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うまくできた日の走り書き:唐揚げの考え方
夫にたびたび、「料理の再現性が乏しい」と無念がられる。
「店が出せる!ってくらい美味しいときもあるのに、次の時はそうでもなくて悲しい。
あの生姜焼きが食べたい…あの豚ナス蕎麦も…もう食べられないことがもはや悔しい」
それでも頑として食べる担当の夫なので最大限私への配慮はみせつつ、切々と訴えてくる。
まあ、何を言いたいのかはわかる。
私は大雑把で、レシピを逐一メモしたり、逆にきっちりレシピ通りに作ったりすることができない。そりゃ、一度ならばできるだろうけれど、毎日となると性に合わないし、そんなことは毎日できない。
なのでなにもかも目分量で、適当にじゃんじゃんじゃんと作っている。
結果、たまに奇跡が起きたように美味しくなる時もあれば、神が降臨しない日も、もちろんある。
気持ちよく晴れた土曜日だった。
夫が、「何かとびきりジューシーなやつが食べたいなぁ~」という。
となりで息子が「今日はからあげパーティだねぇ」と盛り上げ、1歳半のくせに揚げ物に目がない娘が、訳も分からずアウアウと乗り気になっている。
ということでまあ、できるかわからないけれど、ちょっとは気を遣って、鶏の唐揚げを作ってみることにした。
◇
まずスーパーで、国産もも肉(しかも解凍ではない)を買う。100g128円。大きめの二枚で800円ほど。
少し高いような、でももう最近はこのくらいが相場なのかと諦めている。美味しくなってくれないと困る金額だ。
それをちょっと大きめに切る。大きめのほうがジューシーに揚がるような気がする。
切るときは肉の薄くなっているところではなく、身が分厚めになっているあたりを選んで包丁を入れる。
薄くなっているところで切ると、厚い部分の火の通りが気になり、ついつい揚げすぎる。口に入れたときもパサつきが若干気になる。
とはいえまあ、できれば程度。適当にダンダン切って、ビニール袋に入れる。
しょうがとニンニクのチューブをぎゅうッと絞る。
2~3センチくらい?この量であまり失敗したと感じたことがないので、もっと冒険してみてもいいのかもしれない。
さらにマヨネーズを、ペットボトルのキャップくらい。
いつもは肉を柔らかくするために塩麴を入れるけれど、切らしていたので酢を期待してのマヨネーズだ。
これもあまり失敗しない気がするので、恐れずに入れる。
最後に醤油と酒。
揚げる前に粉を入れ、ある程度白いまま揚げたいので、びちょびちょにならない程度にしておく。うちは幼児も食べるのでやや薄味だ。
ここで今日は、1時間常温で置いた。
夏場ならさすがに冷蔵庫に入れるけれど、今日は夫がしつこく「ジューシーなのが食べたい」というので。
冷たい肉を、一気に温めると硬くなる。
ならば肉は常温、そしてぬるめの油からじっくりと揚げる…という作戦。
揚げる前に片栗粉と小麦粉を入れる。もちろん適当。少ないよりは多い方がいい。余っても勿体ないだけだ。バランスは半々くらい。
袋ごと振って全体になじませて、すこしだけ置く。粉を入れてすぐに揚げると、油の中が粉だらけになるし、そのぶん衣が薄くなってしまう。
ここは失敗しがちなポイントだ。せっかちな私はついおざなりにして、粉を入れてそのまま揚げて後悔する。
わかっているので今日はこの間に、ほうれん草とえのきのかきたま汁を作った。
汁物は手軽に野菜やタンパク質が加えられるので、子どもができてからはよく作る。
これもお湯を沸かして適当に具と醤油や酒や白だしをポンポン入れて終わり。
…だったのだけれど、そうすると、ほうれん草のアクが出て汁が緑になったり、味がうすぼんやりしたりする。
なので最近は、ほうれん草はさっと下茹でするし、料理酒は紙パックの清酒をつかう。このひと手間がアイラブユー。そして、塩。
結局、塩をさっと足せばどんな料理も少し輪郭がくっきりする、と最近気づいた。
以前は、めんつゆ、白だし、だしの素で全部何とかしようとしていたけれど、それだと妙にしつこく、なのにぼんやりした味になる。おまけに経済的じゃない。そんなときは塩なのだ。ひとつまみの塩。
汁を作ったところで、唐揚げを揚げる。
油はいつもケチって肉の半分程度。これでも最近増やしている方だ。揚げ焼きだなんだと足掻いてきたけれど、結局たっぷりの方が美味しいし、失敗しない。
引っ越してキッチンをIHにしたのだけれど、これは意外と使い勝手がいい。温度管理ができるので、特に揚げ物は楽。160℃から入れて、じっくりと揚げる。
表裏合わせて3~4分で一旦上げる。
ここがいつも難しい。二度揚げするので全体がまだ白っぽい状態。でも火はなるべく通っていてほしい。それでいつも揚げすぎる。
今日はジューシーがテーマなので、私の中では若干攻めて早めに上げた。赤かったらあとで揚げなおそう。
開き直ってどんどん揚げて、一巡目終了。
ちょうど風呂から夫と子どもたちが上がってきたので、先にご飯や汁物や食器を並べる。というか、4歳の息子がせっせと並べてくれた。息子はお手伝いが好きだ。
ありがたい反面、それってお手伝いすることで褒められたい、愛を求めているってこと?愛が足りてないってこと?そういう愛でいいの?
などと若干無邪気でいられない戸惑いがある。けれど、まあ日々助かってしまっている。
自然にしてくれたときに、あっさりと感謝すること、無理強いはしないことを心掛けている。
全員がリビングに集まってきたら、いざ二度揚げ。
今度は170℃で、温める程度に揚げる。
白っぽかった唐揚げが、少し茶色くなってきたあたりで完成。
温度が高そうになるとすぐ160℃に下げる。温度が高いとあっという間に硬くなるのだ。とにかく今日はジューシーを重視。なんつって。
◇
そんなこんなで揚げた今日の唐揚げ、結果はかなりいい出来だった。
衣は軽く、さっくり、肉はやわらか、歯切れがいい。
この良かった成功体験は、ちょっとメモしておこう。
と思ってnoteを書き始めたのだけれど、まあなんて沢山のことを考えているんだと我ながら驚いた。
適当、適当、と言いながら、レシピをいちいち参照せず、それでも美味しい料理をつくるには、たくさんの決定が必要になる。
失敗して学んだこともあれば、レシピ本やテレビの料理番組で教えられたこともある。
いろんな知識を総動員して、かつそれを脳内でフル回転させるコンディションがあってこそ、初めておいしいごはんができるのだ。
そりゃ上手くいかない日もあるわけだよ。大変なんだつくるのは。
とにかく、今日ここに書いたから、きっと唐揚げの再現性は今までよりも上がったはず。
子どもたちが思春期になって反抗してくる頃までに、こういう鉄板レシピを増やし、胃袋を掴む母になりたいと思う。
「家事の中で料理がいちばん苦手」
という義母が、帰省のたびにテーブルに溢れんばかりのご馳走を並べてくれるたびに、
若き日の義母が、夫を含めた三人兄弟を必死に食べさせていた日々に思いを馳せる。
おいしいごはんは一朝一夕にはならないのだ。
今夜も私はごはんをつくる。
成功するかはわからないけれど、
失敗しても、それが成功のもとになることは知っている。
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