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僕そっくりの人形

僕に似た人形がある
ガラスケースに閉じ込められていたそれを無視できなかった。
人形を机に置けばなんとなく
これに愛情を―母から与えられなかったすべてを―与えれば、幸せになれると思った。

今まで僕に与えられなかった愛情を
僕がこれに与えることで
愛情が得られると
本気で思った。

着てみたかった服
誰かにかけてもらいたかった言葉を与えては、
誰かに優しく触れて欲しかった頭や頬を撫でては、
満たされていくのを感じた(嗚呼、こうして欲しかった)

理想の僕となった人形と
僕との境界線はどんどん曖昧になって
無価値な僕が理想の僕になれた気がした
僕は人形を愛することでしか自分自身を愛することができなくなったのだ

しかし、理性のどこかが僕の行為の無意味さをあざ笑う
「結局、君は母の操り人形じゃないか」
うるさい……うるさい……うるさい……!
自分で自分を愛することができない僕にはこの人形が必要なんだよ!

母はいつも孤独だった
いつも父の愚痴を僕に聞かせて鬱憤を晴らしていた
母の選んだ服を着て、母の望む進路に進んだ
嗚呼、僕は母の人形だったんだ

拝啓、未来の恋人よ
僕があなたに囁く愛の言葉や、優しい態度は
すべてあなたのためでなく
僕自身のためなのです。

今日も僕は人形の髪をブラシで梳いている。
僕が僕でいるために。



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