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アメリカンコーヒーのなぞ

はじめてアルバイトをしたのは、確か、1987年で、京都のある喫茶店だった。

何十年もたっても、しっかり覚えていることがいくつかあって、これは、その一つ。数人の若い男性が座っているテーブルで、オーダーとっていたとき、一人が、「俺、アメリカン。」と言って、アメリカンコーヒーを注文した。

そして、次に、パンチパーマの男性が、「俺、インディアン。」と。

今思うと、おもしろいシャレなんだけど、その時、わたしは固まってしまい、男性が、少し恥ずかしそうに、照れていたこと。

さて、アメリカンコーヒー。その店では、注文が入ると、ホットコーヒーにお湯たして、持っていくことになってた。以来、いくつかの、日本の喫茶店で、アルバイトをしたけれど、『アメリカン』といえば、『薄めたホットコーヒー』は、一貫していたように記憶している。

15年以上前、アメリカに住むようになった頃、アメリカのカフェに、アメリカンコーヒーというメニューはなかった。考えてみれば、当然で、ここはアメリカだから、全部のコーヒーが、『アメリカン』コーヒーだ。

当時、コーヒー好きの日本人の友人が、「アメリカのコーヒーは、薄いから物足りないよー。『アメリカン』だから。」と、嘆いていた。確かに、こちらのコーヒーは、日本のホットに比べて、薄かったかもしれない(スターバックスを除く)。わたしは、どっちかというと、薄いのが好きなので、気にならなかったけれど。

こちらに来て数年、家の近くのカフェで、ドミニカ人の方が、コーヒーを注文するのに、「ドミニカンのに、して!」と頼んでいたことがあった。「それは、何ですか。」と聞くと、「いやー、アメリカの薄いから。ドミニカンの濃いのが好きなの。」と言っていた。やはり、アメリカのコーヒーは、濃く淹れたを好む人には、物足りなかったのだ。

さて、今は2024年。アメリカのコーヒー、ニューヨークのことしか知らないけれど、すっかり濃く、苦くなってしまった。わたしには、もう飲めないものが多い。頼んでも、少し飲んで捨ててしまったりしている。

そして、いつ頃からか、メニューに、アメリカンコーヒーが、登場した。

ただ、ずっと不思議だったことが。アメリカのアメリカンコーヒーは、ブレンドコーヒ(ホットコーヒー)より、だいたい50セントか、1ドル高いのだ。今は、知らないけれど、日本では、お湯足すだけなので、同じ値段だった。

それで、最近、あるお店で、アメリカンコーヒーについて、質問してみた。

わかったのは、アメリカにおける『アメリカンコーヒー』は、エスプレッソを2ショット(あるいは、1ショット)入れて、お湯で割ったものだということ。つまり、たいてい、ホットコーヒーより、カフェイン量は多くなる。ただ、苦味は、お湯を足すから、マシなのかもしれない。わたしは、試してないので、知らないけれど。店員は、エスプレッソを作る必要があるので、値段は高くなる (ホットコーヒーは、ポットに入れたのを、注ぐだけ)。

というわけで、日本の『アメリカンコーヒー』と、アメリカの『アメリカンコーヒー』は、名前は同じでも、別のものだった。

ややこしいわ。

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