「強い言葉」に免疫がなさすぎる

私は、強い言葉が苦手だ。

相手がからかっているだけ、冗談を言っているだけ、というような言葉でも傷ついてしまう。要するに豆腐メンタルだ。

どのくらいの豆腐メンタル度合いかと言うと、「ちょっと傷ついたシーンは幼少期から全部覚えてる」ってくらい。いや、大したことのないものは忘れているから「全部覚えている」と認識しているのかもしれないな

小学６年のとき、同級生の男子が言ってた「いりーは友達が多いと自分のことを勘違いしてるけど、あいつのこと誰も友達だとは思ってないよな」という悪口とか。

幼稚園の年中で、同級生の男子に「地獄行け」って唐突に言われたこととか。

他、道を歩いていただけで知らん人に「ブス」って言われた回数は、ありすぎて忘れた。あれ？

最近の出来事として、買い物で店員に「レジ袋必要なら早く言ってくださいよ。後ろ詰まるんで」と言われた時はショックすぎて少なくともその日中はずっとそのことについて考えてた。何が悪くて、何を次から気をつけたらいいのかとか。

夕飯時、母に２年前の教育実習での愚痴をなんとなく漏らしたら、「２年も前のこと覚えてて根に持ってるなんておかしい」と言われたし、普通の人はそんなに昔の出来事は忘れるものなのだろうか。

私はどうしてこうも豆腐メンタルなんだろう？別に育ちたくて豆腐メンタルに育っているわけではない。

甘やかされて育ったのかな？と思った。

一つ思い当たることは、私の身の回りには強い言葉を使う人がほとんどいないということだ。友達も基本穏やかな人が多い。

とある友達に家庭内での会話を教えてもらって、ギョッとしてしまった。

彼女には兄弟がいるんだけど、毎日のように「ブス」って言い合っているらしい。「こいつほんと使えねーな」「バカじゃん？」「お前いい加減にしろ」みたいな言葉はお互い当たり前のように言うらしい。

私だったら、一度「ブス」って言われただけでも忘れられないのに、毎日のように言い合うなんてとても生きていけないなと思った。

「強い言葉を気軽に使える文化圏」と言うものはあると思う。特に男性同士の会話を見ているとそう感じる。忖度し合う文化が薄い。別に悪いことではない。気軽に強い言葉を使っている分、その言葉の強さは相対的に弱まっているから。

そして、今の世の中では、「強い言葉を気軽に使う文化圏」の方が割合として多いと思う。少なくとも自分にとっては。

「バカじゃないの？」でビクッとしてしまう自分にとっては、テレビのバラエティ番組でのちょっとしたいじりも、ユーチューバー同士の互いに下げあっているやりとりも、ふつうの男性同士のコミュニケーションも、だいぶ強い。

この文化圏の方が多い中、あまりに強い言葉に免疫がないと、社会でやっていけない気がする。例えば「ブス」と言われても傷つかない鍛錬をするというよりは、その言葉の価値を自分の中で弱めていく訓練が必要かもしれない。

最近気がついたけど、強い言葉を言う側って本当に軽い気持ちで言ってるし、言ったことすら覚えてない場合が多い。

例えば「バカじゃないの？」というような言葉は、単なるコミュニケーションの場合がほとんどではないかと思う。これは結構大きな事実なのだけれど、人は、基本的に他人を故意に傷つけようとして発言することはない。特にそこまで親しくないような関係で故意に傷つけるつもりで発言する人はヤバイ人なのでもう視界に入れなくていい。

下げや悪口でも大体軽い気持ちで言うし、そんな軽い気持ちで言われた言葉を真に受けるだけ損だと思う。軽い気持ちで言われなかったら多分恨まれてるけど、恨まれるようなことした覚えがないなら全く気にしなくて良い。

自分だって、今まで言った悪口は都合よく記憶から消してるんじゃないの？

自分は甘やかされて育ったと思っていたけど、よく考えたら叱られたことが全くないまま育ったわけじゃない。家で受けた教育は正直甘かったかもしれない。でも音大受験のためのレッスンでは毎週怒られていたし、高１くらいまで毎週泣いてたし、レッスン前は先生の家の玄関前で神様にお祈りを捧げていた（本当）。

「怒られたと言っても、運動部の人とかもっとキツく怒られて育ってるだろうな」と考えていたけど、今は教育方針が変わって、部活でも子供達が楽しく活動できるよう配慮しているところは多い。

そう思うと「自分ってそんなに甘やかされて育ったわけじゃない」と感じられるようになった。

ただ、「強い言葉」にあんまり揉まれずに育った。一人っ子なのも関係しているかも。競い合う兄弟がいないから。

今の自分にできる事といえば、「強い言葉」を言ってきた相手の事情をちょっと考える事（軽い気持ちで言ってるんだろうなと）。そして、おとなしい世界にだけ住まず、色々な文化圏や界隈に入っていく事。人間関係を停留させない事。

このままじゃ私は多分大阪に住むこともできないから、「メンタルを強くする」というよりか、「言葉の価値をアップデートする」という行為が必要だと思う。

いりー