マルチポテンシャライトとADHD
いきなりですが、私はマルチポテンシャライト(さまざまなことに興味を持ち、多くのことをクリエイティブに探究する人。by エミリー・ワプニック)です。
そして、診断を受けたわけではありませんが、軽度のADHDであると自認しています。
マルチポテンシャライトとADHDは、全てがとは言わないものの、ある程度の相関性があるのではないかと、以前から何となく考えていました。
その思いを強くしたのは、マルチポテンシャライト向けキャリアスクールirodoriを受講し、卒業宣言会を終えていよいよ目標に向かってスタートをした直後です。
※irodoriについてはこちらを参照▼
▶やりたいことが多すぎて暇なのにパニック
宣言会で設定したファーストゴールはすぐに達成できたのですが、その後がいけません。
仕事は9時5時系の普通の会社勤めだけ。趣味にもそんなに入れ込んでいないし、一緒に遊ぶ友人も少ない。家族もなし。
それなのにirodoriを卒業したとたんにスケジュールがごちゃごちゃになって、パニックに陥ってしまったのです。
まず始めに困ったのは、スケジュール管理。
irodoriのおかげで新たなお付き合いが増え、zoomミーティングなどの予定が不規則に入るように。連絡手段もメールやLINE、slackなど複数のチャネル経由。
これらを全て把握するだけでほぼ一日分のエネルギーを消耗しました。
次に、タスク管理。
卒業宣言会のスライドには、目標達成に向けてやりたいことをTO DOとしてたくさん挙げました。
時系列のスケジュールに落としこまずにずらっと併記したのは、何から手をつけるべきか順序立てて考えることができなかったからです。
それを一気にやろうとし、当然不可能なので、自己肯定感がダダ下がりました。
そして時間管理。
やりたいことがたくさんあるのに、それに着手する時間が全く無し。仕事も忙しくないし休日にも何も予定を入れていないのに、家事ばかりやっているわけでもないのに、たった30分程度のまとまった時間を取ることができません。
確かに、年末は高齢となった両親のために実家と東京を行ったりきたりしましたし、元旦から出勤もしていましたが、それはたった1週間足らずのイレギュラーな出来事。
私の普段の生活の時間は何に溶かしてしまっているのだろうと、不思議でたまりませんでした。
夢に向かって邁進どころか、これら三つの問題を解決しないことには何も始まりません。そこで年末から新年にかけて、手当たり次第に本を読むなどして、思いつく限りの克服法を試すことにしました。
▶マルチポテンシャライトとADHDは表裏一体?
それらの試みは現在も絶賛継続中ですが、つくづく「自分はADHDなんだなぁ……」思います。
ADHDについての参考書や体験談を読むにつけ、これまでの自分の人生に起こったこととほぼ全てが一致する。
半世紀も生きてきて今更ですが、まぁとても凹むわけです。
と同時に、これまでの自分の生きづらさ、自分は何てダメなんだろうと責めてきた現象について合理的な説明が為され、具体的な対処法もわかってくるので、救われるとまではいかないものの、まぁこれも一つの生き方かと自分を肯定できるようになってきました。
一つのことに興味を持ってもそれが長続きせず、同時にさまざまなことに目移りしてしまうのも、ADHDの注意力散漫な部分がプラスに働いたからかもしれません。
興味を持ったらのめり込んで短時間である程度のレベルのスキルを身に着けられるのは、おそらくADHDの没頭力や過集中のなせる業。
新しい分野へ臆することなく飛び込んでいけるのは、ADHDの衝動性。
行動力や機動力、フットワークの軽さもADHDの多動性が後押ししているのだと思われます。
こうして見ると、マルチポテンシャライトとADHDの行動特性はほぼ重なる。同じ事象を表と裏から、それぞれ別の言葉で表しているだけのようにも思えてきます。
もちろん、私がたまたまそうであるというだけで、マルチポテンシャライトを自認される方すべてがADHDであるとか発達障碍者であるとか言うつもりはありません。
が、私と似たような思いを抱かれる方も多くいらっしゃるのではないかと想像しています。
そんなわけで、自分のマルポテ気質を最大限に生かすためには、ADHDからくる苦手分野の対策をして、カオスな頭の中に秩序を与えることが、遠回りなようでいちばんの近道であると考えました。
(自分のADHDの特性は大変軽微なので、診断や治療は現時点では視野に入れておりません)。
▶ADHDなマルポテに必要な対策
ADHDの人は片付けが苦手と言われます。
かく言う私も大の苦手で、若い頃はゴミ屋敷一歩手前の汚部屋に埋もれて生活していました。
かなり長いことそうだったのですが、10年ほど前に断捨離にはまり真剣に取り組んだところ、片付けの苦手意識は完全に払拭できました。
今では多少仕事が忙しくなっても汚部屋にならず、スッキリと整頓された部屋でインテリア等を楽しみながら生活しています。
なぜそれが可能だったのかと言えば、ADHDの特性を自分なりに理解できたからだと思います。
何かの本だったかWEB上の記事だったか覚えていないのですが、
「ADHDの人には過去や未来は存在せず、永遠の今を生きている」
「ADHDにとって、視界に入っているものが世界の全て。見えないものは存在しないも同じ」
こんな文章を目にしたことがきっかけでした。
なるほど、と納得したわけです。
持ち物をたくさん持ってクローゼットや棚の奥にしまい込んだら最後、自分にとっては無いのと同じことになり、結局新しい物を買ってきて部屋のが物で溢れかえってしまう。
であるなら、服にしろ本にしろ、趣味の物にしろ、本当に自分の視界の範囲にしか存在しないよう数を減らそう。
上記をモットーに持ち物の数をコントロールし、一目で全てが見えるように収納を工夫したら、簡単に片づけられるようになり、その状態をキープできるようになったのです。
前置きが長くなりました。
このような経験があったので、自分がスケジュール管理でパニックになったのも、「見えていない」ことが原因だろうと仮定しました。
これまであまりスケジュール管理はしていませんでした。
irodoriを受講してからは、慣れないオンライン上のイベントなどが増えたため、Googleカレンダーを使うようになりました。
これが自分に向いていなかった。
Googleカレンダーはリマインダーを設定できたり、いろいろ便利な機能があるのですが、私にとっては見にくかったのです。
スマホでは画面が小さく、パッと見ただけでは内容が頭に入ってきません。
PC画面なら大きくて良いのですが、立ち上げるまでに何分もかかり、効率的ではありません。
また、予定を登録したり修正したりの作業も細かくて、ケアレスミスの多いADHDにはハードルが高い。というか無理!!!
