「かぞくのわ」二次創作掌編3
(※こちらは、先日上演されました「道楽息子」様の舞台「かぞくのわ」の二次創作掌編です。主宰である表情豊様の許可を得て執筆、掲載させていただいております)
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ランドセルの色は、水色
それが許されるギリギリの選択だった。
『 Quiet-マリの場合-』
生まれも育ちも東京、なので親元を離れたのは就職を期にやっと、だった。
それから数年して、今の会社への転職に合わせ、会社の近くに引越し、そして電話番号も、SNSの名義も変えた。
勿論両親や親戚にも、今の住所は知らせていない。
魔女っ子よりヒーローごっこで遊び、好きな色は青。
ほんのちょっと風変わりだが、礼儀正しい、しっかりした長女。
その、周りの評価に乗るカタチで、そこからはみ出さずに生きて来たつもりだった。
それが酸欠の金魚のように息苦しいと感じたのはいつからだっただろう。
十五歳の時、両親から期待されていた超エリート校の受験を失敗し、地元の女子校に進学した。
その時代が一番気楽だったかもしれない。
青や黒を好む、しっかり者の生徒会長は、副会長といつも連れ立っていた。
スレンダーで、やや面長な大人びた容姿の副会長は、見た目に反してサバサバとしていて、生真面目生徒会長とはウマが合った。
生徒会活動以外でも、しばしば行動を共にしていた。
「将来は出版社に勤めたいんだ」
と言っていたのは副会長の方だった。
「だからさ、同じ大学に行こうね!」
とすら言っていたのに…。
高二の秋
「カレシが出来た」
というひと言のメールのあと、副会長の成績はガタ落ちしていき、会長の彼女との進路を別つ結果になった。高校生としては良くない噂が流れ、副会長は三年の夏休みを前に退学して行った。
『松田先生』のマンションに原稿を取りに行くのは、本当に気が重い。
(全く、今どき手描き原稿とは…)
先生のマンションからは母校の校舎とグラウンドがよく見えるからだ。
日々仕事に明け暮れていても、どうしても"あの時"に気持ちが巻き戻ってしまう…。
ワタシは、いつまで酸欠の金魚でいるのだろうか?
──ピンポーン。
「こんにちは」
「あ、葛城さん、どうも…」
呼び鈴を鳴らすと、インターホン越しに、メガネをかけたもう1匹の"嘘つき金魚"が愛想笑いを浮かべた。
(おわり)
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