![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/160228326/rectangle_large_type_2_8b2d804f528d41b0befdec17bdc09cbd.jpeg?width=1200)
[短編フィクション] 夜中のこと
きのう、仕事のかえり、うちの近くの狭い通りで、踊っている人をみました。顔色が悪く、ほとんど緑色で、ぼろぼろに裂けた、長い灰色のワンピースをきた、老女でした。腰まで届く白髪を、やんわりとゴムでしばり、くずれた型の、盆踊りともつかないおどりを、一心不乱に、踊っていました。
酔っぱらっていたのでしょうか。気が変な女性だったのでしょうか。
まわりに人はいず、ちょうど、街灯の下にいるので、まるで、スポットライトをあびているかのようでした。無言で、両手をあげて、とても集中した様子で、ずっと踊っています。
夜も遅く、通行人は、ほとんどないにしても、時には、帰宅途中の人がいて、道路の端、なるべく老女から離れたところを、急いで通り過ぎていました。中には、手前の道を、曲がって、他の道を行く者もいたようです。
私は、ずっと、老女を、しばらく離れたところから、見ていました。
ふと、どこかの若者が、「やめろ。」と、小石を投げつけました。小石は、老女に当たらず、コンと地面に音をたてて、落ちました。
老女は、ふと、動きをやめて、小石を一秒をほど、眺めていました。そして、もう一度、静かに、踊りだしたのです。
昨日のことでした。
いいなと思ったら応援しよう!
![ともこ (絵・コラージュ・詩)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/133550118/profile_23b53b83b58dfe0223d27001beae4c1a.jpg?width=600&crop=1:1,smart)