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【連載小説】「愛の歌を君に」#9 焦る氣持ち


前回のお話(#8)はこちら

前回のお話:

ソロシンガー・レイカの仕事が入った。しかしバンド活動に注力している最中の依頼だったため仲間に相談すると案の定、智篤ともあつに反発される。信用を失いたくなければ断れと言われ、麗華は覚悟を示すためにその場で断りの電話をかける。その瞬間、これが「ソロシンガー・レイカ」の仮面を取ると言うことか、と悟る。
翌朝、早くに目覚めた拓海たくみは公園で夜明けの瞬間に立ち会い、曲のインスピレーションを得る。いよいよ声を出すのが難しくなってきたと感じ始めた拓海は、この曲を残しておこうと決める。
そこへやってきた智篤は拓海の覚悟を知り、改めて彼を失いたくないと思う。そして自分に出来ることはないかと考えた末に、麗華と一緒に拓海を想う曲を作ることを思いつく。


25.<麗華>

 拓海の部屋で三人、それぞれに曲作りをしているところへ所属事務所から電話がかかってきた。恐る恐る電話に出ると『相談も無しに仕事を断るなんて、一体どういうつもりなの?』と、開口一番に言われた。しかも相手は社長。直々の電話に恐縮しながらも、あたしは「もう少しだけ仲間と活動する時間を下さい」と懇願した。

「今、一番大事な時なんです。こればかりは、社長になんと言われようとも譲れません」

『仕事がなくなるかもしれない、と言っても?』

「はい……。覚悟の上です」
 きっぱり言うと、社長はため息をついて数秒黙り込んだ。

 バンド活動が長引けば仕事がなくなるどころか、いつか退所を言い渡される日が来るだろうとは思っていた。しかし覚悟していると告げたからには、また自ら断りの電話を入れたからにはどんな決断が下ろうとも受け容れるつもりでいる。もちろん怖さはある。けれどもあたしは一人じゃない……。

「……もしかして、所属事務所から? 昨日、仕事を蹴ったからお叱りの電話か?」
 拓海がささやくように聞いてきたので小さく頷く。
「ったく……。智篤が余計なことを言うから」

「断りの電話を入れたのは僕じゃないぜ? 言いがかりはやめて欲しいね」

 隣で二人が言い合いをしていると、社長が声のトーンを落として失望感をあらわにする。

『……レイカは長く所属してるし、これまで頑張ってきたのも知ってるから、ちょっとくらいわがままを聞いてもいいかなと思って自由にさせてきたけど、今回の身勝手な振る舞いには正直がっかりしてる。……昔の仲間との活動の方が優先度が高いとでも言うの? そんなに大事なの?』

「はい……」

『……理解に苦しむわ。調べさせてもらったけど、レイカが一緒にバンドを組んでるのって、インディーズで活動してきた人たちなんでしょう?』

「インディーズとメジャーは活動場所が違うだけで能力に差はない、というのが今のあたしの考えです。社長も聞いてみれば分かります。彼らの音楽はとても素晴らしいですから」

『……レイカの作る曲とはだいぶ毛色が違うようだけど? 私は別に、彼らの音楽を否定してるんじゃないの。レイカが彼らの音楽に染まってしまうんじゃないかって、そっちを心配してるのよ。……悪いことは言わないわ。一日でも早くバンド活動を終えてこれまでの仕事に戻ってちょうだい。それがあなたのためよ』

「…………」

 社長は純粋にあたしのことを想ってそう言ってくれているのだろう。その優しさは確かにありがたいと思う。しかし隣にいる二人の、射貫くような視線を無視するなんてあたしには出来なかった。

「……ごめんなさい、今は戻れません。二人と交わした約束を破る訳にはいかないんです」

『……それが、あなたの氣持ちなのね?』

「はい」

『……頑固なのは知ってるけど、これほどまでとはね。分かったわ。もう少しだけ自由にさせてあげる。ただし、次に大口の仕事が入ったときには勝手にキャンセルしないように。それだけは守りなさい』

