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小さなトートバッグの忘れ物。

先日、久しぶりにショッピングモールに出かけた。

ぶらぶらとモール内を歩き、UVカットのパーカーを買い、お気に入りのお蕎麦屋さんでお蕎麦を食べた。

こういう1人の時間も結構好き。


のんびりした時間を過ごし、帰る前に御手洗へ。


トイレの個室の扉を閉めようとしたら、扉の上のフックに水色の小さなトートバッグがぶらさがっていた。

中を見ると、黄色の工事車両のトミカが数台入っている。

これはきっと大切なものに違いない。
出かける時にも持ち歩きたいほどのお気に入りのトミカなのだろう。

私はインフォメーションカウンターに届ける為トイレを出ようとした。
ちょうどその時、1人の女性が入ってきた。

一瞬「もしかして?持ち主さん?」と思ったけれど、私が入った個室とは違う所に入っていった。

どうやら違ったみたい。

…しかし女性はその個室からすぐに出てきて、私が入った個室に入った。
そしてまたすぐに出てきたのだ。
同時に『どうしよう』と小さな声が聞こえた。

私は咄嗟に「これですか?」
と水色のトートバッグを差し出した。

すると
「そうです!ありがとうございます!!!」
と目元が綻んだ。

「良かった!今インフォメーションカウンターに届けようと思ってたんですよ〜」
と言うと女性は何度も何度も頭を下げて「本当にありがとうございました!」とトイレを後にした。


程なくして私もトイレを後にする。
するとフロアにさっきの女性と小さな男の子がいてこちらを見ている。

「ほら、ありがとうは?」と女性は男の子に言うが、男の子はなんの事だか分かっていない様子。

(だって、きっとお母さんがトイレの扉の上のフックに引っ掛けて、そのまま忘れてしまったのだろうから、男の子は忘れてきた自覚はないのだろう。)

それでも女性は男の子に「ほら、ありがとうは?」と言っている。

その姿がなんとも微笑ましくて、胸の中がくすぐったくなった。


私はその男の子に「バイバ〜イ」と大きく手を振りながら女性に頭を下げ店を出た。

自動ドアが閉まるまで女性の
「ありがとうございました」の声が聞こえていた。

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