20歳の(仮)青春

 昨日合宿免許から帰ってきた。
私は記憶力が良い方ではないし、写真もあまりとっていないからすぐに忘れてしまうであろう2週間の思い出を残しておこうと思う。
マジで私の記憶を綴っているだけなので読まない方がいいかも

 初日。
恥ずかしながら、私は新幹線のチケットの買い方も分からなくて駅員さんの言うままに浜松駅までのチケットを買い、品川から新幹線に乗り込んんだ。
今考えれば自由席でよかったが、人の少ない指定席でそわそわしながら到着を待った。新幹線は思っていたより速く、一時間ほどで浜松駅に到着した。
そこで明らかに自分と同じ境遇であろう人たちを見つけ後をつけた。
読み通り、集合場所にたどり着くことができ、そこから送迎バスに乗り込んだ。その時初日の日程を説明してくれた教官の名前はもう覚えていないけどすごく親切だったし、技能教習で当たってみたかった人の一人。

 私が行った車校は浜松にあってめちゃくちゃネットでの評判がよくない(笑)
なんでそんなところを選んだのかと言うとただのリサーチ不足である。
まあ、ネットの情報なんてあてにならないと言い聞かせているうちに自動車学校についた。
はじめに少し注意事項を聞いたり適性検査を受ける時間があった。適性検査は性格診断みたいで私は結構やってて楽しかった。少しだけ自分を素直に見せるのが恥ずかしくて、見栄を張った回答をしてしまった。
昼食で初めて友達ができた。ここではHちゃんとでも言っておく。Hちゃんは1つ年下の女の子でほんわかした雰囲気の子だった。このHちゃんと卒業検定までほとんど一緒にいることになる。

初日の夜、気を抜いていたら技能教習が入っていた。
初めて握るハンドル。ビビりな私は異常に緊張してハンドルを持つ手はがちがちになり、アクセルも踏めずマックスで確か25キロほどしか出なかった。
その時の教官は初回の一回しか当たらなかったが癖強めで面白いおじさんという印象だった。「あなたはこれから色んな教官にたくさんのことを言われて時には真逆のことを言われるかもしれないけどあなたらしい運転を見つけていくしかないんだよ」と言われた。
その時は何となく感動したが、今思えばその辺はしっかり教官同士で教え方決めといてよと思う。
このおじ教官の言う通り私は教官のいうことにたくさん振り回された。

 正直すでに第一段階の記憶はほぼない。ただただ敷き詰められたスケジュールの中で成長しない自分の運転に落胆し軽く病んでいたんだと思う(笑)
そのまま何となく仮免の試験日になった。
当り前だが、私は技能試験に落ちた。受かる気もしていなかったがよくわかっていないことだらけでこれから何回受けても受かる気がせず、ホテルに帰ってから放心状態だった。


 仮免に落ちた次の日の朝一で補修が入っていた。
眠い目を擦りながら配車券を出すと初めて見る名前の教官だった。ここではTさんとするが、この教官がこの免許合宿でできた第一の推しである。
Tさんは背が低くて眼鏡をかけた30歳(いってないかも)くらいの見た目で、決して口数は多くないけどミニオンみたいで可愛かった。
Tさんは淡々と検定コースを指示して優しい口調でアドバイスをくれた。身長の関係もあるのかもしれないが、全く威圧感が無く緊張せずに運転することができて、その日まで分からなかったことが全部理解できて初めて仮免に受かれるかもしれないという気持ちになった。

 仮免(再)試験の日。Hちゃんも仮免の実技に落ちていて、一緒に受けに行った(不幸中の幸い?)。私は大きなミスなく終えることができ、2回目でやっと仮免を取得することができた。
この日、同じ日に合宿に来ていて同じく仮免に落ちていたJちゃんとKちゃんとも話せるようになった。
Jちゃんは1つ上の大学四年生で可愛らしい女性でKちゃんは金髪ロングでスタイル抜群の大学二年生。
この二人ともたくさん話せるようになって楽しさもぐんと跳ね上がった。

 仮免取得後、第二段階に入ってからはきつい時間より明らかに楽しい時間が多くなった。
第二段階で一度だけTさんにあたった時は嬉しすぎてJちゃんに報告しに行った(JちゃんもTさんを推してた)。
Tさんには方向転換、縦列、幅寄せを教わった。マジで絶対に褒められてくて死ぬほど集中してやったら「うん。いいですね。」と言われて嬉しかった。(冷静になると別に対して褒められてなかったけどこの時はモチベが爆上がりしたのでまあOK)

 ただいい出会いがあれば、悪い出会いもあるわけで、、、私は数少ない女性の教官2人にどちらとも当たった。
一人はMさん。スピードがなかなか出せない私に対して、「怖いよね〜、わかるよ〜。」と共感してくれて、スピードが出せたようになると、今の!今のいい感じ!頑張ったね!ともったいぶらず褒めてくれた。2回しかあたっていないが大好きな教官の一人。

