■イセカイロセカイ赤の章第13話
「何なら弾いてみますか?」
アガットはまるでお茶でも勧めるように尋ねた。
「え?」
マゼンタは何とか返事をしたが、その声は掠れている。
「はい、どうぞ」
彼は一切ためらうことなく赤紫色の少女にセキエと弓を差し出した。セキエの棹と弓が同時にきらりと光を反射する。
彼女はアガットの手の中で光るその二つを凝視するあまり顎が首に密着しそうだった。
これを、私が、弾く……?
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