シカゴ ウェストンコレクション 肉筆浮世絵-美の競艶 浮世絵師が描いた江戸美人100選 前期 その5

上方浮世絵もたくさん集められていてカタログにはその周辺について詳細されていました。
上方であまり浮世絵が興隆しなかったように見えるのは肉筆画がメインの文化だったからとのこと。肉筆画の巨匠はその代りにたくさんいますね。

また美人画を描いていた祇園井特は周囲に蔑まれていたらしく、美人画というジャンル自体が下に見られていたから発達しなかったのではないかとのこと。

やっぱり古い都市ですからね。こういう尊卑がきっかり決まっている関西の感じは西洋に似ています。

京焼の青木木米は「識字陶工」と一々称していてそんなに強調しなくてもと思っていたのですが、ただの陶工というだけでは余程バカにされる土地柄だったのかもしれません。

井特の修飾には「迫真」という言葉は使われていますが、写実という言葉の使用にはためらいがちな雰囲気も?独特の生気は感じられますけどどの絵もだいたい顔が似ていると言ってしまえば似ている気もしますからね。

展覧会の掉尾を飾るのはコンドル遺愛の河鍋暁斎の大作である「一休禅師地獄太夫図」。実に有名な図ですけど、展覧会に出品されるのは初めてとのこと。躍動感と詰め込まれ切ったエネルギーが流石です。

必ずしもコレクションを集めやすいとは言えない90年代以降に集めてこれだけのコレクションを築くというのは日本の芸術に対する情熱・根源的な共感を感じないわけにはいきません。
英文の解説には収集の方針に関して「strategy」という単語が使われていましたが、網羅的にバランスよく肉筆浮世絵の歴史が総覧できる良い展覧会でした。ありがとうございました。

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