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※ネタバレあり 『人間失格』を読んで(課題本読書会の前と後)


2022年10月29日、大阪で『人間失格』を課題本とした読書会を行いました。

大阪では6月と9月に推し本披露会(読書会)は開催できていましたが、課題本読書会は久しぶりの開催でした。毎回課題本は何にするか非常に悩むんですが、今回は「読んでそうで読んでない(もしくは昔読んだので忘れている)本」として『人間失格』を選んでみました。あまりにも有名な作品ですので、読んだことがなくてもタイトルや著者名は皆さんご存知かと思います。漫画等になったりもしてますので何となくあらすじも知っている……あれ?でも結局どんな話だっけ?って方も多いのではないかなと思いました。実際、私も読書メーターの記録を見てみると約7年前に読んでいたのですが、ほとんど内容を覚えていませんでした。映画版を先に観てみたら「あれ?こんな話だったっけ?」となりました。改めて読めて良かったです。

さて、今回タイトルにもしたように、課題本読書会前と後について書いていきたいと思います。読書会前に私一人で読んで感じたことと、読書会で出たご意見をまとめつつ私が感じたことなども加えて書いてみます。何度かやってみてるんですが、これをやると頭の整理にもなって当日さらに楽しい!ってことが分かったので、出来るときにはやってみようかなと思っております。

ちなみに『消滅世界』Verはこちらです。

▶※ネタバレあり 『消滅世界』を読んで(課題本読書会前)

▶※ネタバレあり 『消滅世界』を読んで(課題本読書会後)

『虐殺器官』Verはこちらです。

▶※ネタバレあり 『虐殺器官』を読んで(課題本読書会の前と後)

『月と六ペンス』Verはこちらです。

▶※ネタバレあり 『月と六ペンス』を読んで(課題本読書会の前と後)

課題本読書会は実際に参加してみないと面白さって伝わらないかなーとも思うのですが、ひとまずこの記事を「おお、こんな風なのか!」みたいな感じで、前後編お読み頂けましたら幸いです。

では、前置きが長くなってしまいましたが、『人間失格』に触れていきましょう。

えー、こほん。あ!ネタバレしますので、『人間失格』をこれから読む予定の方はバックバック!




――――――――――――ここからネタバレ―――――――――――――――――――――――





1.読書会前

読書会中にも使うので、今回はおおきく「ざっくりと感想」「小話」「各登場人物について」「話題にしたいこと」など分けて書いてみようと思います。

<ざっくりと感想>
まず私が一人で読んだ時の感想を。人間失格を初めて読んだのは7年前なんですが、あまりその時にどう感じたのかは覚えていなくって、今回ほぼ初めて読むのと同じ感覚で読みました。

本を読むときは主人公とか他の人物に感情移入しながら読むとさくさく読み進めれるタイプなんですが、葉蔵にはがっつり感情移入はしにくかったです。かといって堀木とか他の人物にも感情移入は出来なかったので、ちょっと読みづらい感じはありました。でも道化を演じるところとか、なんで道化を演じるようになったのかとか、49ページにある「一人では怖いが二人なら怖くない」はめっちゃ分かるなと思ったりとか、そういうちょいちょい分かる部分もあったり自分もやってるなーと感じる部分もあったりして、感情移入もしにくいし読みづらい感じもあったのにどんどんページをめくってしまう作品でした。

私としては堀木が印象的で、堀木と出会わなければ葉蔵もまた違った人生を歩んでいたんじゃないかなーとかも思ったんですが、葉蔵自身につけこまれる隙があったんやろうなーと思ったりもしました。あと親の視点から見たら葉蔵はどんな感じやったんかなとかも想像したり。

