Rey

二十歳 愛を信じて素直に生きる

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梅ヶ丘のマンション

この手紙が一体誰に宛てて書かれたものなのか、私には存じませんが、梅ヶ丘駅の北に建つ、古びた赤褐色のマンションの4階、右から数えて二つ目の部屋、そこにこの手紙の主人が籍を持つものと思われます。 君には見えるでしょうか。当のマンションですが、やれ、あらゆる不動産屋を回ってみても、近所の住人に聞いて回っても、だれ一人として、そのマンションを知ると言うものはいないのです。 また、地図を開いてみても、マンションがあるはずの場所は、空き地のように表示されているばかりで、何の詳細もつか

    • 観点の共有

      物事には表と裏があるだけではなく、多角形のように、あるいは球のように様々な側面があり、角度によって見え方が変わるもの。 だとすれば、これはこうだと断言することはできないし、他人が話すのをそのまま受け入れてもいけない。 自分の目に今見えているように、他人にもそれぞれ独特の観点がある。 ただ、世界の見えかたをそれぞれの観点から共有することで、その世界がより深くなるだろうなと思った。

      • 愛着を手放し新しい世界へ

        見知らぬ街での新生活のスタートってとてもワクワクする。 物件探し、家具の買い揃え、新生活の準備ほどドキドキワクワクして期待と不安に胸を膨らませることはない。この街でこれからどんな素敵なことが私に起こるのかしら、どんな人とであえるのだろう。 一方で、わたしは自分の生まれ育った街が大好きだ。小さい頃から近所の人に助けられ、育てられ、あたたかく見守ってきてもらった。小学校までの通学路が好きで、自分も将来こどもができたらこの街にすんで同じ小学校に通わせるんだぁとルンルンしていた。

        • 成長とは

          成長とはなにか? 成長ではなく日々変化しているだけなのではないか? 成長ではなく、日々価値観が変わり細胞が変わり考え方が変わるだけではないか それはもしかしたら後退かもしれないし現状に止まっているだけかもしれないのに。 なぜひとは都合よく成長という言葉を使いたがるのか。 自己実現に向けて確かに近づいていればそれは成長であろう。しかし、自己実現に近づいているとどうして分かりうるのか。その変化が自己実現に近づいたものとはじめて判断できるのは自己実現が済んだあとではないか

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          失ってから知る

          家族や友人、愛人を失ってからの方が生きているときよりも愛したり、深く考えたりする。 私たちは何かを失ってからはじめてその価値を知る。 だからこそ、今の自分の周りにあるものを、当たり前と思わないで大切にしなさい、とよく上から言われることがあるが、当人にとっては大抵そんな言葉は響かない。頭で理解しても心が理解していないから。 後悔はどんな罰よりも自分を苦しめる、ということをね。 世の中には、失ってから真の価値を知ること、がない人もいる。 彼らは決してサイコパスな訳じゃな

          失ってから知る

          客観的・俯瞰的になることと純真さ

          今よりもっと世界が広がれば、知識が増やせれば、客観的に、俯瞰的に、自分の状況を見つめられれば、もっと良い判断が下せるかもしれない、もっとよい道が見えてくるかもしれない。 なんとなくそう思って、本を読みはじめた。一冊、また一冊と少しずつ読み進めていくうちに、いつしか学術書、哲学書を読み漁るようになり、読書が生活の一部、ではなく、生活そのものになりつつあった。 そして、当初の思惑どおり、世界が広がり、一つの物事をいろんな方向から見つめることができるようになった。 あれこれ可能

          客観的・俯瞰的になることと純真さ

          自然のなかに歌を見いだせるときがある。 じーっと耳を済ませていれば、遠くで鳴いてる鳥の声、風の音、街ゆく人の足音、虫の音、それら全部の音が織り合わさって歌になっていることに気がつく。 案外わたしたちのまわりでは、わたしたちの知らない世界が広がっているのかもしれない。

          思うよりも人はやさしい

          お気に入りのキーホルダーがないことに気づいた。 学生カバンの表側につけていたトリのモチーフのキーホルダー。 床を探しても落ちていないし、机やロッカー、教室中をまわっても見つからなかった。朝登校したときはついていたのに… ‘’かわいいから誰かがひものところをひきちぎって持っていったのかしら‘’ 残念な気のまま放課後になって校門をくぐった。 学校の帰り、学生カバンを持ったままなんとなく近所を寄り道しようと思い立った。大通りをそれる道に緑道があり、そこへ入ると、上から下まで木

