かはほりは予兆一粒万倍日
2023年9月16日 「道後俳句塾2023」にて 夏井いつき特選
6月のある日、句友数人とランチ&お茶を楽しんだ。よもやま話も尽きた頃、天玲さんから「尻二字俳句やりましょう!」と突然の提案。それに乗って詠み合い、この句は生まれた。
「尻二字俳句」とは前の人が詠んだ即吟句の最後二文字を自句の頭につけなくてはならない遊び。「かわ・かわ・かわ・・・」と頭に思いながらWEB検索していると、ふっと「かはほり」という夏の季語が浮かんだ。「かはほり」(蝙蝠=こうもり)は、その外見から気味悪がる人もいるが、中国では「福」と「蝠」の発音が同じということで「幸運の前兆」と信じられているとか。日本国内に残る建築物にも釘隠しや襖の引き手に蝙蝠の意匠を見ることがある。
一粒万倍日という語は知っていた。なんとなく「かはほり」と「一粒万倍日」は似合う気がした。とはいえ、「一粒万倍日」だけで九音もある。これを後半に据えたら残りは八音。「かはほり」「前兆」「一粒万倍日」と並べただけで十七音だ。これでは窮屈だし、助詞が入らないので、意味が通らない。蝙蝠が幸運の前兆であると言うためには助詞「は」または「が」が必要だ。
「前兆」をあきらめ、「予兆」と助詞「は」を組み合わせて
かはほりは予兆一粒万倍日
という一句にした。
その場の閃きだけで句を詠み続けると、理屈抜きの佳句が降りてくることもある。これはある意味天玲さんの秀句に触発されて降りてきた句。句友からの授かりものと言っていいかもしれない。持つべきものは秀句を生み出す句友である。天玲さん、ありがとうございました。
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