秋蝶の翅にスティグマめく墨書
2022/10/12(水)NHK文化センター 俳句講座に投句した四句の中の一句。無点でした。
【学びポイント】
読み手あっての俳句、ひとりよがりではダメ。
【解説】
スティグマは聖痕=イエス・キリストが磔刑に処せられた際についた傷跡と同じ場所に現れる傷のこと。墨書は墨で書かれた文字です。
岸本先生の読みは、「秋の蝶の翅に墨で書かれた文字のような模様がある。」というもの。ツマグロヒョウモンなどの秋によく見かける蝶には、翅の裾模様に黒々とした線がある種も存在するので、そのような意味合いで理解されていました。
「『スティグマ=聖痕』と『墨書』どちらも非常に強い語なので、どちらかにした方が、句としてスッキリとして伝わりやすい」というご指導をいただきました。添削例として、以下の3つを挙げられました。
①秋蝶の翅にスティグマめく模様
②スティグマに似て秋蝶の模様かな
③秋蝶の翅に墨書の如きもの
「作者の意図はどうですか?」と先生がおたずねになりましたので、挙手して発言。「これは渡り蝶=アサギマダラを詠んだものです。研究者たちがアサギマダラの飛行経路を調査するために翅に黒々と油性マジックペンのような筆記具でマーキングしているのを言いたかったのです。」と。
先生は「なるほど」と受け止めてくださり、さらに「もしこの句を活字にされるなら、その時は前書きとして『アサギマダラ』とされるといいですよ。」と。
【作者としての想い】
私は罪なき蝶に重荷を背負わせるごときマーキングの文字に大変強いショックを受けており、憤りめいた感情を抱いて、この句を詠みましたので、読者に伝わるかどうか、という配慮に欠ける一句になってしまいました。ひとりよがりではダメなのです。俳句は読み手あってこそ。作者の言わんとするところが伝わらないのでは、佳い句とは言えません。
しかし、翅の模様を「墨書」と比喩で言いたいわけではないため、もっとよく考えて、自身の言いたいこと、伝えたい内容が、きちんと十七音におさまるように語を選び、推敲すべきと思いました。