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「またね」と立ち去る繊細な彼女。背中を見つめているとカバンからイヤーマフを取り出した。聴…
学生時代の記憶が甦る。隣席の女子と些細な内容の文通をしていた。ノートの切れ端に書いて折り…
愛人と肩を寄せ合い動画を観ていた。「顔なんて付いてればいいの。大切なのは優しさ」インフル…
僕は連休を利用し久しぶりに実家に帰省した。遠方で就職する僕を「いってらっしゃい!!」と笑…
「垂らしてくれ…」詐欺師だった男は穴の上に向かって力無く呟いた。穴の底までロープを垂らす…
ダムの建設現場で働くぼくは飯場で暮らしている。休日の前夜は親くらい歳の離れた爺ちゃんの奢…
被疑者はポーカーフェイス。「空き巣被害に遭った家からあなたが出てくるのを目撃した人がいる」そう告げても、アリバイの不完全さを問いただしても、眉ひとつ動かさなかった。しかし、差し出したお茶のコップを地震?と勘違いするほど震わせ、マスクをしたまま口に運んでこぼした時は確信に変わった。
残業を乗り切り家路を急ぐ私。疲れた体に鞭を打って歩く。もう夜更けで人通りは少ない。そこか…
嫌味な店長は将棋が得意。私たちパートのことを陰で駒と呼んでいる。悔しいから将棋で打ち負か…
「その鍋、私に売ってくれませんか?」愛用していた片手鍋の持ち手が壊れ、新しい鍋を買ってき…
私は娘を養うために人型ロボットの製造工場で働いていた。人のように会話し、指示すれば単純作…
「私にもしものことがあったらこの箪笥はあなたが持ち出して。真ん中の引き出しに大切なものが…
婚活イベントにやってきた私。「私を含めて十人しかいない。少なすぎる…」そう思っていると誰…
「何かお探しですか?探すの手伝いますよ」親友は困っている人に手を差し伸べる思いやりのある人だ。当時初対面だった私の落とし物も、親身になり探すのを手伝ってくれた。そんな優しい親友だからこそ、探さないものもある。親友とは長い付き合いになるが、決して他人の粗探しをしない。