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12冊目 『「見方・考え方」を働かせる算数授業』

現職時代、縁にも恵まれ多くの書籍や冊子の原稿執筆を経験しました。

勤務校の仕事ではないですから、夜中や明け方などの時間を何とか確保し取り組むわけです。あるいは、休日に、家族との時間を拝借して取り組まざるを得ない場合もありました。内容や程度にもよりますが、いつもそれなりの負担感はあります。しかし、出版社を通して「世に出る」「形として残る」というのは、やはり嬉しいですし誇らしい気持ちになりました。その気持ちがあったからこそ、いつも頑張ってこられた気がします。

私が経験したのは全て共著ですが、今思い返してみると、大きく2パターンがあったことに気が付きます。

1つ目は、メインの編著者や出版社の担当者がいて、書籍のコンセプトがはっきりしているパターン。
2つ目は、共著のメンバーで書籍のコンセプトから創り上げるパターン。

前者だと、原稿の執筆依頼のあとガイダンスがあります。そこで、

◆どのような内容の書籍か
◆ターゲットの読者はどのあたりを想定しているか
◆実践を執筆する場合、TC形式(T…教師、C…子どもとし、授業中の実際の発言をまとめていく)なのか、解説形式なのか
◆文章は常体なのか敬体なのか
◆画像は入れるのか
◆行数や文字数はどのくらいか

などの説明があります。ですから、ガイダンスで話を聞いたり実際に執筆したりしていく中で疑問が出た場合には、「担当者に質問する」→「答えをもらう」という関係性で書籍づくりが進みます。

一方後者の場合、上に挙げた「書籍の内容」「TC形式」…などをメンバーで相談して決めていくことになります。もちろん、全員が並列の立場というわけではなく中心となる方がいる場合がほとんどなので、スタートの時点である程度方針は決まっています。それでも、メンバー間でその内容が妥当なのかを確認し、方向性を一つ一つ確定していく作業は出てきます。

どちらが良いかどうかと言われたら、それは全く意味のない質問になります。しかし、どちらが執筆しやすかったか、という質問であったなら、それは明確に答えることができます。

あくまで経験をもとにした個人的な感想になりますが、執筆しやすいのは間違いなく前者のパターンです。書籍のコンセプトに納得し、自分自身がその依頼に応えられると踏んで執筆を引き受けているので、見通しをもって取り組んでいくことができます。また、執筆上疑問点が出た場合、担当者に質問し、その答えを原稿に反映させていけばよいことになります。ですから、創造的な面での負担感はあまりありませんでした。

ただ、コンセプトがはっきりしている分、それに見合う内容の原稿になっていない場合には何度も原稿を書き直すということもあります。

コンセプトから共著者メンバーで創り上げる後者だと、原稿の書きぶりなども現在進行形で決めていくことになり、その都度話し合う作業を挟みます。担当者に質問すれば解決する場合と比べると、決して効率的とは言えないこの原稿づくりは、もちろん大変でした。ですが、その分自分たちで創り出す・生み出すという感覚があり、やりがいや手応えというのは強く残りました。

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『「見方・考え方」を働かせる算数授業 領域を貫く10の数学的な見方・考え方の提案』

これは、私が現職時代、原稿を執筆して世に出た一番最後の書籍になります。

実践部分を担当した共著のメンバーは、全員が同じ札幌市内で算数を専門に取り組んできたメンバーです。若手の頃から、「仕事の同僚として」「算数仲間として」「良きライバルとして」切磋琢磨してきた、リスペクトできるメンバーばかりです。

この書籍が発行されてからすでに5年程経ち、当時それぞれの勤務校で学級担任だったメンバーの多くは、担任外になったり、教育委員会所属の立場になったり、退職して別の職業に進んだりしています。苦労を重ね共に執筆した同志の名前が最後に刻まれたこの書籍は、本当に私にとって大切な思い出であり、誇りです。

『「見方・考え方」を働かせる算数授業 領域を貫く10の数学的な見方・考え方の提案』
(東洋館出版社)
編著:瀧ヶ平悠史
著 :本創研
監修:佐々祐介・末原久史

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