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映画『海辺のエトランゼ』

見逃してしまった「観たかった」を取り戻せる。この良き時代に大いに感謝しつつ、今日もひとつ良い作品に触れた。

映画『海辺のエトランゼ』

これ、Twitterのタイムラインでオススメしている方たちをちらほら見かけていたんですが、ただタイミングが合わず短い上映期間内に映画館に足を運べずに観ることが叶わなかったんですよ。

まあ「観られなかった」ということもすっかり忘れてしまっていたんですが、先月ネトフリの配信予定の一覧に『海辺のエトランゼ』を見つけハッとし、秒で通知設定をタップ。

そしてようやく配信が開始して、あたたまった布団の中という最高の環境下で鑑賞させていただきました。

結論、とても良かった。

恋愛感情という「下心」の一部に背中を押されて越えようとする「他人」の域。相手を意識した途端、一番遠い人になる恋愛的距離感が、心理的にも物理的にも少しずつ縮まっていく模様を見守るのが好きで仕方ないんですよ、わたし。

なんていうかね、最近BL作品に触れる機会が増えて思うのが、BLって言ってもただ単に男同士の恋愛って一括りにはできない、しちゃいけないのかもな、とひとりで勝手に思った。

異性を好きになるのが当たり前なんじゃなくて、好きになった相手の性別が偶然異性だった、っていう人の割合が多いだけで、人が人を好きになっているだけのことなのにな、と。もっと強い言葉を用いるなら「どうでもいいじゃん」なんだよな。

ここからは作品の内容に触れつつなので、ネタバレ要素あると思います。

なんか、本当、好きなシーンが多かった。海辺のエトランゼも例に漏れず映画館で観れば良かったと心底後悔した。だって、映像がとにかく綺麗で丁寧でさ。これは這ってでも映画館に行って大きなスクリーンで観れば良かった。Netflixで良い映画作品に触れるたびに同じ後悔をしている。

映像の知識とかはないのであれなんですけど、セリフとか声優さんのお芝居以外にも、観ていて気持ちが揺れ動いたり、映像を通して感じることってあるじゃないですか。ただたんに景色を綺麗に映してるだけじゃないんだよな、となんとなく思うところ。

例えば、青空の下に晒されるベンチと対比した、半月の夜のなか街頭に照らされるベンチに座るひとりぼっちの実央の姿とか、吹き抜ける風に優しく揺れる髪とか。なんか良い、が尽きない。

「なんかいい」を感じるということは、制作側の仕掛けに私の心がうまくはまってるんだな、と実感するんですけど……いや言語化できてないので、結局汲み取りきれてないだけなのかもしれないけど。

どう感じたかを言葉にするのは苦手なので「ここが好き!」しか言えない自分のうすっぺらさが悔やまれるんですが、これは私のnoteだし、まあいっか。

何を見ているのか、遠い目とは違う何かを見つめたような実央の美少女然とした佇まいに「なんか気になる」と感情がただ漏れの駿の視線。

なんていうか、恋の始まりっていつも静かよね。こういう冒頭のシーンから、綺麗な背景と描写の切り取り方に、丁寧に作られた作品の一部はどこを切り取っても美しいなと思い知らされた。

でね、私が一番心に残ったのが駿の学生時代の回想シーンなんですけど。

積もる真っ白い雪とそこに飛び込む桜子の真っ赤な思い。あの、リボンを掛けた赤い箱のチョコレートが本命であるのは一目瞭然で、想いを寄せる駿にかけた桜子の言葉。なんかすごい刺さったな。

でね、確かに作品自体はBLなんだけど、恋愛にまつわる葛藤とか想いが大袈裟に描かれているというよりは、日常系の作品を見ているような穏やかな気持ちでいられたのが何より好きだなと思った。

おそらく最も丁寧に描かれたであろう、BL描写もすごいよかった……というかここで私は一番泣いた。

素肌を合わせて抱き合うシーンとか、なにより「入れる方できる?」って実央に聞くシーンとか、そこから見えてくる駿の本心というか、奥底にしまいこんでいた「好きになった人に愛されたい」みたいな気持ちがようやく露わになったのがマジで良かった。

BL描写って男女のセックスとは違うのかもしれないけど、観ていて思ったのは、なにも違わないということでもあったな。こういう描写で物理的にも心情を表現できるのがBLの良さだとするなら私はBLが好きです。


引っ越し終えたら原作買おうかなあ……

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