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Photo by
kuboyuka
にきび。
"想い、想われ、振り、振られ"。
鏡を見て、ふと思い出した言葉だ。
そう。
ニキビができたのである。
それも、顎に。
冒頭の言葉通りなら、誰かに想われているのかもしれない。
そんなことを考えながら、空想を巡らす。
体育会ラグビー部所属の、あの子。
元ゼミの同期の、あの子。
いつも同じ電車に乗っている、あの子。
いろんな男の子の顔が浮かんでは、パッと消え。
もしかして、あの子がわたしのことを想っているのかも。
そんなことを考えながら、一人ニヤついていた。
それだけではない。
友達にだって自慢した。
わたし、誰かに想われているみたい、って。
完全に浮かれていた。
友達は、そんなわたしに一瞥をくれ、
衝撃な一言を放った。
「 20代はニキビとは言わないよ。
それ、"吹き出もの" だよ。」
なんということだろう。
ニキビではなく、"吹き出もの" とは。
20代はもはや、ニキビと呼ぶことさえ許されないのか。
ショックだった。
そして、これがニキビではなく"吹き出もの" だというのなら。
わたしは誰にも想われていないじゃないか。
一気に現実に引き戻された気持ちだ。
さようなら、甘酸っぱい青春よ。
大人しく薬でも塗るとしよう。