
『部屋がない』
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2001年11月8日
ぼくがゲームをしていると、それをのぞいてきたお兄ちゃんに
「あいかわらず下手だな」
と笑われます。
ぼくが集中して宿題を進めているとお姉ちゃんが
「わたしはもうとっくに終わらせたの」
と言いながらわざと音を立ててポテチを食べはじめます。
買ったばかりの本を早く読みたくてあせっていたぼくの歯みがきを見たお母さんが
「短い。やり直し」
とにらんできます。
せまい和室にふとんを3枚しいて、兄弟で横になると夕飯にビールを飲みほしたお父さんがやってきて
「お前らこんな空気の悪い中ねるのか」
と窓を全部あけてしまいます。。
学校帰りにあそぼうとさそわれて、ワクワクしていても
「ぼくの家はダメなんだ、ごめんね」
と言わなきゃいけません。
家に帰るとぼくが学校で描いた絵が見当たらないのでお母さんに聞くと
「だってリビングに置きっぱなしだったでしょ、すてちゃったよ。また描いてね」
と言われました。
ぼくには宝物がありません。
大切にしておける場所がないから。
ぼくはちゃんと大人になれるのかな。
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2020年4月18日
キミは大人にはなったよ。
ただただ生きていれば年をとる。大人にはなれる。
でもキミの言う「大人」はそうじゃないだろう。
僕もそうじゃない。
本題だが、キミは「1人」を求めすぎて、「ひとりぼっち」になってしまわないか僕は心配だよ。
人を拒むようにならないか心配だよ。
いつかキミに素晴らしい友達ができますように。家族に恵まれますように。
もしそんな人に出会えたら心を閉ざしていてはダメだよ。自分から歩み寄るんだ。
キミが素敵な大人になることを心から願っています。
あと最後に一つ。
この日記もこのままではお母さんに見つかって怒られることになるから、トリックでも仕掛けた小さい箱を作ってそこに片付けたほうが良い。