「……わかりました」

 電話はため息と共に切れた。通話を終えたあたしはしばらくの間、言葉を発することが出来ずその場で立ち尽くした。

 すると横から突然、拍手が聞こえた。
「君の覚悟を見せてもらったよ。合格だ」
 智くんは満足そうに言った。
「これで安心して共作できる」

「相変わらず偉そうだなぁ、お前は。少しは麗華の氣持ちも……」

「あたしは大丈夫よ、拓海。たとえ首を切られていたとしても、あたしの隣には二人がいてくれるから。そ・う・で・しょ・う?」

 顔を智くんに目いっぱい近づける。智くんは一瞬ひるんだが、売られた喧嘩を買うかのように額をひっつけ、押し返してきた。

「ああ、そうだ。もっとも、君を誘ったのは拓海だから最終的に君の面倒を引き受けるのは拓海だけどね」

「おいおい、いまは三人で一つのグループなんだぜ? 麗華に何かあったときはお前も責任の一端を担うんだよ」

「やだね。それはリーダーの仕事だろ?」

「麗華を恨んでるからって、いつまでもそうやって責任逃れするなよ……」
 拓海は少し怒っているのか、眉をつり上げた。

「……俺が健康体ならそれでも構わないさ。だけど……だけど俺はお前らより確実に早くあっちの世界に行く。そうなった後も、二人にはこんなふうにいがみ合って欲しくない」

「拓海……」

「……これは言うかどうか悩んでたことだけど、ちょうどいい機会だから言うよ」
 拓海はそう前置きすると、あたしたちを順に見ながら言う。

「智篤。どうか麗華を幸せにしてやってくれ。そして麗華。こんな智篤のことをよろしく頼む」

「はぁっ?!」
「ええっ?!」

 予想もしない発言にあたしたちは同時に声を上げ、互いの顔を見合った。そしてそれぞれに想いをぶつける。

「言っていいことと悪いことがあるだろう! いくらリーダー命令でもそれだけは断固拒否する!」

「あたしだって受け容れないわ。あたしたちがうまく付き合っていくためにはどうしても拓海が必要なんだもの。今すぐにでもいなくなるような、不吉なことは言わないで!」

「いや、だけど……」

「そうならないように二人で曲を作るんだろうが。なあ、レイちゃん?」

「ええ、そうよ。こうなったら善は急げ、よ。早速、話を擦り合わせましょう」
 智くんが頷くのを確認したあたしは、すぐにギターと筆記用具を用意した。

「ははっ……。やっぱり仲いいじゃん、お前ら。二人だけでもきっとうまくやれるよ」

「黙れ。そう言ったことを必ず後悔させてやる」
 言い放った智くんの表情がいつになく怖かった。



 あたしたちは狭い部屋から出て例の公園で作詞作曲することになった。木の下にある長いベンチに二人して腰掛ける。しかしその距離は、今の話の後だからか少し遠い。そしてしばし沈黙の時が流れた。

「……ちっ、思い出しただけで腹が立つ」
 少し経った後で、智くんが地団駄を踏みながら言った。
「こうなったら、二度とあんな発言が飛び出さないような健康体にしてやる。僕らより長生きさせてやる」