なかなか一言でまとめれないんですが、自分の頭の中で考えていることが細かく描写されているような印象があって面白かったです。

あと、39ページのところで何か甘いものを渡すと食べて機嫌を直すってあるんですが、これは私もよく妻に使ってるなと、これは真実だなと思いました。

<小話>
・生田斗真主演のと小栗旬主演の映画版どちらとも観てみました。生田斗真主演のを観てる時に「あれ?こんな話だったっけ?」となったんですが、あとで小説を読んでみるとわりと原作に沿った話だったんだなーと思いました。小栗旬主演の方は太宰治が主人公で別の話でした。

・自分は人間の営みが分からないという部分。この感覚はかなり辛いなと思いました。14ページで自分を疑ってますが、現代はSNSがあって他人の呟きなんか見てると「自分と同じ考え方してる人がいる」とか「こんな考えがある。世間にはこんなことがあるのか」と知ることができるけど、SNSがなかった時代は情報を得る手段が少ないし、自分の周りの人間だけの狭いコミュニティとか、新聞テレビくらいしかない?ですかね。そうなると、より一層自分が他とは違うという感覚に陥ったときにどうしたら良いか分からない。周りが何を考えてるかも分からないかも。そんな状況で自分を疑ってしまうのは恐怖でしかないかも。

・現代に生きる身としては情報過多なので、今度は逆に自分はその他大勢と一緒だという感覚に陥いりがちだったりするのかも?

・周りの目を気にしてしまうことはよくある。例えば一時期夜にジョギングをしていたんですが、女性が向こう側から歩いているのを見つけたらなるべく離れて通り過ぎるようにしていた。変質者と思われるのを避けたかったから。しかし最近パパになってから特に娘といるときの周囲の「パパ」という目線には不信感がなく、こちらも変質者と思われそうなんてことは考えなくなった。いずれにしても一人でいるときは怪しまれそうと思ってなるべく挙動不審にならないようにしている。

・「恥の多い生涯を送ってきました」は作品全てをあらわしていると感じた。

・こういうときにこう思わなければならない、例えば嬉しい報告を受けたときは嬉しい。それが出来ないとなると怖いかも。

・過剰な自意識というのはある。電車でマクドの袋を持って入れないとか。今はだいぶおさまったが、以前はもっとひどかった気がする。

・20ページ。獅子舞の話は葉蔵視点やと恐怖

・24ページ。女中や下男から哀しいことを教えられ犯されていた。父母にも訴えられない、諦念さが葉蔵に大きく影響を与えている?

・25ページ。お互いの不信のなかで平気で生きている。演説の話

・39ページ。吾輩は猫であるがでてくる。この時代に夏目漱石はもう読まれてたんだなあ。それを現代の我々も読んでるってすごくない?

・50ページ。堀木は怖くなかったのは気づいてる気づいてないで異なるところはあるけど同じ道化だったから?

・語注たすかる。わからん横文字が多い

・53ページ。共産主義の読書会。読書会てあったんだなあ。

・55ページ。生まれたときから日陰者とある。自己肯定感が低い、と片付けてしまいそうになるが、原因は何なのか。

・65ページ。銀座の大カフェの女給ツネこの話。

・67ページ。すしへの不満にはフフフてなる。1ページにもおよぶ

・69ページ。幸福さえをおそれる。幸福に傷つけられることもあるんです。は分かる。

・74ページ。「貧乏くさいだけの女だな」はなかなかひどい

・76ページ。実感として死のうと決意する。奇妙な屈辱。プライドというか…自意識の強さ。

・101ページ。シヅ子登場

・109ページ。世間は君じゃないか、有名だけどでどころ?この時代にこの考えは新鮮だったのでは

・115ページ。人間は決して人間に服從しない。

・122ページ。ヨシちゃん登場

・124ページ。モチよ。略語このころから流行ってるんだなあ。

・127ページ。なにはともあれ幸せそうだったのに

・130ページ。悲劇喜劇名詞はよくわからん

・135ページ。罪の対義語は?そのひとの全部がわかる?