そこで、時間軸が縦のバーチカル、かつ一週間が見開きで見られるタイプの手帳を採用したところ、一瞬にして頭の中のパニックが収まり、静かになりました。
Googleカレンダーを使っていた時には常に焦燥感や未来の見えない不安感で気もそぞろな毎日を送っていたのに、それが全て無くなったのです。
私にとって、時間やスケジュールの全体像を「見る」には、このタイプがいちばん合っていたということです。
同時に、タスクやTODO管理の悩みもこの手帳で解決しました。
スケジュールと一緒に手書きで書くだけで、自分が今何をすべきか「一目で」把握できるようになったからです。
「手書きで文字を書く」というのも、TODOを記憶に留める一助となっているように思います。
指先でキーをポチポチ打つより、ある程度の筆圧でもってペン先で文字を象るほうが複雑な動きをするので、脳により刺激を与えるのでしょう。
尚、手帳術では、高田晃さんの本がとても勉強になりました。
手帳を購入したのは年末だったので、高田さんの方法をガチで取り入れ、お正月のうちに10年単位の長期目標から年単位の中期目標→月間目標→習慣目標と分解して手帳に記入。
10年目標なんて大変ですが、こちらはirodoriでの卒業宣言会での発表内容をそのまま流用しています。
そして時間管理については……こちらは目下取り組み中。
時間も「見える化」すれば、うまく管理できるようになるのではないかという仮説のもと、Googleカレンダーに行動履歴をつけています。
昨日の夜から着手して、既に効果大の予感。
一定期間続けてみて、見えてきたことがありましたらシェアできればと思います。
繰り返しますが、ADHD脳には目の前に見えることが世界の全て。
やりたいことが複数あるなら、それらが一目で見えるよう、物理的に管理すればOKです。
▶︎マルチポテンシャライトとして自覚的に生きる
irodoriで学び、マルチポテンシャライトとして自分らしく生きようと決意したとき、長年目を逸らせてきた自身のADHD特性に正面から向き合わざるを得なくなりました。
小学生の頃から忘れ物が多く、授業も半分くらいしか集中できない。友達との約束は忘れ、会話をしても話題が次々と飛んで相手に嫌な思いをさせてしまう。
行動範囲が制限される子どもの頃はまだ何とかなりましたが、家を出て社会人になると、特性は致命的となりました。
仕事では失敗ばかり、友人には見捨てられ、電気や携帯電話がストップするのはしょっちゅうのこと。
生活も頭の中もごちゃごちゃでした。
そんなカオスな日常に秩序をもたらすため、自分でも気付かぬうちに、行動や思考に制限をかけていったように思います。
一日の予定は一つまで。忘れてしまうから。できれば入れない方がベター。
友人はつくらない。約束を守れず、相手に迷惑をかけてしまうから。
一週間以上先の予定もなるべく入れない。覚えていられず何かとダブルブッキングしたら嫌だし、そもそも楽しくない。ADHDに未来は存在しないから。
そして私の人生は、ようやく静かになりました。
当然です。何も行動しないのですから、失敗のしようがありません。
誰とも会わないので迷惑をかけて嫌われることもありません。
こんな感じで10年、15年、静かに平和に生きてきました。
いつしか、やりたいこと、行きたい場所、会いたい人、将来の夢も無かったことになっていました。
Irodoriで自分の人生を一から棚卸しするまでは。
ADHDを抑え込むため空っぽの生き方を選択しても、生来のマルポテ気質が黙ってはいません。
人生に刺激を求めます。
本当は行動したい、マルチポテンシャライトとして生きたいのです。
そのためには、背中合わせの関係にあるADHD特性をどうにか手懐けなければならない。
この記事を書いている今も、没頭しすぎてさっそく大切な約束をブッチしそうになり、周囲にご心配とご迷惑をおかけしてしまったわけですが(本当に申し訳ありません)、この失敗を生かして前へ進んでいくしかない。
ADHD特性もマルチポテンシャライト特性も、どちらも否定するのではなく上手く利用して、自分らしく生きる術を見つけられればと思います。
ありがたいことに、現代はそれが可能な時代です。
了