膝を痛めている現役農家のおじいちゃんの日々の生活を楽にしたい【ほこたワガママLab/アプリ開発ストーリー#01】
茨城県鉾田市で取り組んでいる「ほこたワガママLab」。鉾田市出身の高校生・大学生・大学院生が”地元で暮らす人たちのワガママを叶えるアプリをつくる挑戦”を通じて、地域に関わり続ける仕組みをつくるプログラムです。
2ヶ月間の活動の成果を発表するために2023年3月14日に開催したWagamama Awards(ワガママ・アワード)にて、学生たちが発表したアプリをご紹介します。
▼Wagamama Awards全体をレポートした記事はこちら
今回ご紹介するチームは「誰のどんな課題を解決したいか」を話し合っていると、3人とも共通して膝が痛い高齢の家族がいることがわかりました。そして、よくよく深掘りしていくとみんな現役農家だったのです。
野菜の生産高が日本一のまち鉾田市で生まれ育った学生たちが、身近な家族の生活の困難をなくしたいと徹底的に考えていたら、日本中で抱えている課題につながることを体感しました。
そんなチームの発表の内容をぜひご覧ください。
皆さんこんばんは。まずはチームメンバーの自己紹介をしていきます。
私は情報コースを専攻している大学2年生です。プロジェクトマネージャーとして、主にアプリ制作の進行なども手伝う仕事をしていました。趣味は付近の散歩やアニメの鑑賞です。
私は水戸の学校に通う高校2年生です。今回は主にアプリのプログラミングを担当しました。家はメロン農家で、父祖母がメロンをつくっています。
私も水戸の学校に通っている高校1年生です。今回はマップ作成の担当とアプリのアイコンづくりを担当しました。バドミントン部に所属していて前回の総体では県大会までは行っています。
鉾田市の高齢化率と日本の農業の現状
まずは鉾田市の現状について説明します。こちらのデータは茨城県の公式ホームページからの引用です。鉾田市の人口は令和2年時点で45,953人。令和5年1月1日時点で、65歳以上の高齢者の割合が33.6%となっています。
高齢者の割合はより今後高まっていき、少子高齢化がさらに加速していると予測されます。
また、鉾田市を代表する産業である農業についての現状についても説明します。こちらは農林水産省より引用した資料です。
日本全国で農業に従事している人たちの平均年齢はこちらも平成27年からだんだん上がっていき、現在は68.4歳。日本の農業は高齢者が支えている状態であるということがわかります。
私たちはほこたワガママLabを通じて、身近な家族の生活の困りごとを解決したい、と考えてきました。話し合っていると3人とも共通して膝が痛い高齢の家族がいることがわかりました。
そして、よくよく深掘りをしていくと、私たちがイメージしている高齢者は現役農家のことだったです。
鉾田市は野菜の生産高が日本一です。そして、日本中に高齢の農家さんがいらっしゃいます。私たちのアプリは日本中の農家さんの助けになるのでは?と思いました。
私たち3人が日常生活の中で、家族を見て感じることも共有します。
私は実家に祖母がいるのですが、祖母は23年ほど前から足腰がどんどん悪くなっていって現在は杖がないと移動することがなかなか大変な状態です。だから移動するのに役に立つものをつくりたいと考えました。
私の祖父は膝が悪いのですが、メロンの農業作業はしています。メロンの箱詰めの作業は椅子に座ってできず、膝が悪い人にとってはすごい負担になっています。なので普段の生活は、少しでも膝に負担がかからないようにしてあげたいと思い膝の悪い高齢者の方に何か寄り添えるアプリを作りたいと思いました。
私の祖母も同じく膝が悪いです。私の祖父母は農家をしてるんですけど、どうしても農家をしていると重いものを運ばなきゃいけない時があります。そういうので膝が悪いのがより悪化していると思うので心配で。日々の生活でもっと膝への負担を軽減できるようにしてあげられないかなと思ってこのアプリをつくりました。
以上のことから、私たちは「膝を痛めている農家のおじいちゃんおばあちゃん」のために、日々の生活を楽にするためのアプリをつくることにしました。
この状況からわかる課題、いわゆる「ワガママ」について説明します。自分たちの家族に聞いてみたりしたところ、やっぱり移動や立ち続けていることに苦労しているとのことでした。
例えば階段を登ること、長時間立ち続けて料理をすること、遠くへ移動したくてもすぐに車を呼べないということなど。まずは自分たちができることから解決していきたいと思いました。
膝が痛い農家さんのためにつくったアプリ「help the elderly」
実際につくったアプリ「help the elderly」をご紹介します。今回は3つの機能をつくりました。