・ヨシ子だいじにしてやりなさいよ、と思った。幸せそうだったのにな…。

・158ページ。葉蔵が初めて拒否している。

・160ページ。人間、失格。もはや、自分は、完全に、人間でなくなりました。はやはり印象的。

<各登場人物について>

・葉蔵はどんどん堕ちていくので、何とか途中で止められなかったのかなという気持ちでも読んでいた。

・26ページのあざやかな、清く明るくほがらかな不信の例だったりを見ていたら、そりゃ人間不信に陥りそう。

・堀木について。悪友。軽蔑しながらも友達付き合いをしている。

・道化を演じているところを竹一に見破られる。竹一と一緒にいるときの葉蔵は好き。竹一は絵をお化けと表現している。葉蔵と同じだったのでは?だから見抜けた。仲良くなれそうこのまま一緒にいれば葉蔵も堕ちずに済んだのに……と思った。

・親からすれば、葉蔵は良い子にしか見えない。口答えしない。獅子舞の件で父親もいじらしいやつみたいに思っていた。

<話題にしたいこと>
・葉蔵に共感できるか、できないか
・誰が葉蔵をだめにしたのか?
・太宰は執筆してから自殺までの一ヶ月はどんな思いだったのか
・どういう視点で読んでいた?主人公視点?友達目線?親目線?
・映画観た方いますか?
・92ページのヒラメにイラっときたんですが、「画家になりたい」って葉蔵が口に出来たのは結構大きなターニングポイントだったのでは。それを笑われている。色んなポイントポイントで誰かが葉蔵を貶めている。
・104ページ。「あなたをみるとなにかしてあげて〜」そう?葉蔵のような人物がそばにいたら何かしたくなるか?
・なんで人間失格は読まれ続けてるんだろう?
・はしがきあとがきは誰?
・167ページで「あのひとのお父さんが悪いのですよ」とあるが、誰が悪いのか
・太宰治の作品他に何か読んでいる?作品を書いた時代によって作風が違うとも聞いたことがあるが…。
・解説では自己批評と本心について書かれている。
・鑑賞では父と子について書かれている。

……はい!

というところが、読書会前に私自身が気になってたところでした。的外れなところもあると思いますが、ひとまずメモメモ。詳しい方がいらっしゃれば是非教えて頂きたいなと思っている次第です。では、ここから先は読書会後に感じたこと等を書いていきます。

2.読書会を終えて

ひっじょー------に!!

面白い!!

回でした!!

いやー、始まる前はどうなるかなーとドキドキしていたんです。なんせ『人間失格』ですよ。自分で課題本にしておいてなんですがなかなかのプレッシャーがありました。ですが、皆さんの意見を一巡している時点で「あ、面白い」と面白さが爆発していました。一巡したあとは出た意見の中から再度質問をしたり新たに疑問に思った点を話したりしました。

