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小学生、フレンチに行く

フレンチのフルコースを食べたことがあるだろうか。私は先日、先輩の送別会で初めてそれを食べた。私にとってフレンチは、シルクのような存在。お金持ちが通うイメージだ。

ヨーロピアンな椅子にテーブル。知らない単語が並ぶメニュー表。すべてが新鮮で、フランスに迷い込んだ気分。フランスでは水をワイングラスに注ぐのか。そんなことを考えながらフランスパンをおかわりして、さっそく満腹になる。

料理がやってきて、最初の一個を一口。

「おおっ、これはどこかで経験のある味わい…。そうだ、プールだ」

初めてのフレンチ、最初の味がプールとはなんとも言えないが、そう感じてしまった。
「慣れ親しんだ生活の一部が、世界の料理と合致することってあるんだなあ…」

ほかにも、食べられるお花(エディブルフラワー)や、変わった色の唐辛子ソースなど、見ても満足のサービス精神。多方向から考える点では、デザインに近いものを感じる。

緊張感はあるものの、次はどんな新しい“何か”が来るのかすっかり楽しんでいた。デザートの時には、すでに、マダムのお茶会気分ではなく、居間で笑点を観ている気分。
ニヤニヤしては不信なので顔を両手で覆うと、お店の方から「どうされましたか」と心配されてしまう。更に食後も、同じ方が「お口に合いましたか?」と尋ねてくる。
慌てた私は「想像通りでした」と返してしまった。

そんな私にもお店の方は親切にしてくれて、最後まで丁寧に見送ってくれた。フレンチ初心者が失態をおかすのは日常茶飯事なのかもしれない。

帰りのタクシーでは、先輩から「ナプキンは適当に畳むのがマナー」だと教わる。「畳む間もないほど美味しかった」という意味らしい。
丁寧に角を揃えて畳んでしまった私は「次はもっと精神的に大人になったら…」と思いながら、膨れたおなかをさする。今日の私は小学生だ。

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