7月1週:『言えない秘密』

主人公は京本大我演じるピアノ一筋の音大生。そこそこ天才で留学までしていたが、厳しすぎる指導とレベルの差に挫折。心折れて帰国したところ、旧校舎で不思議な雰囲気の女の子・古川琴音と出会い恋に落ちる。しかし古川琴音にはある”言えない秘密”があったーーという話。

主題歌がSixTONESだったのと、京本大我目当てで観に行った。ヒロインに古川琴音をキャスティングしている時点でほぼネタバレみたいなもんで、「あ〜、〇〇オチね」と期待せずに見たわりには、トリックは意外としっかりしていたなという印象。原作は海外にあり、いろんな国でリメイクされている有名な話らしい。たしかに、どんな演者や監督が作っても100点はないけど70点は取れるね、という感じの内容だった。

話の濃度とどこまでを語るのかというバランスをみたときに、MVくらいの表現が一番感動するかもなというのが一番の感想。この手のシンプル感動系のストーリーは、ある程度受け取り手が想像する余白、ミステリアス感を残したほうが楽しめそう。だから、映画も決して悪くはなかったけれども、正直少し語りすぎてくどいかな、感動が薄れるなという感じだった。

本当にシンプルな話をひねりのない王道な演出でやっていたので、一歩間違えると味気ない感じにも転じる危険性があったと思う。ただ、そこに色をつけ魅力を押し上げる役割を、オリジナル劇中歌が果たしていた。

ストーリーのなかでも一番大事なシーンに『Secret』というピアノソロの曲が出てくるんだけど、この曲のニュアンスがめちゃくちゃ良い。最高。

イントロは昔のオルゴールから流れてきそうな懐かしい、古い、ともすればちょっと不思議怖い系のカタコト感があるんだけど、左手が加わると愛情深く、誰かを思うようなクラシックの美しさがあるメロディーになる。最後は急ぐように、まくたしてるようにテンポが速くなっていって、思いを成し遂げてプツっと切れる。

これのメロディーがね、本当にこのストーリー全体の触感をよく表現していてね。京本大我目線のストーリー進行では最後のほうまで分からない、古川琴音が抱えていた心情、『言えない秘密』をね、繊細な音で表現しているのですよ。

何度も言うけどストーリー自体はとてもシンプルなんで、旧校舎×劇中歌×古川琴音の味付けが非常に重要だった。

そして古典的ともいえる、こういうシンプルな話は京本大我の顔と存在感が映えるね。きょもは悪くないんだけど、きょもの顔の綺麗さが現実的じゃなさすぎて、リアル系現代劇に出ると不思議な感じになるときがある。

ちょっと現実離れしてるくらいのキレイな作品が、彼の良さを一番引き出しますね。

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