 その発言から、智くんは心底拓海が好きなのだと知る。早速何かを書き留め始めた智くんに負けまいと、あたしも彼の隣で拓海を想いながらペンを走らせる。

 寒さに手がかじかんできた頃、智くんが立ち上がってあたしの前に回った。顔を上げると手に持った紙を差し出された。

「これは僕の考えと言うより、願望だと思って欲しい。三十年間、拓海にかけ続けてきた呪いを解くための、祈りの言葉と言い換えてもいい。とにかく、強い想いを込めた」

「……ここで読んでもいい?」

「そのために手渡している」

「じゃあ、読ませてもらうわね」
 受け取ると、彼はさっきと同じ場所に腕を組んで座り直した。彼が目をつぶってうつむいたのを見てから受け取った紙に目を落とす。

 何度も書き直された言葉。その中の、楕円で囲んである部分をなぞっていく。

 目で追っているうちに心がじんわり温かくなる。そして最後の一文を読んで目頭が熱くなる。

 ――永遠に君の命、続くように願う。

 思わず彼の方を見た。息を吸い、言葉を発しようとしたが遮られる。

「これは……願掛けだ。歌に乗せて発した言葉は現実になると信じて……。僕に出来ることはもうそれしかない。だから……」

「この一文は必ず使うわ。あたしもそう願っているから」

「いまこそ信じよう、歌の力を」

「智くん……」

「……ふっ。まさか僕がそんなことを言う日が来るとは。君もきっとそう思っているだろうね。だけど……だけど僕だって人生のほとんどを、歌うこととギター演奏に費やしてきたんだ。それが意味のあることだったと証明するためにも、持てる力のすべてを使ってこの曲を完成させるつもりだ」

「ええ。あたしたちならきっと拓海を救えるわ。いいえ、必ず救う」
 言い聞かせるように言ったあたしは自分の想いを歌詞に込めるため、続きを考え始めた。


26.<拓海>

 部屋に残された俺は結局、一人で時間を潰すことに飽きて外へ出た。と言うより、出て行ってしまった二人のことが氣になってじっとしていられなかった。

 二人のことだから遠くまでは行っていないだろうと予想したが、案の定すぐそばの公園にいた。遠くからだと仲良く一つのベンチに腰掛けているように見えたが、近づいたらそっぽを向いて両端に座っていると分かって二人らしいな、と微笑む。

 余計なことを言ったかな、と思う一方で、これでよかったのだとも思う。どっちにしろ俺のひと言が、二人が一緒に過ごす時間を作ったことに変わりはない。

 二人が俺のために曲を作り、歌うその日が来たときどんな反応をすればいいのか考えてみる。いや、反応はどうとにでも出来る。その想いに応えられるかどうか。そっちの方が問題だろう。

 生きて欲しい……。そう願ってもらえるのは有り難いことに違いない。俺自身、病氣を克服してこの先もミュージシャンとして生き続けることが出来たならきっと楽しいだろうなとは思う。だけど正直、想いに身体がついてこない。少なくとも喉は智篤の言うとおり限界を迎えている。

(声が出せる今のうちにやるべき事を終えなければ……。)

 二人が一緒に過ごしていることを知って安心した俺は、今朝公園で書き上げたばかりの曲の録音作業をしようと思い立ち、行きつけの音楽スタジオに足を向けた。



27.<智篤>

 拓海のふざけた頼み事を聞く氣は微塵もなかった。いよいよその時が迫っているのだという切迫感に胸が苦しくなるだけだった。

(何が幸せにしてやってくれ、だ。レイちゃんのことを想っているなら自分で幸せにしろよ……。)

 急に老け込んだように見えた拓海の顔が脳裏に浮かんだ。おそらく彼は相当弱氣になっている。このままでは間に合わなくなる、という思いが募る。急かされるのは好きじゃないが、今回ばかりは僕も焦っている。

「あたしも歌詞がかけたわ」
 焦燥感を抱いていると、今度はレイちゃんが紙をよこした。半ば奪うように受け取り歌詞をなぞる。

「……君も大袈裟だな。どこまでも君と生きれるように、だなんて」

「大袈裟でも何でも、拓海が元氣になるならいいじゃない。智くんの真似をして、あたしも願掛けするつもりで書いたわ」

「……ふっ。この歌を聴いた拓海が永遠の命を手に入れたら面白いな」

「そうね。でも、そのくらいの想いは込めたい」

「うん。……よし、互いに歌詞がかけたところで早速、合作に取りかかろう。僕らに残された時間はあまりないようだから」

「ええ……」
 返事をした彼女の目からぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。直後、表情が崩れる。僕はとっさに彼女の肩を抱いた。