問題はもう一人の女性教官。名前は忘れた。
第一段階で一度当たったときから何だか嫌な予感はしていた。夜の教習だったこともあるだろうが、異様にため息が大きくて多い。
正直、うざい、、。お前の仕事だろ?と言いたくなるのを我慢しながら、ぎりぎり聞こえるか聞こえないかの声量の指示を聞き取り走った。
この嫌な予感は第二段階ではっきりと嫌悪感に変わった。私とHちゃんともう一人男の子の3人で複数教習がその女性教官に当たった。
はじめに運転した私は張り付いたような笑顔でその人の不機嫌を乗り切った。何となく波長を合わせ、これ以上機嫌を損ねないように。
しかし、Hちゃんは優しい、、いや優しすぎるのでその教官の嫌味が受け流せない、はじめは安定していた運転も何か口出しされる度に後部座席にいてもわかるくらい動揺し、焦っていた。大丈夫かな。そう思った時なんの前触れもなく補助ブレーキが踏まれた。
突然のことに話したことない私と男の子が後部座席で目を合わせた。
「こんな運転でどうするの!」
特になんの脈略もない怒号。何が悪かったのか。何が危ないのか。解決策はなんなのか。問題点はどこなのか。1つもない。ただ、危ない。それのみで3分ほど怒っていた。
顔は見えないが、おそらくHちゃんはこの時既に泣いていたと思う。
車という乗り物が危ないのも、人を殺してしまうかもしれないことも、分かっている。技術が伴わないから、練習してるんじゃないのか。最悪の事態が起こらないように貴方が事前に教えるんじゃないのか?なんで結果だけずっと口にしてるんだ?私は頭がはてなでいっぱいだった。加えて私の隣の男の子はこの後に運転だったので顔が死んでいた。
そのまま、傍に寄って駐車措置をし、席を交代して男の子の運転になった。
私はHちゃんの顔は見れなかったが明らかに啜り泣く声がした。
ただ私がもっと許せなかったのはその男の子には死ぬほど甘いことだ。
は?どういうこと?
別に私の運転ともHちゃんの運転ともそんなに変わらない。目立って下手では無いが、特段上手いわけではない。
教習が終わった後その男の子も何も言われなかったのが逆に拍子抜けのような顔をしていた。
こいつ無理だ。それからというもの配車券を出す度にその女性教官の名前がないかドキドキした。
その人に当たった時には、友達に励ましてもらった。

 高速教習はHちゃんと一緒でIさんと言う教官が担当だった。
Iさんは陽気で優しいけど、どことなく若い時ヤンチャしてたんだろうなという雰囲気のあるイケオジで高速に乗っている間、色んな浜松の情報を教えてくれたり、高速道路のエピソードトークをしてくれた。本当に楽しくて全然教習所に帰りたくなかった。
Iさんにかにぱんを作っている工場が浜松にあることを聞いてからかにぱんを食べる度に車校を思い出す。
私は運よく最後の終了検定がIさんで緊張を和らげる声掛けをたくさんしてもらえた。

 第二段階で一番印象に残っているのは見た目27歳のSさん。
第二段階に入ってから急に当たるようになって路上教習3回と場内バックの練習で1回計4回担当してもらった。
Sさんは初めてした会話が「仮免一回落ちてるんだ、お疲れ様で~す」で普通にむかついた。
長身で細身でセットしてない髪茶色で他の人が黒い分目立つ教官だった。
Sさんは基本的にラフで、道案内以外も何かしら話している人だった。はじめてあたった日は路上教習が3回目くらいだったこともあって余裕もなく、全然会話のラリーを返せなかったが2回目以降は余裕も出て教習の学科の話から全く関係ない高校時代の話や趣味の話をした。
2回目の教習のときに、Sさんがにゃーと言うキャラの筆箱を使っていたので私が「筆箱にゃーなんですね」と言ったら想像以上に食いついて「え、分かる?たまにいるんだよね!にゃーを知ってる人!!」とオタクトークを10分くらいされたのがおそらく印象に残ってる一番の原因だ。
50分間ほとんどノンストップで会話してくれるので、助手席に友達を乗せている感覚で走れてすごく楽しかった。
ずっと歳があまり離れていないと思って話していたのに、最後の路上教習の会話の中で今年で34と言われたのが衝撃的に面白くてハンドル持つ手が離れそうになるくらい爆笑した。あと、個人的に効果測定の成績を褒めてもらえたことが嬉しかった。冷静になってみるとめちゃくちゃ失礼だったかもしれないけど、もう会うことは無いのでいいかな。ここで謝っとこう。
すいません。

 すでに思い出が美化され始めていて、もう一回行きたいなんて、ヘラヘラ考えている(笑)

友達と文句を言いながら授業や教習をやるのもすごく楽しくて、配車券を出す度に一喜一憂して、合格した瞬間に都合よくめちゃくちゃ帰りたくなくなって、逆ホームシックのような状態になった。

きっと、いつか、いやたぶん近いうちに、自分の家の車の運転に慣れてきたころには顔も名前も話した内容も覚えてなくて、思い出そうともしなくなってしまうだろうな。

一瞬だけ、たかが2週間だけだけど軽い青春の味わった気分。
辛さもキツさも楽しさも悔しさも嬉しさもぎゅっと凝縮した無駄のない2週間だった。
免許合宿に青春を感じてる私はたぶん相当末期だし気持ち悪い。ここまで読んでる心優しい(物好きな)人で免許を合宿で取ろうとしている人が居たら、楽しいだけのものではないとだけ忠告しておきたい。でも、やってれば免許取らせてくれるから絶対取りたいなら行っちゃった方がいいのかも。

マジで免許持ってる人全員すごいよ。

これから2週間やっていなかったいろんなことを片付けないといけないと思うと気が滅入る。


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