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喪失を忘れる

 あの怖れのような、肺の内側で乾いた風が唸るような喪失を忘れてしまった。それからしばらくして感じていた、生きていた頃より近くにいるような感覚も、今はない。きみは、いま、ぼくのなかに生きていない。それが悲しいことなのかももう分からない。僕にはきみのことを悲しむ権利があったのか、未だにこうしてきみのことを書ける文脈の中に僕がいるのかはわからない。もしかしたら全ては僕の悲劇願望なのかも知れない。きみのお父さんやお母さんは怒るだろうか。僕はきみのことを消費しているのだろうか。成人式の記念撮影で、本当に僕はきみの遺影を持ってよかったのだろうか。本当に僕たちは友達だったのだろうか。あの日々は大切なのだろうか。
 あの喪失を忘れていることは、正当にも過ちにも思える。

2022/01/22

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