「……泣いている時間はないぞ。一秒でも早くこの歌をあいつに聴かせてやろうぜ」

「……そうだよね。泣いたりしてごめん。慰めてくれてありがとう。やっぱり智くんは優しい」

「……女の涙が苦手なだけだ。さぁ、涙を拭いて。すぐに再開しよう」
 僕は彼女を押しのけるように離れ、一度背を向けて立ち上がった。

 ――泣きたいなら一緒に泣けばいいのに。
 空を仰いだとき、心の声が余計なことを言った。

(ふん……。女の前で感情の動くまま泣くのはろくでもない野郎だけだ。)

 ――強がるか。本当は今にも泣きたいくせに。拓海が死んだら君は……。

(失せろ……! 作詞の邪魔をするな……!)
 声を振り払うように足もとの砂を蹴飛ばす。

「智くん……?」
 不思議がるレイちゃんの声に振り返る。涙を拭ったばかりのその美しい顔を見た途端、再び拓海の言葉がよみがえった。

(本氣で言ってるのかよ。君が愛してるはずのレイちゃんを僕に託すって……。)
 もう一度彼女と真向かう。そのまま何も言わずにいると、立ち上がった彼女の腕が背に回った。

「……こういうことは拓海にしてやれ。あいつ、ずいぶん弱ってきてるから」

「ええ……。だけど智くんも家族だから、苦しんでいるなら癒やしてあげたい」

「僕のことは構うな。あいつを……拓海を第一に救ってくれ」

「……うん。救うよ、絶対に。……あ、曲が浮かんだ」
 彼女はそう言うと慌てて紙にコードを書き込み、直後にギターを奏で始めた。

 そのメロディーは優しくて、拓海のための曲のはずだが聞いている僕の心までもが癒やされていくようだった。

 何度か同じメロディーが奏でられ、耳に残ったその音を手元の歌詞に照らして歌う。氣に入るとレイちゃんは「それ、採用ね」と言ってその都度弾く手を止め紙に書き留めた。

「ああ、僕もメロディーが浮かんだ。この部分は僕に任せてくれないか……」
 曲のラストの部分は僕の渾身の想いを込めたかった。弾きながら歌い上げるとレイちゃんは何度も頷いた。

「……ねぇ。この歌が出来上がったら智くんが拓海に歌ってあげて。絶対にそれがいいわ」

「え……? 僕が……? いや……歌は君の担当だろう?」

「今の歌いっぷりを聞いたら感動しちゃって……。一緒に作ろうって提案してくれたのは智くんだし、ぜひそうして欲しいな。拓海のためにも」

「だけど……」

「拓海の命が永遠に続くように、願いを込めるんでしょう? 智くんが歌う隣であたしはギターを弾くから。ね?」

 提案しておいてなんだが正直、自分で歌うことは想定していなかった。しかしこれが拓海を生かすための「祈りの歌」であるならば、呪いをかけた人間として責任を持って歌うべきなのでは、と思わなくもない。

「……まぁ、考えておこう」

 とはいえ、僕が歌うかどうかは曲が完成してから決めたかったから返事は保留にした。ウイング時代にはよく、曲の雰囲氣によって歌い手を変えていた。拓海がメインで歌う曲が多かったが、僕が一人で歌う曲もいくつかあった。

「智くん、いい声してるから絶対アリだと思うんだけどなぁ……」
 即答しなかったからか少々不満のようだったが、レイちゃんは「もうちょっと頑張ろう」と自分に氣合いを入れるように言い、再びギターを弾き始めた。



 曲の大枠が出来上がる頃にはずいぶん日が傾いていた。こんなにも一氣に作詞作曲したことはいまだかつてない。拓海の余命を思えば当然のことではあるが、さすがに疲労感は拭えなかった。

