこのふたつのソフトを用途に合わせて使用しています。
段階を追いますと、
1 Gimp:ごみとり
2 Krita:色調補正
3 Gimp:文字入れ
です。
以下、順番にそれぞれのソフトの使用方法と、もう一方のソフトでは難しい理由を説明いたします。
注意事項としては二つのソフト間に互換性はないため、それぞれの工程が終わるごとに書き出す必要があることですね(Gimpではエクスポート、Kritaでは保存)。その点は少し面倒です。拡張子はjpgかpngがよいかと思います。pngのほうが綺麗に保存できます。
やりなおしたりしたいこともあるかもしれませんから、とくにKritaでの色調補正はレイヤーも保存できる固有の拡張子である「.kra」も別で保存しておくとよいと思います。どちらもpsdファイルで保存が可能ですが、Kritaでは調整レイヤーはすべて元の画像レイヤーに統合されてしまい、後から手を加えることができなくなります。Gimpの文字レイヤーはpsdで保存しても統合されず、別レイヤーとして残すことが可能です。ごみとり工程では画像の元レイヤーに直接手を加えますから、レイヤーごと保存できる拡張子で保存するメリットは見当たりません。
● 1. Gimp:ごみとり
スキャンした際には、どうしてもスキャナのガラス面の埃や、取り忘れていた画面のゴミなどが入ってしまいます。
そのため、それを取り除いてあげる必要があります。これをここでは「ごみとり」と呼びます。
この作業ではGimpの「スタンプで描画」を使用します。
このアイコンです。
ただし、「遠近スタンプで描画」「修復ブラシ」と共通した場所にあるので、ほかのアイコンの下に隠れているかもしれません。
それでは修復の開始です。
Ctrl + クリックで②のスタンプ元を選択し、①のカバーしたいところをクリックします。
Gimpでは②の箇所は固定なので、広い範囲や別の箇所を修正したい場合は都度②の場所を選びなおす必要があります。
連続した直線では、スタンプ元も並行して移動してくれるようですが、この方法では修正箇所が周囲から浮いてしまい違和感を生んでしまうため、私は線で修復した方が楽な場合でも、ランダムに前後左右からスタンプ元を選びなおして修正しています。
スタンプのサイズはマウス右クリックのブラシサイズで調整できます。
もとの画像を直接修正していくので、レイヤーをコピーしたり、コピーファイルを作るなどしておくと安心です。
一方Kritaでは②の場所を用いての修正はできません。
Kritaでは「画像補完ツール」という似た様なツールがあるのですが、これはまわりから色を拾ってぼかして自動で修正してくれる仕組みのようです。
↑画像補完ツールのアイコン
しかし、これでは水彩用紙特有のざらざらとした表面がならされてしまい、そこだけ違和感のある修正となってしまいます。
Kritaでおでこのあたりの鉛筆の線を消してみました。
ここだけ妙にツルツルとしているのがわかると思います。
このため、ごみとり過程ではKritaではなく紙の質感を残した修正が可能なGimpをオススメします。
● 2. Krita:色調補正
スキャンした際に、どうしてもスキャナの特性で色味が変化してしまいます。
うまくひろってくれたり、ひろってくれなかったり。
ここではそれを修正していきます。
Kritaのソフト上部にある フィルタ/調整 から必要な調整フィルタを選択します。
調整が終わったら、必ず「フィルタマスクを作成」を押して適用します。
「OK」を押すと、画像そのものが加工されてしまいます。
「フィルタマスクを作成」であれば、新たに調整したレイヤーが作成されます。
ただし、フィルタマスクを作成しても時折適用されていないように見えることがあります。
これは調整レイヤーを作成したものの、適用範囲がない状態になっていることによります。
少し下で適用方法や適用部分を限定する方法を説明します(下記★部参照)
新たなレイヤーが作成されることにより、後に「このフィルターをもう少し濃くしたい(から当該フィルターを複製する)」「このフィルター効果を削除する・消してみる」といったことが可能になります。
HSV/HSL補正、レベル補正、明るさ/コントラストの3つを補正しました。
今回のように複数枚適用する場合、必ず元画像を選んだ状態であることを確認してから調整を始めてください。
作成済みの調整レイヤーを選んだままですと、そのレイヤーを調整しなおすことになり、新規で調整レイヤーが作成されることのメリットが失われてしまいます。
さらに、新たにレイヤーが作成されることにより、調整を適用する部分を限定することも可能です。(以下、上記★部分の説明)
上記を見ていただくと、真っ白なレイヤーと黒い中にポチポチと白い点があるレイヤーとがあるのが確認できます。
白い部分は調整が適用されている部分で、黒い部分は適用されていない部分です。
そのため、レイヤー1以下の調整レイヤーのうち、下3つは画像すべての部分に適用されていますが、明るさ/コントラスト・コピーレベル補正・レベル補正の3つについては、画像のうち白い部分のみに適用されています。
上3つの適用箇所を限定したレイヤーはそれぞれ以下のように調整しました。
①レベル補正:葉っぱを深い色にしたかったため使用しました、1枚では足りず、コピーして2枚使用しています。
②明るさ/コントラスト:頬と唇を明るくし、血色をよくしました。
調整レイヤーを選んだ状態で消しゴムで消すと黒くなり、ブラシで塗ると白くなります。Kritaでは消しゴムはブラシツールの中に含まれています。
ここまででおよその調整はおわりました。
リボンタイと本の金色が少し弱いように感じたので、新たにレイヤーを作成し、黄色やオレンジのエアブラシでリボン部分をなぞり、いい感じになるよう、覆い焼きレイヤーや色レイヤーに変更するなどして試行錯誤しました。
