〜 届きますように Vol.2 〜
物語のあるリボン作家『いろいと』です
私の作るリボンには1つずつ物語があります
手に取って下さった方が、楽しく笑顔で続きの物語を作っていけるよう心を込めて作っています
ストーリーは、一つではなくどんどん増えていくもの、これからのストーリーを作るのは、あなた
あなただけのストーリーを楽しんで行って下さい♡
こちらでは、リボンの物語を紹介しています楽しんでもらえたら嬉しいです♪
〜 届きますように 〜
夕暮れ時は、静かで寂しくてどこか不安になる
たくさんの光がだんだんなくなって、赤く紅く朱く染まってゆく
隣にいたはずの君はもういない
一緒に見ているはずだった景色は、一人夕陽に照らされながら見ている
長く連れ添った君は、どこへ向かったのだろう
北へ向かったのか、南に向かったのか、私には知る由もない
『君が好きだよ』
言ってくれたはずの言の葉は、遠い昔のこと
聞くこともなくなったその言の葉達は、枯れ葉のように舞い散り、つむじ風に乗って遠くへ飛んでいく
『私も好きだよ』
自ら出た言の葉を思い返して、ごくりと飲み込んだ
私に、まだ言えたんだと驚きを隠せない
ふっと呆れるように笑う私は、そっと目を伏せた
飽きる程に君を想い、困らせる程に君を束縛する
誰にもおもちゃを渡さない子どものように大切に、大事に、ギュッと抱き締めてしまう
真綿のような温もりを求めていたのは、お互い様
·
『ねぇ。TV観る!私これがいい』
『そんな子どものTV観るの?』
『子どもも大人も楽しめる番組だよ』
『ふぅん。ふふ。可愛いな』
『可愛くないもん』
くすくす笑う君は私の頭を撫でてギュッと抱き締める
誰よりも、この腕の中が大好きだった
温かくていい香りがして落ち着く場所
茜色に染まる空を仰ぎながら、私は腕を組みギュッと自分を抱き締める
遠い昔の事、そんな話はもう忘れてしまおう
胸が締め付けられるような感覚になり、私は少し歩き出す
だけど歩き出す横に、君はいないから思い出す
『ん!』
『なに?』
『手!手繋いでない』
『俺あんま手繋いだりしないんだけど』
『えー。歩けなくなるから連れてって』
『しょうがないな。はい』
手を繋ぎたがらない君は、しぶしぶ私に手を突きつける
そんな君は少し照れているのか、笑って私の手を取る
指と指を絡ませて、ご機嫌に歩く私は自然と笑みがこぼれ落ちてゆく
それを見る君は相変わらず決まって言う
『可愛いな』
『へへ。可愛くないよー』
危ないからと道路側を歩く君が懐かしい
·
いつしか時が流れて、二人が三人、四人と増える頃
君と私は何に変わったのだろう
変わるはずのない時間は刻一刻と、そして確実に変わり始める
回るはずのない歯車は次第に勢いを増し、ぐるぐると止める事が出来なくなるのだ
『ふぅん』
『はいはい』
冷たくなる言の葉達は、今にも凍ってしまいそうに落ちてゆく
咲いては枯れ、落ちては粉々に
温かく優しいふわふわの言の葉を見ることは、もうない
何度も季節を巡っていけば。そのうちに、また三人になり二人になっていく
最後に残った私と君は、何を見つめていたのだろう
ふわふわの真綿のような温もりは、もう求めても抱き締める事は出来ない
出来ない・・・はず
薄暗く夜の闇が迫る頃、私は誰かに名前を呼ばれた気がした
誰かではなくて〈君に〉と言った方が良いのかもしれない
ゆっくり後ろを振り返り、走り寄る君がこちらに近づいて声を掛ける
『どこ行くの』
『え?帰ろうかなって』
『どこに?』
『家』
『誰の家に帰るの?』
ふと私は、君の声が遠のくのが分かった
『私は、君と暮らしたあの家に帰る。一緒に帰ろうよ?』
『そうか。本当にお前は可愛いな』
君は私を抱き締めてくれようと手を伸ばす
夢か幻か、君は今ここにいたはずなのに、もう見えない
もう一度、私の名前を呼んで抱き締めてくれないだろうか
ねぇ。お願い
伝う涙は後悔の涙か、会えた喜びの涙か
君にもらった『届きますように』だけが知っていた
·
終
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