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後世に紡ぐ

私が「かなえたい夢」、それは「自分が制作した映像コンテンツで、失われた伝統芸能や文化を再生させたい」です。

私は1990年に映像業界に入り、もう35年もこの業界にいるわけですが、その35年の間で日本全国さまざまな地域に、取材に伺いました。

取材では、たくさんの地域の観光スポットや昔から伝わる伝統芸能や文化、特産品や民芸品に触れることができましたが、それと同時に、それらの地域にお住まいの方々が抱えるさまざまな問題も知ることとなりました。

人は職を求め都市に集中し、地方の小さな町や村では高齢化や過疎化が加速度的に進んでいます。それらは限界集落と呼ばれるようになり、町や村の存続自体が危ぶまれている状況にあります。

このような話が出ると、ありがちなのは「県外から移住者を募集しよう!」となるのですが、実はコレ、実現するのは想像以上にめっちゃくちゃたいへんなものなんです。

移住者を募集するなら、まずは交通インフラを見直さなければいけませんし、企業誘致もしなければ働く場所も限られてしまいます。学校や病院、老人ホーム、生活用品が購入できるようなお店の有無とか、想像以上に莫大な費用が必要となります。移住者も数人来る程度では税収もたいしてかわりませんから、存続を左右できるほどの効果を上げるのは難しいでしょう。

私が以前取材した限界集落でも、若い世代は都会に移り住んでしまい、これまで口承で伝わってきた祭りで披露される舞いの後継者がおらず、自分の代で途絶えてしまうと、その集落の長が嘆いておられました。

同じような話は全国各地にあって、いまでこそ動画で撮影してYouTubeやTikTokに投稿したりすることもあるのですが、私がやりたいのはそのようなただ様子を伝えるだけのモノではなく、例えば舞いの細かな手足の動かし方、衣装の作り方羽織り方、民芸品などの作り方、その地域に伝わる昔ばなしなど、まったく知らない方がご視聴されても理解でき、再現までを可能とするような、イメージ映像ではなく、どちらかというと伝承されてきた文化の取説に近いような内容のコンテンツを残してゆきたいのです。

高齢化や過疎化によって、人知れず多くの町や村が存亡の危機にあります。この流れはそう簡単には食い止められません。であるならば、せめてその場所に人が育んだ生活や文化があったんだという、証の残したいんです。

そして何十年か経った後、もし興味を持った若者が復活を試みた時に、その助けになるようなコンテンツ、そういうものを作りたいと思っています。

一度失われてしまったら、記憶から消えてしまったら、二度と復活はできません。「自分が制作した映像コンテンツで、失われた伝統芸能や文化を再生させたい」、それが私の「かなえたい夢」です。

同じような想いを抱いてくださる方が増えてゆくと、もっと豊かな日本になると思うのですけどね。

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鉄の扉 iron door
読んでくださりありがとうございます。サポートいただいたものは映像動画コンテンツ制作費用として大事に使わせていただくと共に、昨年の心臓手術、今年の難病発覚と病院代もかさんでいるので、その足しにさせてください。