その後、左上をさらに明るくしたり、シャープにしたり、肌のトーンをあげつつ眼のあたりをもう少し濃くしたりなんやかんやしたのが下になります。
今回は調整レイヤーのみでお話しましたが、例えば肌に赤みが欲しいときには該当箇所を新規レイヤーで塗り、ソフトライトレイヤーに変更し不透明度を5%にしたりするのも方法です。
現に今回はリボンや本の金色部分だけでなく、瞳のハイライトや瞳孔も直接の色をのせてくっきり見えるよう加工しています。
これ!という決まった方法があるわけではありませんから、自分の絵にあった方法を探してみてください。
どこまで修正していいのかわからない!と思われるかもしれませんが、自由です笑。
展示会やアナログの原画を確認してもらうときにはデジタル媒体での公開はあくまでサンプルや見本といった立ち位置になるかと思います。しかし、デジタル媒体が最終的な発表の場では、そこで一番綺麗に見えるようにしてあげるのがよいと思います。
さて、一方Gimpでは新しいレイヤーは作成できません。
画像に直接適用され、Kritaでいう「OK」と同じ状態になります。
そのため、後に特定のフィルタのみを削除したり、フィルタ適用部分を調整することができません。
(正確には、新たにオーバーレイレイヤーを作成し、適用部分を塗り、これを調整することで色調補正が可能になる方法もあるそうですが、私はうまくいきませんでした泣)
したがって、あとから調整レイヤーの複製や削除が容易であるKritaの使用をオススメします。
● 3. Gimp:文字入れ
この文字入れについては例えば転載対策としてアカウント名を薄く入れたりするのが主になります。
必要がなければ必ずしも文字を入れなければならないわけではありません。
文字を入れるだけであれば、Kritaでも可能です。
しかし、ここでGimpをオススメするのは自由な文字ツメが可能であるからです。
フォントは
・それぞれの文字にちょうど良い幅が設定された「プロポーショナル(可変幅)フォント」
・すべての文字の幅が等しい「等幅フォント」
上記ふたつに大別することができます。
しかし、可変幅フォントであっても思った通りの間隔で文字が並んでくれるわけではありません。
Gimpではこの文字幅を自由に変更できるのに対し、Kritaではこの幅を調整できません。
これがGimpをオススメする理由です。
この文字ツメにこだわらないのであれば、色調補正のままKritaで文字入れでも問題ありません。
私はClipStudioをメインソフトとして現在使用していますが、文字ツメについては実装されていないため、この作業を行うときはGimpを使用しています。
文字を入れてみました。「iru」「ichi」あたりは文字間隔が開いているのに対して、「awak」あたりは狭く感じます。
私はキュッとしているほうが好きなので、下のようにツメツメにしてみました。
方法はとくに難しくありません。Photoshopと同じ方法で使用可能です。
テキストツールを使用して文字を入力したのち、詰めたい部分にカーソルを合わせ、Altを押しながらキーボードの任意の方向の矢印で調整します。
上の画像においては、「ruyawakichi」部分の文字ツメを終え、「i」と「r」の間をツメようとしているところです。
フォントはすぐ上にある小さなウィンドウからでは選択できないので、右側パネルから変更してください。
文字ツメ後、少し文字を移動させました。文字ツメと言っていますが、間隔を広げることももちろん可能です。
ちょっと濃いなー、と感じたら、レイヤーの不透明度で調整することも可能です。
● 4. フリーソフトとClipStudio、そして元画像の比較です。
このような差になりました。
同じ調整ができるわけではないので同じようにはいきませんでしたが、まずまずではないでしょうか。
同じ画像をこうして二度編集して比較したことはなかったので私としても新鮮でした。
やってみた感想としては、スタンプも色調補正もできるClipStudio+Gimpを使うのが楽だというのが正直なところです。
さらに、ClipStudioのほうがはっきりとした描写にできるので、さすがは有料ソフトです。
さらに、ClipStudioでは調整レイヤーをあとから調整し直したり、調整レイヤー自体の透明度も加減できるので使い勝手でいえばこの中ではダントツです。
ただ、Gimp・Kritaのほんわかとしたソフトな印象も捨てがたいですね。
私の再現性の薄い未熟な腕だから全く同じにならなかったのだ!ということも否定できませんが、およその傾向としてはズレていないように思います。
私が今まで触ったことのあるソフトはClipStudio・Krita・Gimp・Photoshopのみですから、ほかのソフトではまた違う結果になると思います。
使いやすさや利便性ではやはりPhotoshopが一番便利ですが(さすが王者!)、十分代用できると思います。
Photoshopも使用方法はあまり変わりませんから練習としてフリーソフトを使用してみるのもいいと思います。
余談ですが、レイヤー分けのような高度な調整こそできませんが、色調補正やトリミング、文字入れまでできる「Jtrim」というソフトも愛用しています。シンプルな機能でとても使いやすいです。イラストの途中経過をそこそこ綺麗に公開したいけれど、GimpやKritaを使ってまでやるのは面倒くさいときや、調整の目安を考えるときに使用しています。
▼ Jtrim
公式サイト:http://www.woodybells.com/
D L サイト :https://forest.watch.impress.co.jp/library/software/jtrim/(窓の杜)
おまけ:タイトル使用イラスト
『読書の秋、ふわりと香る金木犀』
水彩・絵墨
紙:ATCボード(マーメイド)
ご一読ありがとうございました。 もし、サポートいただけるようでしたら、それは今後の創作活動に役立てたいと思います。