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国家総合職教養区分(一次試験)について語る
1.教養区分とは
このnoteでは国家総合職教養区分を受けた大学3年生が、その対策方法や受けた感想、攻略方法について語っていきたいと思います。
そもそも教養区分とは何かっていう話なのですが、これは通常春に行われる国家総合職の専門区分試験とは違い、秋に行われる試験のことです。特徴として、より幅広い教養が求められ勉強量に左右されにくいこと、大学2年生から受験できることなどが挙げられます。比較的新しい区分ですし、ここ狙いで本気で勉強している受験者が少ないので他に比べて圧倒的に情報量が少ない試験でもあります。
ただ一方で、教養区分合格者を多く採用する省庁も見られること、官庁訪問までに多くの対策時間を取れること等々、合格するとメリットのある試験でもあります。また勉強方法が比較的短くても合格のチャンスがあります。実際、私も勉強を始めたのは2ヶ月前からでしたが合格することができましたので、コスパは良い試験区分だと思います。
そんな教養区分について、自分自身情報量の少なさから苦労した向きもありますので、後輩の役に立てればと思い書いていこうかと思います。
個人の感想も多々入りますので、公式の情報も必ずチェックするようにしてください。
(この記事を書いたのは1次と2次の間だったのですが、先日2次試験の結果が出て最終合格しました。また2次試験の記事も書こうかと思います。)
2.試験内容(一次試験)
試験内容
試験内容は大きく三つに分かれ、総合論文・知能分野・知識分野となっています。このうち、一次試験の合格に関わるのは知能と知識です。総合論文は試験日程は一次と同時に行われますが、採点結果が使われるのは二次試験のタイミングになります。
総合論文
試験時間:4時間、出題数:2題。字数は1600字程度です。1つ目は政策哲学や方針、公共論などやや抽象的なお題です。資料が2〜3個示され、それを引用しながら論じる必要があります。また、資料のうち1つは英文であり、英文読解の能力もやや必要とされます。2つ目は具体的な政策提案が求められ、そのテーマは文化・AI・宇宙など多岐にわたります。今年はインターネット投票がテーマで、例年よりもっと具体的になった印象です。こちらも資料がつきますが、1つ目よりも軽いものになります。
知能分野
試験時間:2時間、出題数:24問。知能分野については、文章理解(10題)・数的処理(12題)・資料解釈(2題)の3つが問われます。文章理解は現代文と英文の2種類で、英文の方がやや多い印象です。数的処理はそのまんま算数や数学の問題のことですが、推理や図形などその範囲は多岐にわたります。最後の資料解釈は、図やグラフが示された後、その中の数値を使って概算をするというものになります。どれも「最難関レベル」ではなく「そこそこ難しいレベル」ではありますが、時間の足りなさからここを鬼門とする人が多い印象です。逆に言いますとここで点数が稼げるならば、知識分野をあまり対策する必要がないと思います。
知識分野
試験時間:1時間半、出題数:30問。知識分野は、人文科学(世界史、日本史、地理、思想哲学)・社会科学(法律、経済、社会)・自然科学(生物、物理、化学、地学)・情報・時事と広い範囲から問われます。内容の配分については、どの分野からも1題出題される感じではありますが、時事がやたら多かったり複数の分野を1題にまとめたりと、はっきり固めてあるわけではないようです。今年は時事が多いことに加え、さらに音楽やバレエなど政治以外の側面の時事も問われ、やや直前対策の難しさを感じました。時事以外の知識については、平均してセンター試験(共通テスト)レベルかそれよりやや難しい程度、といった印象です。
3.試験対策(一次試験)
ここからは対策方法について語っていきます。あくまで一例ですので、悪しからず。
総合論文 足切り:4点、目標:6点
いきなり申し訳ないのですが、総合論文の対策は一番難しいです。配点が大きい割にあまり差がついている印象がなく、また加点は2次試験の際に行われることから、割り切ってあんまり対策をしないという人もいます。6点以上取れれば特に足を引っ張ることはないと思います。とは言いましてもノー準備だと厳しいと思いますので、それなりに対策方法をまとめようと思います。
一番大事なのは「一度書いてみる」ということだと思います。普段大学等で小論文をわんさか書いているという人ならいざ知らず、4時間の中で政治政策をテーマとして、1600字×2題の論文を書くというのは本番ぶっつけではなかなか難しいです。過去問を入手し、時間を測って一度は解いてみることをお勧めします。できれば信頼できる人に読んでもらい、添削してもらうことをお勧めします。私は大学の先輩と同期に添削してもらい、なかなか参考になりました。
1部は資料が複数示されますので、資料同士の関係を意識しながら論文を構成すると書きやすいと思います。また字数も多いので、具体的な政策例を少しは示すと主張がわかりやすくなるかな、と感じてはいますが正解はわかりません。
2部は具体的な政策課題を示されますので、結論→現状の課題とその理由→課題に対する施策とその理由→施策の問題点とその改善点くらいで書くといいかなと思います。できれば与えられた資料の分析も行うとより課題が明確になると思います。
どちらも大切なのは論理的に筋が通っているかです。小論文の中で示した課題意識とそれへの対策が矛盾したものでないか、ズレていないかということを注意して書けば、6点は取れると思います。あとは時間がかなりタイトですので、時間の割り振りには気をつけてください。
時間割り振り例:資料読み込み(15分)→構成案(30分)→書く(70分)→見直し(5分)