以下は箇条書きです。

・小説は普段読むことがないが、冒頭から大庭の生き方にひきつけられて一気読みした。

・内向型で他者を偽るのは理解は出来るが辛い生き方だなと。だが転落しているというのは僕の見方でしかない。

・良い部分にひかれることもあるが、影・マイナスな部分にひかれるところはある。

・半分共感できるが半分共感できない。

・ヨシ子と出会ってから物語は良い方向にいくと思って応援していた。

・過酷な人生だが人それぞれだなと。若い頃に読んでいたら馬鹿してるよなと思ったかもしれない。

・ズシンときた本。

・中学時代から読んでいるのでまともな意見が言えない…。今は真面目に働きなさい、ダメだなと思ってしまう。

・面白い部分としては、冒頭とあとがきの構成をとっているのが面白いと思った。他人の話ですという演出が入っている。

・太宰は自己演出がうまい人。作者太宰を演じて終えていったのかな。

・思ったよりも読みやすかった。

・「世間は君じゃないか」が印象的だった。

・最後結婚して幸せになれるのかと思ったら「人間失格」が出る。

・読んでいて腹立つ。何故絶賛されているのが分からない。

・何を甘えている、と思ってしまうが、自分にないものを持っている人を羨ましがっている自分がいるのではないか、と自分が気付いていなかった点に気付かされる。

・主人公には共感できないが共感できる部分もある。金持ちや嫌いなタイプでも自分と共通しているところはあるのかな、と考えさせられる。

・堀木が家ではしっかりしてて主人公が劣等感を感じているようなのが印象的だった。

・自分も自意識過剰で人が怖いと思うこともあるので共感するところがあった。が、自意識過剰すぎるやろとイライラしながら読んだ。

・女性にモテたり道化を演じるところを誇ってはいないが、一方でやや誇っているような気持ちもあるのではないか。

・自分のことを恥ずかしいと言っているが、何が大きな理由で恥ずかしい人間と思うようになったのか?幼少期の内容は精神病院に入ってから書いたものなので盛っているように思える。

・精神病院に入ったことで外部から「恥」を突きつけられたことで、葉蔵は恥ずかしいと思うようになったのではないか。

・初めて読んだ。主人公の行動と社会の価値観の折り合いがつかない。協調したいが切実。相対化してみればいいのにと思ったけれど、自分が40代になってそういう目線で読んでしまう。10、20代で読んでいたらどう思っていただろう?

・私小説的な読み方。「ダメになってしまった」が大人から見ると言い訳に思える。

・三島由紀夫との違い。

・今読むと「友人を考えて選べ」とか「あまりに不器用」と上からそう思ってしまうが、自分のことは言えない。器用に生きてる人はいるのか?器用不器用って何だ?確認する間もなく過ぎ去っていく。

・自分の人生は他人から見てどう映っているのか?昭和の価値観、平成の価値観などあるが、令和の価値観に今染まっているのではないか。

・お父さんが悪いのよ、は本当か?太宰はお兄さんに対するコンプレックスもあるのでは?

・精神病院に連れてこられたとき、注射器を初めて「いらない」と拒否する。自分を客観的に見れるようになったのでは。と考えると希望が持てる。

・なぜ竹一と縁を切ってしまったのか。

・自分ではコントロールしてるつもりでも転落している。

・今の自分があるのは周りのおかげ。

ざっと箇条書きするとこんな感じでした。私も話に入っているときにはメモできないので実際には他にも話題が色々とありました。

概ね、葉蔵に共感できるかできないか、なぜそう思ったのか、あるいは自分自身と照らし合わせてどうなのか。物語を通じて「自分自身」に何か問いかける、気付かされるといったことが多かったかなという印象でした。周囲の人物よりも葉蔵に多くスポットが当たったかなという印象です。

個人的には「精神病院に入ったことで外部から恥を突きつけられた」という点が自分にはなかった視点で面白く、なるほどそう考えるとこうなるなという風に物語を捉えなおしてみて納得しちゃうところもありました。

著者の太宰治についても多く話題となりました。これもなかなか自分一人では調べるに至らなかったので、とても良い機会となりました。



気が付けば17時になり、読書会はあっという間に終わりとなったのでした。その後も少しフリートークでお話をして、会場を出てからはスピンオフ企画へ……。

『人間失格』については以上です!

と、こんな感じで読書会前と後について感想と出たご意見等を書いてみました。

私自身の何か考え方が変わるというよりは(そういうときももちろんありますが)自分一人では気づかなかった点に気づくことが出来たり、一冊の本でここまで喋れるのか!という発見がいつも面白かったりします。読んでみて何も思い浮かばなかったなーとか特に話すことはないかなーと思っていても、色んな人の意見を聞くだけでも楽しいですよ。

ちなみに『人間失格』を課題本にした時の読書会のレポートはこちらです。

▶【大阪】2022年10月29日(土) 『人間失格』課題本読書会レポート

以上で終わります。

お付き合いいただき、ありがとうございました!

ここまでお読みいただきありがとうございます。宜しければご支援よろしくお願いいたします!