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【読書まとめ&普通を改めて考える②】 ~「普通という異常 ―健常発達という病―」を読んで~

表題の「普通という異常 ―健常発達という病―」(兼本浩祐著・講談社現代新書)は、タイトルを見ただけでびびっと来た本。先日、ようやく図書館で借りることが出来たので、早速シェアしたいと思います。



○健常発達の人も見方によっては「病」と言える

本書はまず、ADHD(多動性障害)の女の子Aちゃんと健常発達の女の子Bちゃん(現在は定型発達とよぶ)の事例から、普通とされる人の行動も行きすぎれば病的になる、という切り口でスタートします。

本書を書いた兼本氏は精神病理学を専門としている方です。兼本氏は、病と見なされるADHDやASDも生きづらさを抱えているが、実は社会に適応しすぎた「普通の人」も生きづらさに直面していることを指摘しています。


○「普通の人」にとっては、意地悪というコミュニケーション=生きること

これはなかなか衝撃的な一説でした。別の表現では「対人希求性(人を求める気持ち)」があればこその行動が意地悪コミュニケーション(本書ではこれを「いじコミ」と表現)であり、「相手の関心を独占したい気持ち」の表れなのだと言います。これを平成・令和的に言い直すと「いいね!」をたくさんもらうことを重視したコミュニケーションがそれに当たると著者は述べ、「人間であることの病」と表しています。

「いいね!」をもう少し見てみると、「いいね!」を送り合うことは一見平和的に見えるけれども実は競合的(いかに同じような投稿をした人より「いいね!」をもらうか)なのだと言います。仲良しの子から「いいね!」が欲しいあまり、無理やりそれを要求する行動を取ればそれは「病的」と言わざるを得ない。著者は、そのような人を問題視しているのです。

これは「自分が社会のスタンダードから外れていないかを常に気にする」と言った、社会的関心へののめり込みが原因だと言います。過剰な対人希求性を持つと「私は○○という特徴をもつ人間に見られなければならない」と感じ、それが脅かされることを恐れるようにさえなると言います。「○○という特徴」を失ってしまったら私ではなくなってしまう。つまり彼らは、「いいね!」がもらえなければ自分の存在がなくなってしまうと思ってしまうのです。

しかも昨今はこの「いいね!」も流動的なので、世間と自分の「いいね!」を一致させ続けるためには常に流行を追わなければならず、結果生きるのに疲れる人が増えていると著者は述べています。

○いろうたの考え


「詩は、統合されない感覚に二割の統合された感覚が拮抗するような状態のときに生まれる」

この一文は、歌人・海老原愛さんの言葉だそうで、本書の中で一番ぐっときたものです。「いいね!」をもらって生きている実感を得た人を完成形とするならば、詩を書くような人はバグった人。だが、それがなければ詩など書けないのだろう、と著者は記しています。

独特の感性を持っていなければ、外からの刺激に対して人と違う感じ方は出来ないし、それを言葉にすることも出来ない――。

このような一文を読んで、幼い頃に詩を書くのが得意だったことを思い出しました。それこそ子どもの頃なんて無限にも思える時間があったし、空を眺めていることも多かったので、美しい夕焼け空を見ては詩を綴ったものです。

しかし自由な想像力、承認されずとも満足感が得られたあのころの感覚は、残念ながら今のわたしは忘れかけています。それは世の中が承認し合うことを求めていて、それに沿わないものは見向きもされないことへの寂しさからかもしれないし、便利な世の中になって純粋に感動する機会が減ったからかもしれません。あるいは私が、長く「普通の人」になろうと努力してきたために、持っていた感覚を鈍らせてしまったせいかもしれません。

私のようなズレた感覚の人と違い、社会に馴染める人は協調性もあり、自ら喜んで人と会うことが出来る能力がある。そんな普通の人は世に言う「健康な人」なのだと思っていただけに、人を求める気持ちも行きすぎると承認疲れを起こしたり、場合によっては人を傷つけたりする恐れがあることを知って驚きました。

私は一人で読書に耽ったり、群れたりしなくても平気な人間ですが、定型発達と呼ばれる普通の人は、「人の目や反応」を求めずにはいられない人種であり、そういう人が大半を占めているからこのような社会構造なのだと得心したのでした。

なるほど、そう言う世の中において私のような人間は扱いにくいと思われても仕方がないでしょう。しかし、彼らがそうしなければ自分の存在意味を見いだせなくて意地悪したり「いいね!」の数を競い合っているように、私は私で、今のままのズレた感覚を持った物書きでいたい。それこそが私の存在を確かなものにしてくれると信じているから。

以前投稿した「普通を改めて考える」では、一般化された普通を押しつけないでほしいと言ったメッセージを込めてしまいましたが、今回の読書で、普通の人には普通の人なりの理由があってそうするのだということが分かり、非常に勉強になりました。今後、もう少し深読みして理解を深めたいと思っています。


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いろうた@「今、ここを生きる」を描く小説家
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