液胞

植物細胞で特に大きく発達する器官ですが、電子顕微鏡で観察したときのみ、動物細胞内にもみられます。

<主な役割>
栄養源であるブドウ糖のような代謝産物の貯蔵
無機塩類のようなイオンを用いた浸透圧の調節
リゾチームを初めとした分解酵素による不用物の細胞内消化
不用物の貯蔵

ちなみに、不用物の貯蔵についての補足として、秋頃の紅葉が赤や黄色をしているのは、液胞内に色素(アントシアンなど)が不用物として詰め込まれているからです。

液胞は、細胞内にある、一重の生体膜である液胞膜と呼ばれる膜につつまれた構造で、その内容物を細胞液と呼びます。若い細胞では小さく、細胞の成長につれて次第に大きくなります。これは、成長する過程で排出された老廃物をため込むため、また液胞に大量の水を吸い込むことでその大きさを、またそれに伴い細胞を大きくし、植物のからだ全体を大きくするためです。細胞質基質内に水を取り込んでしまうと、細胞質基質内の物質の濃度が下がってしまい、細胞内で絶えず行われている化学反応に支障を生じます。そのため水は液胞内に取り込み、細胞質基質内の物質の濃度を保っていると考えられています。良く育った細胞では、多くの場合、細胞の中央の大きな部分を液胞が占め、細胞体積の90%を超えるものもあります。植物細胞を見ると、往々にして葉緑体が細胞の表面に張り付いたように並んでいるのは、内部を液胞が占めているためであるのも理由です。

液胞の機能と重要性はそれらが存在する細胞種によって大きく変わり、動物や細菌の細胞よりも、植物や菌類、ある種の原生生物の細胞において重要です。一般的に、液胞の機能には次のようなものが含まれます。

細胞に有害または脅威となる物質の隔離
不要物の保管
植物細胞において水分の保持
内部の静水圧または細胞の膨圧の維持
内部のpHを酸性に維持
低分子の保管
不要物の細胞からの排出
植物において、葉や花のような構造の中央液胞 (central vacuole) による支持
細胞のサイズを大きくし、出芽する植物や器官 (葉など) が水だけを用いた迅速な成長を可能にする
種子中の出芽に必要なタンパク質は プロテインボディ (protein body) という特殊な液胞に保管される

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