若者の日常小説(1)

新型コロナウイルスに関係する内容の可能性は一切ないです😂

殺人の犯行動機がアニメだと決めつける大人、アホだな、と思うけど今この瞬間超能力者によってクラスメイト全員の首が飛んで、あ、もちろん僕は生き残ってるんだけど、そんなことが起きたらどうしよっかな♪ とかいう僕の妄想にもアニメやら漫画の影響が当然あるだろうな、とも思う。
若い頃漫画を読むことが趣味だった父の蔵書が家にはたくさんあって、僕は僕が生まれる前に上梓されたそれらを読んで育った。
お気に入りは男子高校生が不死身の美少女との出会いを切欠に戦いに巻き込まれるアクションもので、戦いの最中で主人公は手足を吹き飛ばされたり腹をかっさばかれてはらわたを零したりするんだけど不死身の美少女の力で蘇生してついでに強くなって何度も何度も敵にぶつかっていく。敵は敵でそんながむしゃらな主人公に顔面を擦り潰されたり裂けるチーズみたいにゆっくり身体を裂かれたりして、こっちは美少女に蘇生されることもないからそのまま死ぬ。ラスボスは主人公が一時は兄と慕った男で、イケメンだったんだけど色々あってズルズルのグチャグチャのビキビキのパンパンの惨めな化け物の姿になってしまって、その肉感の生々しさ、描き込みが圧巻で、小1のときに模写をしてたら母親に見られてすごい剣幕でめちゃめちゃ怒られた。勝手に大人の本を読むなってさ。大人の本って言っても少年誌で連載してたやつだったんだけど、まだろくに字も読めないくせにグロ描写には一丁前に興味を示す小1っていうのは大人からしたら危うく不気味に見えたのかもしれなかった。動機不明の殺人犯みたいに。
7月から通常登校が始まって僕らは3ヶ月遅れの新入生になったわけだけど、そうこうしてるとすぐに夏休みが来ちゃって多分僕には友達ができない。急いで作ろうとも思えない。前と横と後ろの席の人は男か女かくらいの差しかなくて、いや友達になるなら女はちょっと想像できないんだけど、何にせよ声をかけたいと思えるほど特別な人はいなくてそして同じように僕も特別だとは思われてない。誰からも。
コロナコロナってみんなピリピリしてるけど、僕の周りではまだひとりも感染者が出ていない。そもそもこの町からはまだ3人しか出てなくて、それもみんなお年寄りなんだから、僕の周りなんかにはいなくて当然な気がする。世界中がピリピリしてるし手も消毒のしすぎでピリピリしてるんだけどなんだかんだみんなピンピンしてて何者かの超能力なんてものよりもっとリアルにクラスメイト大量死の可能性があるはずなのに僕にはそんな気配は全く感じられない。2020年って多分来年度の歴史の教科書には太字で書かれる年になると思うけど、それを目の当たりにしてるはずの僕には太字で書かれるような大ショック事件はなにも起きないのだ。
だから暇つぶしに頭の中でクラスメイトを殺し続けてるうちに本当に友達ができないまま夏休みになって、約2週間しかない夏休みの中に目一杯課題をブチ込まれたけど案外要領がいい僕は10日ほどでそれを片付けて、残りの数日さあどうしようと思ったところですることがない。ぼんやり動画サイトを眺めるか無人島でどうぶつたちとスローライフを送るかなけなしの小遣いを投入してドブった結果のクソデッキでだらだらソシャゲを周回するか父親の蔵書を1から読み直すかくらいしかすることがない。今日の時点で国内でのコロナウイルス感染者は約6万人、そのうち約5万人が既に退院、療養解除されていて、彼らは生き証人だ。歴史の教科書の太字の部分を当事者として語ることができる。じゃあ僕は?

つづく

#2000字のドラマ

(全体で約8000字になってしまった)

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