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【連載小説】第二部 #14「あっとほーむ ~幸せに続く道~」夢
前回のお話(#13)はこちら
前回のお話:
翼とめぐの想いに応えるかのように回復を見せた祖父。しかし自由が利かなくなった姿を見て、翼はめぐとの結婚を前倒しすることを決める。二人は、宮司をしているめぐの友人の母に、鈴宮家で結婚式を執り行ってもらうよう頼んだ。宮司は鈴宮家に神を呼び、二人の結婚を祝福してくれた。
その晩、悠斗と祖父母の後押しもあり、翼はめぐとついに肌を合わせたのだった。
エピローグ
懐かしい気配を感じて目が覚める。やはりそこには在りし日の娘の姿があった。
起き上がろうとする、が身体は動かない。仕方なく意識だけをそちらに向けて語りかける。
(お帰り、愛菜)
――ただいま、おとーさん。やっと、帰って来れそうだよ。だから、最後の挨拶に来たの。
(そうか。いよいよ、なんだな……)
愛菜がはっきり言わなくても、娘の言わんとしていることが手に取るように分かる。おれはもうすぐ、愛菜の魂と出会えるのだ、と……。
――だけど……。
と愛菜は続ける。
――愛菜が生まれると言うことは、他の誰かが命を失うと言うこと。この世の命はそういうバランスでできてるから……。
(誰かが……死ぬのか……)
――誰か……。はっきり言えば身近にいる、大事な人ってことなんだけど。
(大切な人……)
すぐに思い浮かんだのは翼とめぐだ。
(待て、ふたりの命だけは奪わないでくれ……! ふたりのどちらかでも失ってしまったらおれは……。)
――大丈夫。おとーさんから一番大事な人たちを奪ったりはしないよ。
(……それじゃあ一体?)
魂のままの娘はそれには答えずにすっと消えてしまった。
◇◇◇
突然、目の前に光を感じた。オレンジ色の光は球状になったかと思うと、わたしの目の前で明滅を繰り返す。どうやらそれが光の主の話し方らしい。
――おとーさんの願いを叶えるためにやってきたの。
姿なき光はそう語った。おとーさんって、誰のこと……? 疑問に思ったのもつかの間、光はわたしの身体をぐるりと一周する。
――私はあなたの赤ちゃん候補のひとり。あなたが会いたいと望めば、私はすぐにでもあなたのところへ来るわ。あなたの大切な人の命と引き換えにはなるけれど。
(それって、大切な人の命と引き換えに赤ちゃんを授かると言うこと……?)
声には出さなかったのに、わたしの考えは「光」に伝わってしまったようだ。
――そう。これは定め。おとーさんがあなたを愛した時からの。そう。おとーさんがあなたと結婚する道を選んでも選ばなくても、こうなることははじめから決まっていたのよ。
それを聞いた瞬間、光の正体も、おとーさんが誰なのかも分かってしまった。
(あなたは……)
名前を言おうとした瞬間に目が覚めた。辺りはまだ暗かったが、飛び起きた拍子に隣で寝ていた翼くんを起こしてしまう。
「……どうしたの? 怖い夢でも見たの?」
「……うん、ちょっとね」
「大丈夫だよ。俺がついてるから」
そう言って翼くんが起き上がり、抱いてくれる。
「翼くん……。もし、誰かの命と引き換えに新しい命を授かるとしたら、どう思う?」
「…………」
彼は黙り込んだ。そしてより強くわたしを抱きしめる。
「それが夢で見た内容なら、そんなのは忘れた方がいい。所詮、夢は夢だ。俺は誰かの命と引き換えてまで子どもを望んだりはしないよ」
「うん、そうだよね。それを聞いて安心だよ」
「めぐちゃんはまだ十八歳の高校生だ。俺くらいの年齢まではうんと遊んで、たくさん世の中のことを知るべきだと俺は思うよ。大丈夫、俺は待つよ。めぐちゃんが赤ちゃんを望むその時まで」
「ありがとう……」
「さぁ、まだ夜明け前だ。もう一眠りしよう……」
翼くんは大あくびをして、わたしと一緒にベッドに横たわった。
(そうだよね……。今のはただの夢。気にすること、ないよね……?)
自分に言い聞かせて眠りにつく。
しかし翌朝、目が覚めてこの話を悠くんにしたとき、ただの夢で片付けることができなくなった。彼もまた同じような夢を見たと言ったからだ。
――第二部 完――
第三部へ続く
投稿まで、しばらくお待ちください🥰
<読者の皆様へ・お礼>
第二部を最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
第一部と違い、こちらはそれぞれの成長を軸に描いてきましたがいかがだったでしょうか。下地が整ったので、第三部でようやく「あっとほーむ」な物語をお届けできると思っております!
引き続き、いろうたの「あっとほーむ」第三部をよろしくお願いします。
<お知らせ>
第一部・第二部を通しで読んだときの整合性を図るため、現在大幅な改変を行っております。まとまった際には投稿する予定ですので、そちらも合わせてご覧いただければ幸いです。
一気読み「あっとほーむ~幸せに続く道~」第一部・第二部投稿しました!挿絵付きとなっております! ぜひ一読ください🥰
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