あずき色の電車 (交換)
幼いころ、あずき色の電車が走る町に住んでいた。そこには、その路線の終点に当たる駅があった。駅の先に車庫や整備場はなく、線路がぷつんと途切れて終わっているのがホームからもよく見えた。電車が到着し客が降りると、必ず駅員が車両の中を歩いて、眠り込んでいる乗客がいないかを確認していく。到着した電車は、今度は始発電車となってその駅を出発するのだ。
私の父は新聞記者をしていた。父は自分の仕事を「シャカイブのデスク」だと言い、私はその意味を「忙しくて家にいられない仕事」と理解していた。3