大体みなさんこんな感じかとは思いますが、自分は本番1部に時間がかかりすぎ、2部は書きながら構成案を考えるという羽目になりましたので気をつけてください。あとは基本ですが、読める字で書きましょう。
知能分野 目標点数:15点
ここは知識分野に比べて配分はやや重い一方で、一番対策方法が個人によって分かれると思いますので、とりあえず一度過去問を解いてみることをお勧めします。解いてみて、さらに知識分野と合わせて、自分の対策が必要そうなところと何点必要かを分析してから対策するのが効率が良いかと思います。(知能知識合わせて35点くらいあれば合格ラインかと。年によって違いはありますが。)また知能分野共通の特徴として、とにかく時間がタイトです。1問5分以下で解くことが求められますので、対策する際も時間を常に計りながら解くことをお勧めします。
以下にそれぞれの範囲に分けて対策方法を載せます。
文章理解
英文が多いので、英文読解が苦手な人は早めに対策すると良いと思います。そこまでレベルが高い問題ではないため全問正解する人は結構いると思われ、差がつきやすいので注意です。私は専門試験の教養分野も含めて過去問を1日1年分(×1ヶ月間)は解くようにしていました。文章を読むスピードが速い人は、3分くらいで1題が解けるようにしておくと、数的処理で余裕を持てます。
数的処理
数的処理を苦手とする人が多い印象です。私は過去問を解いてみてそこまで苦手意識を感じなかったので対策にあまり時間を割きませんでしたが、算数が苦手な人、過去問で解けなかった人は多く時間を割く必要があると思います。とは言っても暗記とは違い対策方法を定めにくいのですが「参考書等を利用して問題をこなしておくこと」「文章題、図形、立体など得意範囲と苦手範囲を分析しておいてどこから取り組むか決めておくこと」「命題や各公式など一通りの知識はつけておくこと」などがあると思います。しつこいようですが非常に時間がタイトですので、必ず時間を意識して取り組んでください。
資料解釈
こちらはそこまで対策は必要ではないとは思いますが、その分多くの人が正解する問題ですので、間違わないよう注意してください。筆算能力と数字から大体の目処をつける能力、素早く資料を読み取る能力等が必要です。計算間違いが多い人は、計算練習をしておきましょう。あとは細かい数字を全て計算するのではなく、大体目処をつけて資料を読み取ることが必要かと思います。民間就活をしている人は、webテスト等でも問われる形式ですので、練習と思って取り組むといいかと思います。
知識分野 目標点数:20点
ぶっちゃけ暗記です。ひたすら暗記です。とは言っても、目標点数が20点(知能分野で20点くらい取れる人は15点)ということから、全てを暗記する必要はないと思います。大学受験の際に共通テストで使用した4科目の復習+情報+1つか2つ新たに勉強、くらいでいいかと思います。思想哲学は範囲も狭く覚えやすいのでお勧めです。あと大学で法学部の人は法律政治を、経済学部の人は経済を抑えておくといいと思います。人文科学と自然科学についてはスー過去や過去問、高校の時の教科書等の勉強で十分です。
時事が多いので、総合論文対策の意味も合わせて日頃からニュースを見ておくと良いかと思いますが、これは付け焼き刃ではどうしようもないので…。私は読んではいませんが、「最強の時事」を読む人は多いみたいです。
あとはここ数年、情報が出題されるようになりましたので、こちらも軽く抑えておきましょう。
参考書や必要なもの
過去問:こちらは市販では手に入りません。教養区分の過去問は人事院への申請・取り寄せが必要になります。申請には1ヶ月ほどかかりますので、早めに申請するようにしましょう。ちなみに私は対策を始めた時期が遅く、潔く取り寄せるのを諦めました。
スー過去:知能分野では教養区分レベルの対策にはなりませんが、知識分野では役に立つと思います。間違えたところの解説をよく読み、暗記の抜けがないようにしておく用に使うと良いかと。
過去問500:正確には教養区分ではなく、専門区分の教養分野になるのですが、レベルは同じくらいだと思います。とにかく量が多く、知能分野の対策量が稼げるのでお勧めです。知識分野はスー過去等である程度知識がついたあと、力試しで解くと良いです。
各予備校:必須ではないかと思います。自力で受かる人も結構多いと思います。不安な方かつお金に余裕のある方に関しては面接対策等もあるみたいなので入ってもいいかとは思いますが、かなりお金がかかるので、独学でも受かる見込みは十分にある、とお伝えしたいです。
4.当日の話
服装:自由です。よくある就活の「自由とは言いつつオフィスカジュアル」ではなく本当になんでもいいです。流石に露出が激しい服や甚平とかはやめたほうが良いと思いますが、最悪それを着て行っても結果には影響ないとは思います(多分。責任は取りません)。寒いとか暑いとかはあると思いますので、温度調整のしやすい服が無難かなと。
昼ごはん:買っていきましょう。会場によっては近くにコンビニとかない、かつ昼休憩が短く買いに行く時間はないので、持っていくと良いです。
持ち物:知能知識分野はマーク試験ですのでHBの鉛筆が必要です。論文はシャーペンでも大丈夫ですので、両方用意しておきましょう。受験票も忘れないように。受験票は糊付けや穴あけが必要なので、早めに準備しておくと良いかと思います。
トイレ休憩:どのテストも途中で行くことが可能ですが、知能分野は時間に余裕がないので気をつけましょう。
5.最後に
色々つらつらと書きましたが、教養区分は運要素も多い試験だと思います。もし自分の対策に不安があったとしても、過度に緊張しすぎず、自信を持って立ち向かいましょう!応援しています。おわり。
PS:もし何か聞きたいことありましたら、コメント欄に書いてください。気付きましたら応対いたします。