【読書】冒険の書〜AI時代のアンラーニング〜
なぜ学校にいかないといけないのか?なぜ勉強しないといけないのか?今のままの教育方法で良いのか?疑問に思ったことがある方は少なくないはずです。
本書ではなぜ現代の学校教育が今のかたちになっているのかを歴史的な経緯から紐解いていき、来たるAI時代にどうすべきかを考えるきっかけを与えてくれています。
タイトルにアンラーニングとあるように、世間では常識とされていることが本当に正しいのか改めて考えさせられる内容で、読み進めるほどに体のなかから毒素が抜けていくというか、デトックスされていくような感覚になりました。
学校はなぜつまらない?
本書を読むと、なぜ学校がつまらない言われてもしょうがない場所になってしまったのか、学校のルーツとなった思想や時代背景から詳しく考察されています。
- 子どもと大人を区別するようになった
- 遊びと学びを区別するようになった
- 監獄を参考にした管理システム
- 効率よく教えるための学年やクラス分け
- 試験による評価
当時はそれぞれ画期的だったもののはずですが、今はこれらのサービスとしての仕組みや、子どもたちに公平に教育を受けさせないといけないという義務感が悪い意味で行き渡っており、学校で試験で高評価を得る能力を身につけることこそが教育だとして、子どたちは自らの意志と関係なくなんのためにやるのかわからない勉強を強いられる状態になっています。しかも成績が悪ければ努力が足りないと言われ、学校にいかなければ「不登校」として義務を果たせてないような扱いを受ける、これはつまらなくても当然のように思います。これが当たり前として受け入れられてるってやばくないですか?
大人と子どもは区別するもの?
今では子どもは大人が守るものという感覚が浸透していると思いますが、実は昔はそうではなかったそうです。
18世紀に子どもの概念が生まれ、子どもを社会から守るために切り離して教育する場所として学校の仕組みが整備されました。一見、子ども向けの環境が用意されいて良い気もしますが、裏を返せば大人といっしょに学ぶ機会を奪っている、自由に学ぶことを制限してしまっているとも言えます。
振り返ってみれば、自分も子供に対して小学n年生はこれくらいできてほしいみたいな固定観念を押し付けてしまっている部分が少なからずあった気がします。もっと子どもの好奇心を尊重にして好きなことを学べるよう、自分の常識を捨てる勇気も必要なのかもしれません。
近年はインターネットで年齢関係なく誰でも最新の情報にアクセス・発信できますし、今後はAIによって知識や経験の差が少なくなっていくでしょう。これからは大人か子どもかは関係なく、みんな混じり合って学びたいことを自由に楽しく学べる環境が重要になっていくのではないでしょうか。
能力信仰よりアプリシエーション
そもそも学校で勉強していることってなんでしょう?将来役に立つことを学んでいる?これからの時代に何が必要かなんてわからないのに?
近代の産業の機械化に伴って人間も機械のように能力で評価されるようになり、学校でも試験の成績が重視されるようになりました。しかし、人間の場合はこの「能力」というのは管理する側の都合でできたフィクションでしかなく、能力があればうまくいくとは言えないはずです。
本書では能力の評価に変わるものとして、「アプリシエーション」という概念を紹介しています。これは相手の良さを認めて褒めてあげることで、学ぶ人を励まし、互いに尊敬し合おうというものです。将来何が役に立つかなんてわからないですし、無駄なものと思っても見方を変えれば有用になることもあります。一方的に「きっとこれが役に立つはずだからやっとけ!知らんけど。」と押し付けるよりも、相手がやりたいことを認めてしっかりと良いところを観察し、それぞれの成長を最大限高め合うことができるとても良い考え方だと思いました。
GIVE & GIVEN
本書の中で特に私の好きな言葉です。
資本主義の常識であるGIVE & GIVENは公平な等価交換のように見えて、実は持たざるものには何も与えないという冷たい側面もあります。社会の中で自分を商品として価値を提供しなければ生活していけず、自由と引き換えに自己責任を強制してしまっています。
対して、GIVE & GIVENは交換ではなく互いに与え合うという関係です。アプリシエーションで満たされた社会を実現するには、互いに無償で称賛や尊敬を与え合うことが大切で、見返りなしに他者と支え合うこの態度が必要なのではないかと思います。
本書では紹介されていた次の文のように、受けとる相手がいることで生きる意味が与えられるのであれば、駆け引きなくただ与え続けるだけのやさしい世界の実現も不可能ではないのではないでしょうか。
実は人間は自分が満たされると他者に分け与えたくなる本性を持っているそうです。本書で紹介されていた次の引用のように、確かに生まれたばかりの赤ん坊は必ず与えられる状態から始まるので、なるほどなと思いました。
親の言うことは聞くな
本書で登場するなかなか刺激的なフレーズですが、まさにそうだなと思いました。こちらの記事にもあるように親が20年以上も前の自分の経験や価値観を持ち出したところで、子どもが生きる時代にそのまま通用するとは思えませんし、自分の人生は自分で考えて欲しいとも思います。本書では答えを導くのではなく、良い問いを考えることが重要とも書かれています。親が言ったことを鵜呑みにせず、なぜそうなのかを問い続けることが物事の深い理解や新しい発想に大切なのではないかと思います。
おわりに
著者が調べたことが密度濃くまとめられており、いろいろなことを考えさせられました。
思想家との対話を通じて著者がなぜその思考に至ったか丁寧に説明しながら進むのでつい納得させられてしまいますが、あくまでも捉え方のひとつであり、読む側も自身で問いを立て続けるべきなのかなと思います。
今まで当然と思っていたことを根本から疑ってアンラーニングとはこういうことかと体感できる、非常に学びの多い一冊でした。
ついでに
著者の孫泰蔵氏のインタビューや対談の記事も豊富にあるので、合わせて読むとより理解が深まるのではないかと思います。
などなど。自分はほとんど見れてないですがYouTubeに動画も多数あるようです。
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