          思うよりも人はやさしい

          ひびかない

          朝起きて、カーテンを開けて白湯を飲む。昨日からはじめたフィスティング生活のために今日も固形物を摂らない。 茂木健一郎さんが言っていた一時間集中チャレンジ(名前曖昧)を今日は4回、つまり4時間勉強や作業に当てる、と昨日の夜に決めた。いまのところ、2時間がんばったので、残りは午後もう2時間、中国語の勉強をしようかしら。 こうしてずっと家にいると何か大きいことを成し遂げたい、世界的に有名になりたいという野望がふつふつと湧いてくる、自分の中の野心が「ねぇ、あっちへいこうよ~」とわ

          ひびかない

          テドくん

          下弦のお月さまがトゲのように美しい静かな夜のことでした。 テドくんは泣きたい想いで窓際のカーテンを閉めました、 カーテンはテドくんが柔らかい心をもったとてもやさしい子で、そのために傷つきやすいことを知っていました。 その日、テドくんは教科書を取りに席を立って、教室の後ろのロッカーへ歩いているとき、ふいに床に転がっていた誰かの丸っこい消しゴムにつまずいてしまいました。幸いにもテドくんは自分の右に置いてあったゆゆちゃんの机に手をかけたため派手に転ばなくてすみ、ホット胸を撫で

          テドくん

          愛らしさ

          お母さんはわたしの顔を見てかわいいと言う。 小さい頃から、かわいいと言ってくれたのでわたしはそのたびに確かに嬉しかった。 高校生になると少し太って顔もまんまるくなったがお母さんは相変わらずわたしの顔をかわいいと言っていた。そのため、わたしは自分はかわいいと疑うことなく信じていた テレビや雑誌を覗けば、世間から評されている女優さんやモデルさん、アイドルがキラキラ活躍している。彼女たちは顔立ちが整っていて美しい。 一方でわたしは万人受けするような顔ではない。しかしかわいい

          愛らしさ

          旅路

          生きてることに気づいたのはついこのあいだ それまでといえば、見るものすべてがともだちで 帰り道の公園のジャングルジムがすきだった 軒下に見つけたひみつ基地 シールとドロップを持ち寄って 暗やみでもこころは見えた 空を叩いてみる 鈴を鳴らしてみる 鳥をさすってみる いつか自分もあの雲に届くほど 大きく大きくなれる気がしていて 踏んでも踏んでも沈まぬ大地を踏みつづけ 歩いても歩いても続く一本道を尚も進む 今日着た服はもう着ない タンスの奥へしまいましょう

          甘いしあわせ

          俗社会に溶け込む大人になってからというもの、どうも甘いものが苦手だ。 甘さという刺激に対して、心がうんざりして、そして口中の歯と舌とその周りがうんざりしてしまう。食事は米がありゃ十分だ。いつもは炊飯器で米を炊くが今日は特別釜で炊いてみようかな。「ピンポーン」 呼び鈴が鳴った。米びつの前で立ち上がって玄関へ向かった。どうやら、おとなりさんがケーキを作りすぎてしまったのでよかったら食べてほしいとのことらしかった。 長方形のタッパーに切り良く収まったバターケーキはツヤがあり美味しそ

          甘いしあわせ

          夢の話 宇宙のともだち 謎の手紙

          ある日僕はいつものように帰り際に郵便受けを覗くと一通の白い封筒が入っていた。 差出人の名前は書いておらず、そこには知らない街の切手と見たことのない押印と封筒の裏の右下にとても小さくptsol42と書かれていた。 かろうじて読めるくらいそれは小さいかったのでもしかしたらptso142かもしれないしptsol4zかもしれなかった。僕はとりあえず家のドアを開けてなかに入り、カーディガンを脱いで手を洗い窓を開けてソファに座った。春が終わりそうだというのに外の風が妙に冷たかった。封筒を

          夢の話 宇宙のともだち 謎の手紙

          鋭い勘違い

          アオテンは朝4時半に起きる。スマホのアラーム音で目が覚め、ぽわーっと大きなあくびを一つ打つ。ぼさぼさの寝ぐせ頭を横たえた枕の上に敷いたタオルがよれている。信じられないほどに軽く薄っぺらい掛布団を脇によせて、アオテンは仰向けのまま両足をそろえて高く掲げ、両手で膝の裏を支えるように抱えて、自分の足の甲を見つめた。爪が伸びすぎているかもしれない。はて、最後に爪を切ったのはいつだったけな。アオテンはそう思いながら、足の指をめいっぱいに広げてみたり、まためいっぱいに結んでみた。足の指を

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