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【コロナ前後の診療科別 診療所数と収益の変化】

医業経営コンサルタントの奥野です。
毎年この時期に、金融機関の関連会社から委託を受けて5業種の業界情報を更新しています。

⁡更新するのは前年との比較ですが、せっかく数年間毎年のデータを整理しているのでコロナ前後の数年間の変化を時系列で見てみました。

新型コロナウイルスの前後で診療所の環境がどう変わったのか、分かりやすく解説していきます。データを見ながら、現場で働く皆さんにも身近に感じてもらえる内容にしました。

数字で見る診療所の変化

外科の診療所が大幅減少

最も目立つのは外科の診療所の減少です。なんと2019年から2023年の4年間で、5軒に1軒くらいの割合で閉院しています。具体的には約9,000軒もの外科医院がなくなりました。

外科の減少は本当に深刻です。最新の手術ロボットなど、高額な機器が必要になってきて、個人の医院では維持が難しくなっています。若い先生も、開業よりも大きな病院で働くことを選ぶ傾向があります。

外科診療所減少の理由

外科診療所が大幅に減少している理由には、以下のようなものがあります:

  1. 手術の高度化と集約化:

    • 日本外科学会の報告によると、高度な手術は大病院に集中する傾向が強まっています。

  2. 医療機器の高額化:

    • 基幹病院では、CT・MRIなどの先進の高額医療機器を揃えているが、診療所では高額な医療機器を自院で保有することは負担が大きい

  3. 外科医の高齢化と後継者不足:

    • 外科医は、長時間の手術に対応するための集中力や体力が求められます。他の診療科に比べ、60歳以降は身体の負担が大きく現場の第一線に立ち続けることが難しい

      • 労働時間が長い、時間外勤務が多い、業務量の割に賃金が少ない、医療事故のリスクが高いなどの理由で外科医を希望する医師が減少

他の診療科の状況

外科の次に減っているのは産婦人科、耳鼻科、小児科の順です。でも面白いことに、小児科と産婦人科は診療所の数は減っているのに、売上(診療報酬点数)は1.5倍以上に増えています。

産婦人科の減少理由

  1. 出生数の減少

    • 2023年の日本の出生数は72万7,277人。前年に比べて、約5.6%の減少です。1899年の統計開始以降で最小を記録し、2024年以降も続いていきます。さらに、合計特殊出生率は1.20でこちらも過去最低記録です。

  2. 産科医療訴訟のリスク:

    • 日本医療機能評価機構の報告では、産科関連の医療訴訟は高額化する傾向にあり、開業医にとって大きな負担となっています。

  3. 働き方改革による影響:

    • 産婦人科は当直や緊急対応が多い診療科という特性を持ち、働き方改革に伴う労働時間規制により、個人診療所での対応が難しくなっています。夜間当直の非常勤医師や助産師の人件費も負担になっています。

  4. 高度医療への対応:

    • ハイリスク妊娠の増加に伴い、NICUなどの設備が整った大病院での出産を選択する傾向が強まっています。

小児科の減少理由

小児科診療所の減少にも、いくつかの要因があります:

  1. 少子化の影響:

    • 前述の通り、出生数減少は、小児科にも大きな影響を与えています。

  2. 小児救急医療体制の整備:

    • 厚生労働省の施策により、地域の中核病院を中心とした小児救急医療体制が整備され、夜間や休日の対応が個人診療所から病院にシフトしています。

  3. 小児科医の偏在:

    • 日本小児科学会の調査によると、都市部と地方で小児科医の数に大きな差があり、地方での開業・継続が難しくなっています。

耳鼻咽喉科の減少理由

耳鼻科も減少しています。専門的な知識と高い機器投資が必要なのが原因です。また、花粉症などのアレルギー疾患が増えて、内科でも治療するようになってきたことも影響しています。

産婦人科・小児科の収益増の理由

産婦人科と小児科は診療所数が減少しているにもかかわらず、診療報酬は増加しています。これには以下の理由があります:

  1. 診療報酬改定による各種加算の新設・増加

  2. 不妊治療や小児在宅医療など、高度で専門的な医療の提供

  3. 予防接種や健康診断など、予防医療の重視

  4. 医療の質向上と安全性確保への取り組みの評価

  5. オンライン診療の普及による新たな診療形態の確立

これらの変化は、少子化や医療の集約化という課題に直面しながらも、質の高い専門的医療へのニーズが高まっていることを示しています。今後、診療所は地域のニーズに合わせた特色ある運営や、大病院との連携強化、オンライン診療の活用など、新しい形の医療提供体制の構築が求められるでしょう。

診療所を取り巻く環境の変化

新型コロナを経験して、診療所を取り巻く環境は大きく変わりました。新型コロナが5類感染症に移行し、数年間にわたる補助金も終了しました。改めてどんな環境変化が起きているのか、それは今後も続くのか、きちんと認識して、今後の対応をとらなければなりません。

デジタル化の進行

2024年12月からのマイナカード健康保険証の利用が義務化になり、電子カルテやオンライン診療への対応が求められます。

患者さんのニーズの変化

病気になってから治すより、予防に関心が高まっています。ホームページやSNSで専門性の高いブログやYouTubeを発信する医師・診療所のフォローが増えています。

地域包括ケアシステムの推進

地域全体で患者さんを支える動きが求められます。在宅診療所が増え、医師だけでなく、看護師や介護士さんとの連携が大切になります。

働き方改革推進

医師をはじめとして長時間労働を減らす取り組みが進んでいます。限られた人数の中で残業を減らし、有休取得を促進するため、業務効率化が求められます。

まとめ

新型コロナの影響で、長期的な患者離れが起きた診療所と逆に早期に回復した診療所を見てきました。診療科にもよりますが、既存患者が早期に戻り、逆に他の診療所から新規患者を獲得することができた診療所の多くは、患者が求める情報発信を行ってきました。

例えば、ホームページに患者視点で病気の予防や治療について解説したり、予約制や発熱患者の動線変更など感染症を防ぐための対策をホームページで紹介したり、安心して通院できる工夫をしてきました。

さらに、SNSで診療所の理念や働く人の様子を発信することで、地域の信頼を得たり共感するファンを獲得して、集患だけでなく採用にも効果が出ているところもあります。

一方で、後継者がおらず感染症対策や業務効率化の設備投資もできず、地域密着型だからホームページはいらないと情報発信をしないままでいて、やむなく休廃業に陥った診療所も少なくありません。

これからの診療所は、地域の人々が本当に必要としている医療を見極め、特色あるサービスを提供することが大切であると同時に、デジタル技術を活用したり、他の医療従事者と協力したりと、情報発信をすることが必要です。

地域のニーズに合わせた特色ある診療所運営や、大病院との連携強化、さらにはオンライン診療の活用など、新しい形の医療提供体制を構築していくことが重要になるでしょう。

このnoteでは、地域から選ばれる診療所であるための診療所の広報活動について、お役に立つ情報発信をしていきます。SNSや広報について、知りたい情報があったら、コメント欄でお知らせください。


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