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【読書】エラスティックリーダーシップ〜自己組織化チームの育て方〜

はじめに

社内でリードエンジニア向けの書籍として紹介されていた「エラスティックリーダーシップ 自己組織化チームの育て方」という本を読みました。
タイトルの「エラスティック(伸び縮みする)」が示すように、チームの状態に合わせてリーダーシップのスタイルを変えながらチームの成長と自己組織化を促進する方法について書かれています。
現在は絶版となっており入手が難しいようですが、自分は近所の図書館で借りて読むことができました。

チームリーダーマニフェスト

まず最初に本書ではリーダーとして何を目指すかをマニフェストとして掲げており、自己組織化のために以下のようなことを追求するとしています。リーダーが実施すべきことが詰まっているので、常に意識しておきたいところです。

・全員が安全地帯にとどまるのではなく、自分自身とチームがより良くなるために挑戦していく。
・特定のリーダーシップスタイルを押し付けるのではなく、必要に応じてリーダーシップスタイルを変化させる。
・マシンとばかり向き合うのではなく、人とのやり取りに参加する。

(本文に最新版マニフェストとしてURLが記載されていましたがアクセスできませんでした。おそらくこのへんですかね)

3つのフェーズ

チームの状態を3つのフェーズに分けており、それぞれのフェーズでリーダーがどのように行動すべきか示しています。

サバイバルフェーズ

学習するのに十分な時間がない状態です。
抜け出すには学習するためのゆとり時間を確保しないといけませんが、それにはチームメンバーやステークホルダーとの調整が必要なので、ここは指揮統制型のリーダーシップで切り抜けます。
「船が沈みそうなときは船長は会議を開かず指示を出す」という表現がとてもわかりやすいと思いました。みんなで話し合ってるとなかなか進めないので、このフェーズではリーダーが意思決定してどんどんひっぱっていきます。

サバイバルフェーズのやっかいなところは、すべきことが明確な作業で忙しくなり、終わったあと達成感があるところです。成長していないにも関わらず何かを成し遂たり感謝された気になって居心地がいいと感じ、抜け出すのが難しい場合があります。これは自分にも思い当たるフシがたくさんあるので、ここで停滞してしまわないよう注意したいと思いました。

学習フェーズ

チームがゆとり時間を持ち、それを新しいスキルの訓練にあてている状態です。
ここで言う学習とは、今まで持っていたスキルの延長ではなく、習得に困難を伴う未知の領域へのチャレンジを指します。ストレスを感じるレベルじゃないと学習とは呼べないそう。
ここではコーチ・メンターとしてのリーダシップを発揮し、メンバーを一旦生産性がガタ落ちするような谷底に飛び込ませてあげましょう。そこから這い上がることで大きく飛躍することができます。

また、ここではコミットメント言語を意識して使っていきます。
コミットメント言語とは、言質を与える言い方、つまり言い逃れができない、証拠となる言い方のことです。
例えば、
 「今週中にはできると思います。」
だと、もしできなくても言い訳ができてしまいます。ずるい。
コミットメント言語を使うと、
 「今週金曜日の18:00までに終わらせます。」
のように具体的に達成することを約束することができます。もしできなかったら何が問題だったかを振り返ればいいのです。
とはいえ、原因不明なバグの修正など見通しが立てづらい作業もあると思います。その場合は
 「今週は毎日5時間はこのバグの調査に時間を使います。」
のように言えばやることを制御可能な状態にすることができます。
特に自信がないときはついつい曖昧な言い方になりがちですが、工夫次第で明確にコミットできる内容に置き換えられることになるほどと思いました。

そして、学習フェーズでメンバーを成長させるために、なにか課題が出たときは

あなたはそれに関して何をするつもりですか?

と問いかけ、メンバーが自身で解決する機会をあげます。ここで先ほどのコミットメント言語を活用し、いつなにをするかが明確なコミュニケーションをとるようにします。

自己組織化フェーズ

メンバーが自力で課題解決する力がついてきたら、自己組織化を促進していきます。
ここまできたらリーダーはファシリテートする程度にとどまり、意思決定はどんどんチームメンバーに任せていきましょう。
リーダーはミーティングでは課題ややることを明確にしていくことを意識して進めます。課題に対してどう対処するかは学習フェーズ同様にコミットメント言語が有効です。
どんどんメンバー自身で課題解決する経験を積んで、リーダーなしでもチームが回ることを目指します。
プロジェクトの状況によって他のフェーズに戻ったりするので、リーダーシップスタイルを変えながら再度自己組織化フェーズになるようにします。

おわりに

リーダーと聞くと指揮統制をするイメージが強かったのですが、本書によってリーダーはチームの状態をよく観察してどう関わるのが適切かを常に考え続けることが重要だとわかりました。
また、それぞれのメンバーに自分ごととして課題解決に取り組んでもらうためにコミットメント言語を引き出すことが有効そうだとわかったので、ぜひ活用していきたいと思います。 早速今日から使っていきます。

本書の内容は他の人にまかせられるようにするという意味で、新メンバーの育成や業務の引き継ぎ、子育てなんかにも応用できそうに思いました。

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