アプリのアイコンは、文字が小さいと見づらいと思い、わかりやすくてかつ
色もシンプルにしました。緑と水色にしたのは、鉾田のシンボルマークの色だからです。
また今回は、すぐに市民タクシーを呼ぶ機能、長時間立ち続けなくても作れる料理のレシピを確認できる機能、階段やエレベーターのあるお店を調べることができる機能をつくりました。
耳が悪くても、アプリを使い慣れていなくても、誰でも使いやすくなるように、それぞれのボタンの意味を説明したり、読み上げる機能もつくりました。
ボタンの横にある車のボタンなどイラストで視覚的にもわかりやすくするようにしました。目が悪い人でも読み上げ機能をつけて、どんな機能を使えるのかを説明できるようにしたり
意味がわからない場合は「説明」を押すと(①)、「左のボタンを押すとタクシーを呼ぶサイトにつながります」と表示されます。
「読み上げ」ボタンを押すと(②)同じく「左のボタンを押すとタクシーを呼ぶサイトにつながります」と読み上げてくれます。
機能1:状況に合わせて、適切なタクシーを呼ぶ
遠くに移動する時、車がないからタクシーを利用できるようにボタン1つでタクシーを呼ぶサイトにつながるようにしました。
膝の悪い人が対象なので車椅子に乗ってる方もいると仮定して、車椅子を乗せられないタクシーもあるので乗っているかどうかの質問をつけました。こちらのページも読み上げ機能があります(①)。
車椅子に乗っている場合は、鉾田市のデマンド型乗合タクシーの「ほこまる号」を呼べるサイトにつながります(②)。
「いいえ」の場合は、地元のタクシー会社が表示されるようにしました。
機能2:簡単で短時間でつくれるレシピを掲載
膝の悪い家族を見ていると、料理をするのに長時間立ち続けることが辛いように感じました。なので、短時間でできる簡単なレシピを探せる機能をつけました(①)。
この料理に関しての今ところは「和食」「洋食」「中華」というふうに3つジャンル別に分けて、その日の気分によって変えられるようにつくってあります。こちらにも読み上げ機能をつけました(②)。
食べたいものを選ぶと、クックパッドのレシピ集に飛んでいきます(③)。
うちのおじいちゃんは野菜をたくさんつくっているのに、自分では食べていないのでは?と思って、栄養バランスがとれるようなレシピになっています。
機能3:膝が悪くても行きやすい場所を集めたオリジナルマップ
次は「行きやすいお店」の紹介です。高齢者の方が行きやすそうなお店を紹介したくて、自分で調べてマップをつくりました。
本当は階段エレベーターのあるお店を紹介したかったんですが、鉾田市にエレベーターがある場所がほとんどなかったので今回は高齢者の方が集まりやすいようなお店を自分たちでマップにしました(②)
赤くマッピングされている場所を押すと、場所の名前が出てきます(③)。
「help the elderly」をきっかけに、つくりたい未来
今後は、ここのアプリで紹介できるものが増やしていけたらいいなと思います。より地図で紹介できる場所を増やしていったり、さらに健康にも気を使ったレシピの内容を充実させられるようにしていきたいです。
最後に、メンバーからほこたワガママLabに取り組んだ感想を共有します。
たった一人に喜んでもらうためのアプリをつくる
発表、ありがとうございました。
おそらく今、商用化されてる世の中のスマートアプリはどれだけダウンロードされるかが重要で、できる限り多くの人に対して使ってもらえる見込みがないと、世に出すことが難しい状態です。
でもこの3人は、たった一人の人が喜んでくれるものって何なんだろうというのを一生懸命考えてアプリをつくってるんですよね。
自分たちの地域で、行きやすいお店を集めた情報もそうです。これはなかなか行政も企業もできないですよね。
膝の悪い高齢者の方たちに対して、高校生と大学生がどんなことができるのかなっていうのを一生懸命考えた結果、MIT App Innventorの3つの機能でアプリをつくりました。
実は今回、アプリ開発を通じて学んだ機能はたった3つしかないんです。ボタンを押すと説明が出る、音声を読み上げてくれる、ウェブサイトにつながるというシンプルな機能です。
それらが、目が見えにくかったり、アプリの操作に慣れていない高齢の方々の役に立つものになりました。欲しい情報を得られるアプリになりました。
本来であればこのスマートフォンの機能を使ってGPSで今どこにいるのかとか、いろんな機能を使えます。しかし、あまり機能をたくさん使っても課題解決につながらないケースがあるのも事実です。
たったこの3つの機能でこの地域に暮らす膝が悪い高齢の方たちにどういうその解決策が提示できるかとつくったのが、このチームのアプリになります。
とても素晴らしかったです。ありがとうございました。
▼ほこたワガママLabの活動レポートはこちら