「部屋に戻って少し休憩しよう。小腹も減ったし」

「……え、もうこんな時間? そうね、一旦休みましょう」
 時計を見て驚いたレイちゃんは大きく伸びをして立ち上がると、すぐに拓海の部屋に足を向けた。



 部屋はもぬけのからだった。ギターがないところを見ると拓海もどこかに弾きに行っているのだろうと想像するが、今朝も起きたらいなかったし、少し不安になる。

「レイちゃん、拓海の居場所に心当たりある?」

「いいえ、残念ながら……。心配なら電話してみようか?」

「いや……。まぁ、じきに戻るだろう」
 戻る、と口にした瞬間、今朝の拓海の言葉がよみがえった。

(そういえばあいつ、最後の曲を作って声を残すつもりだと言っていたな……。)

 もしかしたら拓海は今朝ほど完成した曲を形にしているのかもしれない。「遺言」のつもりで……。

(ちっ……。)
 それが事実ではなかったとしても、そう匂わせた拓海が恨めしかった。

(んなもん残したって聞くものか……! 新曲が出来たなら生の声で歌えよ……!)

 苛立ちが頂点に達した僕は「やっぱり電話する」と告げて電話をかけた。なかなか出ないので更にイライラしたが、辛抱強く待つ。コール音を十数回聞いたところでようやく繋がる。

『ったく、いま忙しい……』

「死ぬ準備を着々と進めてんじゃねえよ! 君を生かそうと必死に曲作りしてるこっちの氣持ちも考えろ! さっさと戻ってこい!」

『…………』
 拓海は黙り込んだ。息巻く僕の隣でレイちゃんが心配そうな眼差しを向ける。熱くなって電話を握りしめる僕とは対照的に、拓海は冷え切った声でぽつりと言う。

『お前の氣持ちはありがたく受け取るよ。でも……人は死ぬよ。いつか必ず。そのために何かを残そうと思うのは自然なことじゃねえのか』

 覇氣のない声を聞いた僕は悔しさのあまり歯を食いしばった。

「……君じゃなくて僕が病氣になればよかったのにな。悔しい。本当に悔しい」

『智篤……』

「……君のための歌はもうすぐ完成する。聞かせてやるから三十分以内に戻ってこい、いいな?」

『三十分……?! 戻れっかな……』

「戻れ! これは命令だ!」

『……わかったよぉ。すぐに帰る支度をして電車に飛び乗るから』
 電話口で片付けを始める音が聞こえた。

「……最寄り駅で待つ。三十分後に会おう」
 そう告げて電話を切る。ため息をつくと、レイちゃんに見つめられる。

「……拓海、どこにいるの?」

「たぶん音楽スタジオ。そこで最後の歌声を録音していたんだろう」

「最後……。それで智くんはあんなに怒って……」

「ったく、ふざけてるだろう? ああ、思い出すだけで腹が立つ」
 僕は電話をポケットに突っ込み、再びギターを背負った。

「行こう、レイちゃん。老け込んじまったあいつを若返らせてやろうぜ、僕らの歌で」

「ええ……」
 返事をした彼女はうつむきながら僕の手を取った。その手が少し震えていたので強く握ってやる。

「弱氣になるな。悲観するな。僕らがそんなんでどうする? 氣を強く保ってあいつを迎えなきゃ。それが出来ないならここに残ってくれ」

 今の僕からはそんな言葉しか出てこなかった。きつい言い方だったかもしれないと思った矢先、彼女がキッと僕を睨み、痛いくらいの力で手を握り返してきた。

「ここに残るなんてあり得ない。行くわよ、あたしだって歌うんだから!」
 レイちゃんは吐き捨てるように言い、自身のギターを背負った。

「そう、その意氣だ」
 やる氣を取り戻した彼女に満足する。
「行こう、あいつのところへ」
 再び彼女の手を取る。その手はもう震えていなかった。


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※見出し画像は、生成AIで作成したものを修正して使用しています。

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