ショートショート【死神】
私には命の終焉を知らせる光が見える。
亡くなる直前の人間は身体から強い光を放つ。
私にはそれが見えるのだ。
私が小学生の時、卒業生で人気アイドルの青年が文化祭に呼ばれてやってきた。
青年はステージの上で黄色い声援をこれでもかと浴びながら強い光を放っていた。
その翌日、私はラジオで彼が交通事故で亡くなったことを知る。
たぶん光を見たのはそれが最初。
その後、数十人の光を放つ人を目撃し、後日訃報を聞いた。
私は最近、新しい友達ができた。
同じ旅行好きということもあってか、彼女とはすぐに意気投合し、今日は二人で断崖絶壁からの海の景色を見にきている。
すでに陽は沈みかけ、辺りは暗くなりはじめている。
私は彼女に対し一つだけ疑問に思うことがあった。
彼女とはよく遊びに行っているが、彼女の手に光が残っている時がある。
立ち入り禁止のロープをまたぎ、絶壁から恐る恐る下を覗く私に、彼女は後ろからこう言った。
「ねえ、ここって自殺の名所って言われてるの知ってる?」
辺りが薄暗くなる中、光が彼女の急接近を知らせた。
私はすべてを悟り、身を素早く横へかわしながら片足を伸ばした。
バランスを崩し断崖絶壁から断末魔の叫び声を上げながら遥か下へ落ちていく彼女に向かってこう言った。
「あなたは何人もそうやってここから突き落としてきた。あなたの手に残る光は亡くなった人たちが放っていた光・・・・・・。でも知ってる? 死神に殺される人間は自ら光を放つことができなくなる。もう誰もあなたが見えなくなるの」
サヨウナラ。
終
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